到達的解決策

2020年02月25日 盲点を思考する!


これが新しい「SHIVOL ver.2」


「漏れた音を実音にしてからゼロにする」

思考し続けるということは、どういうことなのでしょうか?恥を晒すような内容ですが、あえて書いてみます。

一つトラブルが起こると、人はそのトラブルに対する対策を思考し始めます。「どうやれば旨く終結出来るのか?」時間が限られていれば、そのリミットまで必死に考え抜きます。あまりにも難題で大きすぎると思考を放棄したくなりますが、それでも自己防衛本能がソレを許さず思考し続けることになります。そして時が来て二手に分かれます。一つは無事に解決策が浮かび上がり対策完了してその困難から抜け出すケース。もう一つは、どうやっても解決策が見つからず時間切れで残念な結果になるケース。

ところが・・・もう一つパターンがあります。それは「時間制限が無い」状態の時。さてどうするのでしょうか?「時間はいくら掛けても良いから最善策を生みだせ!」と言われたら・・・。人は思考する場合ある程度の集中力が必要です。しかし、集中力はそう長くは続きません。2時間程度が一度の集中時間の限界でしょうかね?ソレをすぎると飽きてしまいます。

私が仕事で集中する場合、朝10時からスタートして気がつけば夕方になっているケースは多々あります。その間食事もせず、飲みものも摂らずということも多々ありましてね。体に悪いですね。なぜそのような行動を取るのか?と考えれば「推理する楽しさと結論が見えない悔しさ」が共存しているからですね。私が作っているギターペダルでは、ごくたまに製作中のトラブルが起こります。どうしても思ったとおりに出来上がらない現象です。いつもどおりに作っているのに・・・しかし出来上がらない。何が原因なのか?これの追求が「苦しくも楽しい」行為なのですよ。

トラブルが起こるということは必然的に「原因」があります。一見しただけでは判明しない「原因」を追求して潰していかなければなりません。人の思考には盲点があります。その原因がその盲点に隠れているとなかなか見つけ出すことができません。別の言い方をすれば「これって常識ぢゃん!」と思っていることが実は足かせになっているケースも多いのですよ。ところがソレを疑うことはなかなかできないんですね。長年そう思い続けていますから。

具体的に書くと、2月8日にオーダーがあった「SHIVOL」ですが、一度作ってみたところ「回路のショート」が起きていて作動しませんでした。なぜショートが起きるのか?の原因を探るのは簡単です。配線を追っていきどこかでプラスとマイナスが接触している部分を見つければよいわけです。やってみました・・・見つからない・・・見つからないんです!呆然としますよね。自信を持っていつもどおり作って、チェックしてもどこにも間違いが見つけられない。でも作動しない・・・。呆然とします。

さあ、ここで思考の開始です。テスターのプローブを両手に持ち、配線を追いかけていきました。片っ端からチェックするもわからず。諦めかけた時「いや!原因があるから結果があるんだ!諦めるな!」と自分を鼓舞しつつ続けたところ「どうも、アルミケース自体がショートしているな?」と気づきました。通常、ケースはマイナス側ですが、そこにプラスの線が接触して起きている感じです。その観点で再度配線を追っていくと、これまたどこにもその兆候は無し。再び呆然としますが、そこで一つの可能性を見つけました。LEDを2個、ケースに開けた3mmの穴に直接取り付けています。ここだけは全く疑う余地がなかったのでチェックしていませんでした。「犯人は一番疑われにくい人物」というのがミステリーのセオリーですね。

最後にたどり着いたのがケースに直付けしていた「3mmLED」でした。まさかと思いつつ、2つある「3mmLED」の一つを外してみるとショート状態は改善せずそのまま。もうひとつの「3mmLED」をはずしてみると・・・おおお!!!ショート状態が消えました!突然正常作動をはじめました!でも・・・なんで?

詳しく調べてみると、LEDの回路には被膜がかぶさって居るのですが、ソレが薄すぎて回路が露出してアルミケースに接触していたようです。そこで新しいLEDに交換してみました。今度は問題なく設置できました。トラブルに気づいてから解決するまで24時間かかりましたよ・・・。疲れた!!!結局このようなトラブルは「謎解き」の面白みもあり「辛いけど楽しい」的な要素があるんですよね。自虐的趣味と申しますか・・・。

翌日になり受け取ったユーザーから「MUTEスイッチを入れても音漏れがする」との指摘がありました。なに?なになに?」正常作動していたはずなのに何が起こった???すぐに返却してもらい確認すると、たしかに「音漏れ」が起こっていました。当初LEDの設置で起こったトラブルが有ったために私の頭は「LED犯人説」でガチガチに固まっていました。まずはそこを疑い、さらにLEDが絶対ショートを起こさないようにケースから浮かせました。更に細部も見直して追い半田を行いなんとか音漏れを減らしました。これくらいで限界かな?ともう一度発送。

そして翌日再び「以前より良くなりましたが、ボリュームを上げると確かに音漏れを起こしていまして、スイッチにノイズもある」との指摘が再び届きました。なんだそれは???そこで話し合いの末に、もう一度新しいものを作ることに。イチから作り直してみると、たしかに音漏れやノイズが出ました。LEDは皮膜が厚い5mmに切り替えてみましたのでそこに問題はないと確認済み。ここから2日間思考が続きました。MUTEスイッチを入れても「音漏れ」がするのはなぜか?焦点をソレ一つに絞って考えました。

MUTEスイッチは回路を切断するスイッチです。スイッチを踏めば回路が切れてそこで電流は止まるはずです。つまり、入り口から入った信号は出口まで行けないはずです。しかしアンプのボリュームをMAXに上げると確かに小さな音が聞こえます。なぜだ???なぜだ???これで2日目の午後まで思考を繰り返して様々な配線上の対策をやってきましたが効果なし。考え続けても結果が出ないので、一旦気持ちを切り替えるために散歩に出ました。

散歩していても頭の中は同じ思考がグルグル渦を巻き続けていました。どうやったら「音漏れを消せるのか?」と考え続けているうちに「ひょっとして盲点にごまかされているんではないのか?」との思いにたどり着きました。逆の発想をしたほうが良いのでは?と気づいたのです。「音漏れを消す」のではなく「漏れた音を実音にしてからゼロにする」という発想です。

散歩から帰り着くと実験開始!MUTEスイッチの配線をあれこれいじってみました。なるほど!こういうことね!あああそういうことね!そう来るのならこういうことで行けると・・・。では最終形はこうではないの?とやってみたところ、見事に「音漏れ」は消え、同時にノイズも綺麗サッパリ消えてくれました。これで回路完成です!すぐに、他の部分も仕上げ直して出荷しました。翌日「ありがとうございました完璧です!仕事に便利で助かります!」とメールが届きまして一安心しました。

今回のドタバタで、また別のアイディアも浮かびました。要はもっとシンプルに考えていれば、今回のドタバタは起こらず、すぐに解決したはずなのですよ。そのシンプルさを追求していくと別の形のペダルの可能性も有るのではないだろうか?と思いが至ったのです。しばらくは新しい形の「SHIVOL」がどうやったら成立するのか?を面白がりながら思考し続けることにしましょう!

追伸
久しぶりに「SHIVOL」を作ったので、あるセオリーを失念していたのが最大の失敗でした!!!


本日の結論
ある部分がとても勉強になった今回の事件でした!これで二度と間違えない!

「独断倉庫」に関しての御意見は「啓示倉庫」へ書き込んで下さいな。



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