六弦的軍用品

2005年05月28日 ロシアより愛をこめて!



「ソ連製軍用」

「ソ連」という言葉に、皆様はどのような思いがあるだろうか?寒く、怖く、融通が利かなくて、無愛想・・・。そんなイメージが私にはある。かつてロケーションでヨーロッパに移動する際に「モスクワ空港経由」のケースが何度もあった。空港の土産品店を観ると「マトリューシカ」と同じように「レーニン」の像が沢山売られていた。それを買う人の姿を見たことはなかったが。

空港で働く人々も表情が硬く怖かった。とてもサービス業に参加している感覚ではないな。笑みがない。それが「ソ連」の持つトーンだったのだろう。スタンドバーでウォッカを飲み時間をつぶしたとき支払いを済ませると、おつりは当然ソ連のお金の小銭である。そこ以外は全く使い道がなくなる小銭なのだ。あわてて売店でチョコレートなんぞを購入し使い果たすことにした。

トランジットの際の身体検査も厳重を極めた。持っていた週刊誌の全ページを調べられたこともある。なんとなく「おびえている国家」的なイメージさえ持ってしまった。この怯え具合は今のアメリカと同じか?

「ソビエト社会主義共和国連邦」と名付けられたアメリカと拮抗する強大な国家は、マルクス主義の思想が造り上げた実験的国家だったが、その思想の中に「人間の驕り」や「人間の怠慢」そして「他人へのひがみ」「人間の腐敗」などがあることを無視した国家だったのだろう。クレムリンの政権中央腐敗が原因となりやがては分離し、立ちはだかる資本主義社会の前に実験国家としての寿命は尽きた。いま、その国家の一部はロシアとして存在している。そして・・・至る所に立っていたレーニン像は消えた・・・。

思い出せば10数年前、私はイタリアのミラノに仕事で行った際に、1本の腕時計を買った。それはソ連製の軍用「高級将校専用腕時計」だった。見るからに頑丈そうで、なかなか面白いアナログの高級感を備えていた。高級革ベルト、手巻きで、カレンダー付きだったが、表示される曜日がロシア語であるため現在表示されているのが何曜日か分からない。そんな面白さに惹かれてつい買ってしまったのだ。もちろん安かったし。

しかも、その腕時計には「保証書」が付けられていた。ソ連の保証書なんぞ実質的価値はまったくないのだが・・・。そして、その直後「ソビエト社会主義共和国連邦」は崩壊し、「腕時計保証書」の存在意義も完全に崩壊した。国家崩壊と、保証書の崩壊が同じ次元で語られるのは大笑いである。ロシア語やロシア料理は言葉として存在するが、ソ連語やソ連料理という言葉は聞いたことがない。やはり文化の育たない国だったのだなあ。

さて、その高級将校用腕時計にはロシア語で何らかの機種名が書かれていた。私にはロシア語の知識がまったくなく、そのまま放置していたのだが、8年ほど前に某登録会員に逆貢ぎ物として差し上げてしまった。そしてしばらくして、その登録会員から「腕時計に書かれていたのは吹雪という意味でした!」と調査結果が返って来たのである。ほほう!「吹雪」か〜!いかにもソ連時代の厳しい冬を象徴するかのような商品名である!さらに某登録会員は言った「この腕時計が気に入りました!ニックネームを付けました。それは『こしじ』です!」この意味が分かる若者は少ないだろうなあ・・・。

んんと・・・なんでこんな話からスタートしたかと言うと「ソ連製軍用品」がテーマなのだ。又してもギター話になってしまうがお許し頂きたい!ギターのサウンドが「コンデンサ」の取り替えによって劇的に変化すると、何度かご報告して来た。そして、他の方々から「John.E.Fast」のコンデンサが良かった!とのご報告を頂いていたのだが、この会社はアメリカの軍用品を作っている会社である。武器が前線で使えなくなれば大問題となる。軍用品ということは製品チェックが厳しいのである!

そんな知識を仕入れた直後に、面白いコンデンサをオークション上で発見した。「ソ連製軍用コンデンサ」である。あくまでも「ソ連製」であり「ロシア製」ではないのだ。よく見ると1980年代の生産品であると書いてあった。確かに「ソ連時代」の製品だ。軍用品だからソ連製といえども精度は高い。内容としてはオイルコンデンサの「VitaminQ」と同じだと言う。本家スクラブのコンデンサ「VitaminQ」に比べ音が太いと書いてあった。確かに一度「VitaminQ」を試した時に、サウンドのシャッキリ感は出たのだが「若造の薄っぺらさ」を少し感じていたのだ。ソ連製軍用品はそれが太いとなれば、かなり私好みの音なのではないだろうか?

てなことで、思わず「ソ連製軍用コンデンサ2個セット」を落札してしまったってわけだ。1980年代に生産され、しかも生産した国家さえ消えてしまったというのに、工業製品はまだまだ残っているのだ。横流しされた物資なのだろうか?しかも、マニアックなギターフリークの間では結構人気がある「ソ連製軍用コンデンサ2個セット」のようだ。その店はすでに600セットを販売したと言う。

私もかなりマニアックな世界に突入してしまった感があるなあ。

先日、貢ぎ物として届けられた「コンデンサ・テスター」を利用し、コンデンサによる音の違いを確認したいのだが、それにはコンデンサを外したギターを用意しなければならない。さてと・・・どのギターのコンデンサを外して試験器として使おうか・・・と考え始めていた時だった!ふと「あいつにはコンデンサを付けていないぞ!」と気付いたのである!

数年前にレストアが終了した「YAMAHA SG 2000改」がある。こいつにはさまざまなコンデンサを試したのだが、結局は気に入らず。ピックアップをYAMAHAからGibsonに取り替え、最終的にコンデンサ無しにして、ボリュームだけのシンプルな配線で仕上げたのだ!とにかくすっきりしたサウンドのギターとして造り上げたかったのだ。これならコンデンサの影響を受けずにすむ。そのまんまで「コンデンサ・テスター」に繋げばテストしたいコンデンサのとっかえひっかえテストが可能となる!やった〜〜〜!!!これで準備完了である!後は、「ソ連製軍用コンデンサ2個セット」が届くのを待ち構えるばかりである!

そんな準備が整ったところへ、昨日郵便で届けられたのが上のコンデンサだ!仕上げがいかにも「ソ連」てな無骨な感じだなあ。持ってみるとずっしりと重い。画面では見えていないのだが、印刷をよく観察すると8905の表示があった。1989年5月生産のようだ。見た目よりも実質が良ければ私は良いのだ。人様に見せる部品でもないし。純粋に音の勝負である!いざ、テスト開始!だが、そのためには比較検討材料が必要だな。先日手に入れたお気に入りのコンデンサ「スクラブ・オレンジドロップ」を用意し、まずはその音を聞いて基準とするか?(おいおい!この先はないのかよ〜!)




本日の結論
当家の工具箱を観たら、ギター用のコンデンサが6種類9個もあった!
笑っちまうね!

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