計測的基準点

2012年06月22日 台形のどこを基準とするのか?


外注削りのサンプルに問題が!



「ギリギリの時点で私が気づき」

本日書く内容は、自分自身への戒めとして記録するものだ。関係各位をアゲツラウものではない。

2012年6月22日朝。7時に起きた私はメールチェックも終わり、ふと机の上を見た。一昨日届いたアルミケースの削り見本が置いてある 。ケースが届いた時点で、私はすぐにパーツを取り付けてみた。すると1つだけ問題があるのを発見した。3モードスイッチの取り付けネジ穴間のピッチだ。私は19.5mmでオーダーした。この数値はこのケースを発注したショップが3モードスイッチのサイズとしてWEBに表記している。私はそれを信用して図面に19.5mmと書き込んだのだ。

だが、実際にケースの削り見本が届いてみると。3モードスイッチがスムーズに取り付けられなかった。何故だ?計測してみると確かに取り付け穴ピッチは19.5mmになっていた。図面通りだ。だが・・・何か違和感がある。そこで、3モードスイッチのピッチを実測してみたところ19mmだった。10個ほど計測してみたがいずれも19mmだった。ううむ・・・。すぐに問い合わせして修正を依頼した。ショップ側も実測し、19mmであったと詫びを入れてきた。すぐにショップのWEBは数値が修正された。他の穴は問題なく取り付けられたのでそのままOKを出した私だった。

ショップはすぐにスイッチのネジピッチ修正を指示し加工業者へ正式に発注。昨日から作業が開始された。これで2か月後に焼き付け塗装まで行って完成すれば問題は無いはずだったのだが・・・。

今朝起き抜けにジッと削り見本のケースを見ているうちに、またしても違和感を感じたのだ。パーツは全部取り付けられたしパーツ同士も干渉もしていないと確認していたのだから問題ないはずなのだが・・・でも沸き上がる違和感。どうしても気になるのでその違和感の元を確認してみることにした。それには、このケースを使っていつも作っている状態にしてみれば良い。それで問題なければ、私の単なる気の迷いだということになる。

まず、TOP面に張り込むシートを用意した。TOP面の下がよく見えるようにアバロンシートは省き、文字だけが見えるようにした。定位置にぴっちり貼り込んでみたところ! おおお!!!これか違和感の源は!

TOP面に開けられた6個の穴の位置が指定より全体的に1mmほど上にずれていたのだ。それぞれのパーツの位置関係は正しいのだから文字を貼付けないと気づかなかったのである!こりゃイカンぞ!一般的に考えると「たかが1mmのズレなんてどうなのよ?」と思われるかもしれないが、このサイズのペダルの場合、内部構造はかなりギリギリでパーツが接近している。さらに、TOP面のデザインも0.2mmの誤差でレイアウトを壊してしまうのだ。

すぐにショップ宛に「緊急」としてメールを書き、穴位置が製図より1mmほど上にズレていると報告した。すでに加工は始まっているはず。さてどこまで対処出来るのか?9時過ぎになり、ショップがメールを読んだと返信が届いた。1mmの誤差は私の計測している基準点が違っているのでは?との内容だった。

そこで、私は製図通りの基準点で採寸していると返信した。さらに、私の推測するには、ショップが作成した図面と加工工場の基準点が違っているのでは?と書き加えておいた。その根拠は、以下の通りである。



アルミケースは台形をしている。上の部分と底面では2mmほどの差がある。片側で1mmの差だ。つまり上面の角を基準点とするか、底面の角を基準点とするかで1mmのズレが出てくるってことなのだよ。設計図面にはショップが採用した基準点で数値が配置されている。私もそれを信じて採寸したのだ。そして、ショップは私の推測を前提として加工工場へ問い合わせした。

その結果判明したのは、加工工場の基準点は底面の角だったのである。基準点が1mm違っているのだから全体的に1mmずれるのは当たり前の結果だったのだ。それが判明した時点で、アルミケースの加工200個分はすでに側面が終了していた。TOP面はフットスイッチの穴だけすべて完了していた。

さて、これからどうする?このサンプルケースの穴位置でそのまま進んでもペダル自体を作ることは出来る。しかし、そうなるとTOP面のデザインをやり直さなくてはならない。微妙な修正だが、LEDの位置がどうしても譲れないのだ。そこでまだ開いていないLED穴とポットの4つ穴を1mm下にずらして開けることを検討した。それを行うためには、すでに開いている穴に取り付けるパーツとの干渉を検証しなければならない。すぐにサンプルケースのポット取り付け穴を1mmずらし削り直して、パーツを取り付けてみた。ジャックとの干渉はギリギリ回避出来ることが判明。なんとか出来る!

問題はフットスイッチの位置だ。1mmのズレはちょっと辛い。そこで直径12mmの穴を13mmに拡張して、フットスイッチをセンターオフで取り付けることにした。これで0.5mmしか修正出来ないが、後はTOP面の文字位置を修正して対応することにした。14mmまで穴を拡張すればオリジナルの位置に納まるが、それではさすがに削り過ぎだ。

私はこの最終指示をショップに出し、ショップは加工工場へ指示を出し直した。これで2か月後に焼き付け塗装まで仕上がったケースが200個届く予定だ。

さて今回のトラブルは私の思い込みにより起こった部分もある。箇条書きにして自分への戒めとしたい。

1 サンプルで届いたケースが設計図通りの加工であると信じてしまった。

2 スイッチ穴ピッチの修正が発生した時点で、他の部分も疑うべきだった。

3 ショップと加工工場の基準点の誤差が最大のトラブル原因であるのだが、
  プロがやっているからとすべてを信用してはならなかった。

4 チェック用のサンプルなのだから、徹底的にチェックするべきだった。

ちなみに、ショップとしてはゼロからやり直す方法も提案があったのだが、そのためには材料のアルミケースの在庫がすでになく、その生産を待っての加工となるため、著しく完成時期が遅れるという事態が予測された。さらに私が考えるに、その時点で削られていた200個のアルミケースは、3モードスイッチの穴が開けられているため他への転用が出来ず廃棄するしか無い状態だった。誰がこのケース加工ミスについて責任を取るのか?を論じる前に、私の対応でこのケース200個が救えるのであれば、と緊急に対応策を考えた次第だ。なにはともあれ、ギリギリの時点で私が気づきことなきを得たのは幸いだった。

さて、このような状況の場合、誰が責任を取るべき?

1 ショップは製図をした。ただし、加工工場と基準点について合意をしていなかった。
  さらに、削りサンプルがショップに届いた時点で精密計測をしなかった。

2 加工工場はショップから提供された製図に基づいて作業したが、
  その製図の基準点がズレていると指摘しなかった。
  自分たちの基準点で製図されていると信じていた為、指摘出来なかった。

3 私は加工サンプルに対して1mmの誤差に気づかず、OKを出し作業を開始させた。


本日の結論
思い込みは、命取りだね!確認!確認!

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