確認的離人症

2010年05月30日 自分自身を振り返って確認する!


「常識だと思われている理論には」

本日の話は、ターゲットがとても狭いです。

本屋に入って目指す本を買うのは当たり前ですが、本棚を眺めているうちに「あれ?この本は・・・」と気になる場合があります。新刊本だけを扱っている本屋では、そのように目についた本を気軽に片っ端から買うのはなかなか難しいのですが・・・BOOK OFF だとそれが出来ます!執筆者には気の毒なのですが・・・ね。

私の様に収入が不安定になると、読書欲が盛り上がったときに BOOK OFF は助かります。目についた面白そうな本をまとめて買っても1,000円あれば充分ですからね。先日、天気が良くていささか暑い日に「運動不足解消を兼ねて BOOK OFF まで散歩してみるか〜!」と思い立ち家を出ました。目的のひとつは、以前「日清食品」から貰っていた500円の図書券が1枚ありましたので、それが使えるかどうかの確認もしたかったのです。

さらにもうひとつの目的は、ある本を買うためです。これは数ヶ月前に BOOK OFF で10冊ほどまとめ買いした際に、何を勘違いしたか、同じ本を2冊買ってしまったのです。それにずっと気付かず、ようやく読もうと思い立ち取り出したところ・・・あららら〜〜〜!!!上下巻あるはずが上巻だけ2冊買っていたのです。こりゃ困った!そこで下巻を買おうと出かけたのでした。



炎天下を約30分かけて BOOK OFF にたどり着いてみると・・・汗ダラダラ、店内は冷房が効いていたのですぐに汗が引っ込むかと持っていましたが、意外にもダラダラと出続けて、止まる気配がありません。ハンカチ片手に「宮部みゆき著 楽園 下巻」を探してみました。ところが見つかりません!あああ・・・残念だなあ・・・。まあとりあえず急いで読まなければならないという理由は何も無いので、当分は放置しておきましょう。上巻だけ欲しいという方がいらっしゃれば1冊差し上げますよ。

念のため BOOK OFF 店員に「図書券は使えますか?」と聞いたところ「使えません!」とあっさり拒否されてしまいました。今回は徒歩ですのでもともと大量購入する気もなかったのですが、なんとなく購買意欲が削がれてしまいました。でも、来たからにはなにか収穫物は手に入れたいものです。本棚の端から端まで丹念に見て歩きました。その時、1冊だけ目に止まった本が・・・。

「岩波 明著 狂気の偽装 精神科医の臨床報告」2006年新潮社刊でした。パラリとめくってみたところ目次に面白そうな文字が並んでいました。私自身が経験した症状は、果たしてどのように解釈されているのか?うつ病で長年苦しんだ私としては気になる本です。よし!今回はこの本1冊だけを買って帰ろう!

偽りのPTSD
トラウマ狂い
うつ病の黒い犬
恐るべき子供たち
オン・ザ・ボーダー
自傷系・自殺系
殺人者精神病
アルファ系衛星の氏族たち
物質関連障害
困った人々
故障した脳


以前にも何度か書いたのですが、精神科医は「うつ病」の実体験が無くて患者の実態を把握出来るのだろうか?という疑問があります。物理的に細菌とか、ウイルス、あるいは外科的な病気であれば、客観的な症例判断が出来ますが、精神的な病状についての患者側の感覚というものを知るのは難しいですよね。私自身でさえ、うつ病真っ盛りの時に感じていたアノ感覚を現時点で詳細に思い出すことはとても難しいですし、他人に説明するのはもっと困難です。

この本を買おうと思ったのは「臨床報告」という部分です。うつ病の実態がどこまで報告出来ているのか?それが気になりました。それにもう一つ「狂気の偽装」というタイトルです。偽装とはなにか?それも気になりました。患者が偽装するのでしょうか?それとも医師が偽装するのでしょうか?

いつも読んでいるミステリーであれば一気に読み終えるのですが、「岩波 明著 狂気の偽装 精神科医の臨床報告」はじっくり時間をかけて読んでみました。なかなか興味ある記述が並んでいます。特に私がうつ病の初期に感じていた感覚の一つが「離人症」と呼ばれるものであると理解できました。その感覚を他人に説明するのははかなか難しいのですが、この本では的確にどのような症状であるかを解説してありました。私が経験した感覚にドンピシャリです。

さらに自殺に至る際の「うつ病」患者の精神的な流れについての記述では、具体例として線路への飛び込み自殺未遂の顛末が書かれていましたが、恐ろしいほど私が経験した自殺寸前の行動と一致していました。その瞬間にも「離人症」の感覚が動いていると私も思いましたが、やはり他の方も全く同じ感覚を持っていたようです。離人症についての解説がWEBにありましたので転載します。日本語として分かりにくい文章でしたので、一般的に理解しやすいように少し修正しました。青文字は私が書いた注釈です。

離人症とは、
「自分が自分自身の精神や身体から離れて外部の観察者になったかのような
知覚の変化」と定義されます。

離人症は深刻な感覚を伴うことがあります。例えば、世界が霧か煙を通すようにぼやけて見えるとか、声がくぐもって遠方からのように聞こえる、泡かガラスの檻に閉じ込められ、それによって「現実の」世界から切り離されていると言うのもよくある訴えです。


(私は薄いベールに包まれている感覚でした。色彩はモノクロームで濁った水の底にいる感覚もありました。
 音が遠くから聞こえ、味覚さえ薄れていました)

