石原的映画談

2020年07月31日  昭和の歴史を知る!


長い間観ることがなかった映画だった。


「あの時代に決して戻りたいとは思いませんよ」

私が若い頃、すでに石原裕次郎は大スターでした。テレビでは「西部警察」などの派手なカーアクションドラマで活躍していました。もちろんその頃石原裕次郎は自分で飛び回る役ではなく、幹部として重厚な演技をしていたのですが私自身はあまり関心がない役者でした。今思えばあの頃彼はまだ40歳前後の年齢だったのでしょうね。しかし早くも病によって52歳でなくなりました。酒の飲みすぎでしょうね。今の私から見れば「えっ?そんなに若くして???」とと思える年齢でした。52歳で名を残して亡くなるというのは美空ひばりも同じでしたね。

石原裕次郎は私の実母の7歳年下です。母は若い頃から「ゆうちゃん!」と呼んでファンだったようです。今も実家に帰ると台所のラジカセに石原裕次郎のカセットテープがセットされ続けています。母はもうすぐ93歳で元気です。少し前に医者で検査してもらったら「耳が遠い以外は何も悪いところがありません」と言われたそうです。若い頃からよく体を動かしていたせいでしょうか。

さて先日、石原裕次郎主演映画「黒部の太陽」を観て気になっていたので、さらに「蘇る大地」と「富士山頂」を観ました。これらはすべて昭和史に残る偉業のドキュメンタリー作品です。


「黒部の太陽」は皆さん御存知の通り、黒部第四ダム建設に当たり困難な取付道路のトンネル作業を映像再現したもの。多くの犠牲者を出した難工事でしたが、映画の中で特に「トンネル内出水」のシーンが有名ですね。セットに組んだトンネル内で大量放水しての撮影は、本当に怪我人が出たことで有名です。しかもこの映画で表現していた部分はダムそのものの建設ではなく、それに資材を運び込むための道路作りの話です。先人たちの犠牲と努力で関西地区の電力が確保された話です。


「蘇る大地」は茨城県の鹿島灘に面した貧農民と漁民を立て直すため、港を整備し企業を誘致し鹿島工業団地を作り上げるまでの県職員と建設省の役人の戦いを描いた実録もの。この映画で鹿島工業団地がどの様に形成されていったのか全貌がわかります。やはりこれも先頭を切って導く人材のありがたみが分かりますね。工業団地誘致に成功し、鹿島港が稼働し始めた後に公害や住民たちの生活の変化が出て来ました。それを是とするのか?主人公は悩みます。このあたりは社会派映画的要素をかなり含んでますね。果たしてこの工事はすべてを幸せにしたのか?その続きを見たくなる終わり方でした。



「富士山頂」は富士山頂気象レーダー設置の実録モノ。NHK「プロジェクトX」でもドキュメンタリーとしてやっていたので概要は知っていたのですが、これは映画版「プロジェクトX」ですね。三菱電機全面協力。これも石原裕次郎が手掛け主演したものですが、社会派的雰囲気もありなかなか感動モノでしたよ。富士山頂に気象レーダーを2年で完成させるという難工事。CG無き時代にあのロケはどうやったんだろうと感心しながら観ていました。高山病との戦い、酸素が薄い中での演技は役者たちも素晴らしいですよ。そして最後に後味の悪いシーンがありました。お役所仕事の結果論というやつ。国側の先頭に立って頑張った人が縦割り行政によって被害者となるとは・・・。史実に基づいているので本当のことなんでしょうね。

最近は時間があれば昔観るチャンスがなかった日本映画をなるべく観るようにしています。年令を重ねてくると、取りこぼしていた物や事を知っておきたいとの欲求が湧いてきます。幸いにして、映画であればアマゾンプライムで無料または安い金額で観ることができる時代になりました。時間を持て余している老人にとってはありがたいシステムですよ。日本映画をバカにして全く観ない若い方々も、たまには古い映画を観てはどうでしょうか?確かに技術的・画質的かなり古いものが多いのですが、日本という国がその時代を通過して今に至っているわけですから、歴史の一端として覗いてみてはいかが?

私自身は、昭和40年代から60年代の映画を見ると、ある意味嫌悪感が湧くことがあります。それは私自身の古い記憶が刺激され脳の中で嫌な記憶が蘇るからでしょうね。決して日本は今のように清潔で先進的であったわけではなく、住みやすかったわけでもなく、忘れたい記憶もたくさんあるのですよ。あの時代に決して戻りたいとは思いませんよ。


本日の結論
私は石原裕次郎のファンだったわけではありませんが、警察関係者をやっていない彼のほうが好きですね。

「独断倉庫」に関しての御意見は「啓示倉庫」へ書き込んで下さいな。



GO TO HOME PAGE