反省的擦過傷


2014年11月25日 反省することしきり?


「この傷たった一つで不良品です・・・」

まったく関係ない話から始めると・・・。
今年の夏のこと、8月の終わりころだったと記憶しているのですが。妻と長い時間話をする機会があって、様々なことを話し続けていました。男女ですからもちろん思考のすれ違いはあるし、問題点の捉え方も違っています。しかし多くの方向性にそう狂いはなく、今ではもうこんなに話をし続けなくても、ほぼお互いが欲していることや指向性はかなり理解していると感じました。

私は結婚してもうすぐ丸39年になります。 そして妻にこんな質問をしてみました。「俺たちはどうしてこんなに長く続けられたのかね?」「あなたが優しかったからよ!」

おっと!まさかこんな答えが出てくるとは思っていませんでした。思い返すと、私たちの39年間には様々な波乱もありましたし、もう離婚か・・・と思える精神状態に陥ったこともありました。しかし、40歳の頃こう考えたのです。「妻に離婚を考えさせた原因はなんだ?」とね。

それは会話の欠如でした。私は当時仕事に縛られ、自由な時間も少なく、さらに仕事の限界を感じて新たな仕事の突破口を探して悶絶していました。そのため、自宅にいても食事の時以外は部屋にこもり、Macと格闘している時間が多かったのです。それが数年続いていました。当時娘も小学生で妻はそれに構いっきりになっていました。必然的に夫婦の会話は少なくなっていきました。しかし、私はこの生活でいいのだと思い込んでいたのですよ。

しかしある日妻に「離婚したいんでしょ?子供が中学に入るまで待って・・・」と伝えられました。驚愕すべき発言でした。私には全く心当たりがなく、なぜ妻がそう思うのか?が理解できませんでした。が・・・すぐにその原因が妻と話すことで理解できてきました。

私は、自分の精神状態のコントロールと、仕事の忙しさにかまけて妻と長期間にわたりコミュニケーションをとっていなかったのです。私が部屋に篭る日々が2年ほど続いていました。妻は私に拒絶されていると感じていたのでしょう。妻はその原因を私に聞くこともなく、私もそれを伝えることなく続けてしまったのです。

ちょうどこの頃、私の父が癌で倒れ余命3か月の宣告を受けました。17年間も実家に帰ることなく過ごしていた私はそれを悔やむとともに、父が亡くなるまでは、なるべく多く父の病室に行こうと決意しました。月1回から2回は実家のある宮崎へ週末と有給を利用して帰省を繰り返しました。結局それは8か月間にも及びました。

すると、それまで全く実家に行こうとしなかった私があまりに頻繁に帰省するので妻は余計なことを考え始めたようです。仲の良かった中学生時代の知人数名がたまたま実家の近所に住んでいて、帰省するたびにいろいろ面倒を見てくれたのですが、その中の一人が独身女性だったと。それを妻は「私と別れてあの人と結婚するんだ・・・」と思い込んだようです。頻繁に帰省するのはその女性に会いに行くのだとね。

私は妻の発言を聞いて大失敗したと感じました。確かに生活していく上で、私の仕事は必須です。どうやって新しい仕事の方向性を見出すのか?そればかりが私の頭にありました。そして結論めいたものが私の中に芽生え始めたころに、その妻の発言を聞いたのです。

その日から私は考えの方向性を変えました。なるべく妻を優先することにしたのです。やむおえず私が優先してやらなければならない仕事上のこともありますが、妻が出かけたいといえば「どうぞごゆっくり」と答え「何時に車で迎えに行けばいい?」と聞き「今夜は食事が作れなさそう」と言われれば自分で適当に作ったり「外で食べてくるよ」と答えるようになりました。二人のスケジュールが重なれば、私がよほど優先事項でない限り妻を優先しようと行動を開始したのです。しかし、これらもスムーズに行えるようになるにはしばし時間が必要でしたがね。

「優しさ」は難しいことではなく、とにかく全ての状況において妻を優先することで、結果的に意識することなく優しくなれるってことですね。繰り返すうち、今では無意識にゴミ出ししたり、洗濯物を取り込んだりできるようになりました。そうなると、相対的に妻の優しさも増えてくるんですよ。

仕事で忙殺されていた若い頃、は「妻は自分のコントール下にある」と無意識に考えていたようです。会社では自分の部下が指示通りに動いて、予定通りに処理がなされるのに比べ、家庭内が自分の理想通りに運営されていないと苛立ったりしていたようです。しかし、夫婦には上下関係があるわけでもなく、ましてや敵対関係ではないのです。妻がそれをクリアできないにはそれなりに必然の理由が有ると考えるべきですね。

子供がいる家庭で、散らかりがちなのは当たり前。自宅はショールームではないのですからね。多くの家事をこなしながら手が届かないこともある。専業主婦とて、子供が小さいうちは決して三食昼寝付きではない。そんなことさえ、若い頃はなかなか思いが至らず、仕事から帰ってきて、部屋の中に干された洗濯物を見つけるたびに私は苛立っていました。しかし、それも自分の思考を緩めて、家庭内にそれを求めないと決めた途端に苛立ちはなくなりました。そもそも、部屋が散らかりがちなのは、子供が小さい時期だけのことなのですから長い目で見ることです。子供たちが小学生のうちは諦めるべきでしょう。散らかすのも子供の仕事の一つと思えば諦めもつきます。

ちなみに、当家では喧嘩はほとんどありませんでした。私自身争うことが苦手でもありましたが、妻もなるべく事を荒立てない性格だったので結果的にそうなったのでしょう。「優しい」のは私ではなく、あなたの方だったのでは?と感じた日でした。「優しさ」はお互いがつくり合うものですよね。

さて、前置きが長くなりましたが・・・。

昨日、数日ぶりのオーダーに張り切って製作を開始しました。2台同時進行で製作です。その1台は Larry Carlton 仕様でとの指定でした。ポリッシュアルミケースを使った個体です。

いつものごとく準備して順調に製作が進み、インプットジャックを取り付けた時でした。一旦取り付けてみると若干曲がって取り付けられてしまいました。そこで一旦外し、再び取り付けてレンチで締め直したとこで、締込みの最後の瞬間、ちょっと力を入れすぎたんです!つまり締め方に「優しさ」足りなかったですね!レンチがナットから外れて滑ってしまい、ポリッシュアルミケースを擦ってしまったんです!

直後に確認すると、見事にケースに擦り傷が付いていました。あああ・・・あああ・・・これでもうこの個体は出荷できなくなりました。中身は全く問題ないのですが、この傷たった一つで不良品です・・・。あああ・・・。

しばし落ち込む私。でもそんなことで手を休めるわけにはまいりません。イリノイ州のギタリストが待っているのです!すぐにご新規で製作を再開しました。数時間後無事に完成!サウンドチェックも問題なし!ふう・・・なんとか納品スケジュールは守れました。

こちらでも必要だったのは「優しさ」でしたなあ!


本日の結論
きっかけがあると「優しさ」の必要性に目覚めますよ。

「独断倉庫」に関しての御意見は「啓示倉庫」へ書き込んで下さいな。



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