具体的には、自分が存在する実感がない、自分が見知らぬ人間であるように感じる、自分が生きている感じがしないなどの精神的感覚があり、 身体に関する訴えとして、 自分の体が死体・ロボットのように感じる、自分の体の実感がない、自分の体が大きく・小さく感じるなどがあります。

(鏡に映った自分を見て、見知らぬ人物だとの感覚が強くありました。とても怖い感覚です)

また、離人症においては、行動する自我とそれを観察する自我の分離があり、 自分の行動を離れたところから自分が観察するという感覚がしばしば起きます。 このような自我の分離は、精神内界での果てしない自問自答、堂々めぐりを体験したり、 自分の体から自分が抜け出す経験(体外離脱体験)を感じられることもあります。

(果てしない自問自答は、精神的にクタクタになってしまいます。
 自我とそれを観察する自我がぶつかり合ってどちらが本来の自分なのか分からなくなってしまいます)

外見上は、感情表出に乏しく、トランス状態にあるような様相を呈することもあります。

(当時撮影した免許証の写真は、いま見ても恐ろしいです。全く表情筋が動いていません。
 その頃の私を、娘は「死んだ魚の目をしている!」と表現していました)

離人症は苦痛をもたらすものではありますが、離人感と非現実感は基本的に現実感覚を妨げません。慢性的離人疾患者が情動の麻痺が起こってきたと述べることはしばしばあります。離人性障害における症状の始まりは通常突然であり、睡眠からの覚醒途中で起こることもあります。消失のほうは暫時的となる傾向があり、症状は数日かかって消えます。

(私は数日で消えることはありませんでした。当初の2年間は延々と切れ目なく続いていました。
 結局発症から5年後、私はその感覚が全く無くなった時点でうつ病から脱出したと判断しました)

離人性障害患者は、他人が自分の体験を真剣に取り上げてくれないと嘆きます。第三者は、一見正常に見える患者が訴える「離人感が生み出す強い不愉快」が理解できず、途方にくれます。

(この部分が職場での大きなストレスを生みます。健常者には理解できない感覚に襲われているのです。
 自分には強い不快感があるのに、再三者には健常者にしか見えないため仕事上のトラブルが起こりがちです。
 さらに職場では、その不快感に耐えるために目をつぶったり、体を横にすることがサボっていると見られがち。
 仕事の対応に加え、職場から逃げ出したくなる衝動に耐えるため、日々クタクタに疲れきってしまいます)

慢性的な離人発作に悩む患者は、発作の引き金となる刺激に対して恐怖症的となりかねません。離人症は、他の解離症状と同じく心的外傷に深い関連があるため、 患者は苦悶を感じ、日常生活機能は障害され、自傷行為や自殺企画がしばしば随伴し、長期化して、いっこうに弱まらない離人感の為に自殺してしまう例も若干あります。

(自殺を実行する瞬間にも、離人症に苦しむ自我とそれを観察する自我が共存しています。
 観察する自我が止めなければ実行してしまいます。私は観察する自我が決行直前に引き止めてくれました)


「岩波 明著 狂気の偽装 精神科医の臨床報告」で面白かったのは、一時期「ゲーム脳」なる言葉が一人歩きして「テレビゲームをやると脳がウンヌン」と喧伝されましたが・・・。この医師は「そんなことはあり得ない!」もともと「ゲーム脳」を提唱した医師は「脳に関する知識がない!間違っている!」と看破しています。否定理由の記述を読んでみると確かに「そうだよな〜!」と私にも理解出来ます。

「ゲーム脳」を簡単に説明すると「痴呆症患者はベータ波が低い。テレビゲームに熱中するとベータ波が低くなる。故に常習的にテレビゲームに集中すると痴呆脳になる」という流れの説です。これに対して国は数十億円の予算をたてて10年がかりの研究を始めたとか。

ところが「痴呆症患者はベータ波が低い」という前提条件は痴呆の臨床医にとっては事実ではないと。しかも健常者が通常の生活をしていてもベータ波がまったく検出されない事実があるというのです。さらに「ゲーム脳提唱者の医師は、脳波の初歩的知識すらない」とインターネット上に記述している某医師がいるというのです。

そもそも「ゲーム脳」理論のスタート時点でのインプット情報が間違っているので、インプットが間違っていれば、当然のことアウトプットも間違っているとね。常識だと思われている理論や新説には、結構怪しげなものが多いようで、精神病業界にはいわゆる「トンデモ本」の類が溢れているようですなあ。気になる方は、「岩波 明著 狂気の偽装 精神科医の臨床報告」を読んでみて下さい。

しかし!「岩波 明著 狂気の偽装 精神科医の臨床報告」は一般健常者が読んでも今ひとつ意味が分かりにくいと思います。症例をある程度経験した方でないと共感できにくいと思いますよ。精神科医と対峙して指示を受けたり投薬治療を経験した方で「精神科医はそういう思考をしていたのか!」と解釈できる方に読んでいただきたい本です。

最後になりましたが、この本には「うつ病患者」はネットで病状を報告しがちであると書かれていました。まあ、それは真実ですが、その事実に関して著者の書いていることと私の感覚は少し違っていました。ではどう違うのか?その感覚はここに書いても健常者には理解されないでしょうから、ひとまず終りと致しましょう。


本日の結論
この本はアノ方にお送り致しましょう!

「独断倉庫」に関しての御意見は「啓示倉庫」へ書き込んで下さいな。



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