象牙的鞍削考

2005年03月28日 どうせやるならここまでやってみるか?


これはなんだ?

「軽い博打」

象牙はワシントン条約によって1989年から輸入禁止になっている。それ以降、輸入国・輸出国などが象牙の国別管理(ナンバーリング)をする努力をし、1999年に1度だけ試験的に日本に輸入された。しかし、輸入量は限定的であり、現在流通してる象牙は輸入禁止以前の在庫で賄われているのが現状だ。そこで日本の象牙業者は環境庁や経済産業省の協力のもと業者登録をし、登録業者のみが象牙原料のナンバーリングをすることによって管理し、販売し、流通の透明性を高め、不正な象牙取引の排除を目指している。このようにして、自然保護と自然物の調和のとれた消費の道を摸索している段階だ。

さて、本日なぜ「象牙」の現状について書き出したのかと言うと、昨今tanabe.tvの掲示板では「アコースティックギターのサドル」について「自作の蘊蓄」が繰り広げられていたが、サドルの素材として「ボーン」であったり「タスク」「エボニー」であったりといくつかの選択肢がある。もちろん他にも金属もあったりとバリエーションは豊かである「ボーン」はその文字の通り牛の骨である。そして「タスク」は「人口象牙」の事である。

なぜサドルに「人口象牙」を使わなければならないのか? それは出来る事なら「象牙」を使いたいのだが、上記したように現在ではワシントン条約によって「本物の象牙」は輸入禁止になっているので、入手が困難になっているからだ。現在一般的に手に入れられる象牙は、主に輸入禁止以前に日本に入っていた在庫分である。つまり、この先補充はされる予定がない素材なので流通価格はかなり高値安定しているのである。

ちなみに牛骨のサドル素材の価格を調べてみると、ある程度の幅はあるのだが1本が500円〜800円前後である。それが象牙は5000円〜8000円といきなり価格10倍の高額になってしまうのだ。この価格だと素人が自分で手に入れて加工するにはいささか勇気がいる。


牛骨サドル素材 これはちょっと高めで1000円と1400円だ。


象牙サドルと牛骨サドルのサウンドの違いは、現時点の私には知識として全く持っていない。だが「人口象牙」が多く使われている現状は「真性象牙」のサウンドが魅力的であるからだろうと推測できる。そうなると「象牙」をどこかで手に入れて試したくなるではないか!BugsGearをもっと魅了的なサウンドに育て上げるためには「象牙」を手に入れる必要があるのでは?と考え始めた私である!

ところで、ギターサドル用の象牙はどこで売っているのだ?一般的に楽器用の素材を販売しているショップで手に入るはずだが、それらきちんとサドル用に整形された象牙の価格は先ほども書いたように、ほぼ1本5千円以上の定価となっているのだ。これから様々なテストを繰り返し自分で作り上げるためには5本〜10本は手に入れてみたい!ううむ・・・数万円の出費を必要とするのか・・・。何か他に安い入手方法は無いのか?

そもそも象牙はかなり大きなサイズから必要サイズを切り出して使われる。昔から象牙は印鑑等に使われるケースが多い。そうなると、必要サイズを象牙から切り出した際に出て来る「切り端材」が存在するはずだ。本来であれば廃棄される部分だが、コレだけの貴重品となれば「使えるユーザーがいれば使ってほしい!」と考えるのが生産者の思考だろう!パン屋の店頭に「無料でお持ちください」とパンの耳が置いてあるケースがあるしね。

マグロの大トロはその昔捨てる部分だった。脂濃すぎてくどいのが当時の日本人には好まれなかったのだ。ところが、日本人の食事の指向はすっかり西洋化し、脂分を好むようになった。そこで大トロが一気に人気部位に成り上がり、いまではすっかり高級食材になってしまった。いままで捨てていた部分がダメとは言い切れないのである!カステラの端っこの切り落としもかなり美味いし!

こう考えると、本来捨てていた部分が再利用できる可能性は大きい!象牙はどうなのだろうか?調査開始!おっ!意外にも早めに見つかったぞ!「象牙の端材」がかなり安い値段で販売されているのだ。500g単位だったので量としてはたっぷりある。だが・・・それは象牙の切れ端である!自力で必要サイズに整形する必要があるのだ!その手間が大変そうだなあ・・・。しかし安い!この端材1個で、サドル2本は取れそうである!かなりの数が作れそうだ!これだけあれば失敗なんぞは怖くないだろう!


これで象牙の端材500gだ!


この象牙端材の厚みは5mm程度だから、Rがついた皮面の部分を削れば、必要サイズの3mm厚に仕上げる事が出来る。幅も25mm〜30mmはありそうだから、うまく行けば2本分の高さがあるし、2cm以下の細い材でもサドル1本は確実に取れる。しか〜し!そこに大きな盲点があったのだ!このショップの端材はほとんどが6cm〜7cm程度の長さしかないのだ。そうだよなあ・・・印鑑の長さはその程度の長さだよなあ・・・。端材も当然6cm〜7cmになっちまうのか・・・。

BugsGear用のオリジナルサドルを計ってみると、76.8mm x 10.5mm x 3mm である。という事は、サドルの材料としては最低でも長辺が77mm以上ないと役に立たないのだ!うおおお〜〜〜!!!せっかく見つけた「象牙端材」だったがこのサイズでは使いのにならない!諦めなければならないのか〜〜〜!!!く〜〜〜っ諦めきれんなあ・・・。ううう・・・。何とか出来んのか〜〜〜!!!それとも2分割するか?

悩みながら、さらに象牙端材の画像をじっくり見ていると。結構長さは不揃いに見える。ひょっとするともう少し長い77mm以上の端材も存在するのではないだろうか?そんな気がして来た。ショップと相談して77mm以上の端材だけを選びだしてもらい買う事は出来ないのだろうか?ダメモトで相談してみるのもアリだな!

そんなわけで3月24日夜に象牙ショップ担当者へご相談メールを送ってみた。ついでに、追加料金で厚さ3mmへ加工してもらえるかどうかも質問しておいた。翌日25日になり、返事が送られて来た。好感触!こ〜かんしょくである!ほんのわずかではあるが、象牙端材の長目のものが存在するというのである!残念ながら端材の加工はやってもらえないという。とりあえず材だけでも手に入ればラッキ〜である!後は自分でなんとかなるだろう!

さらにショップと数回のメールのやり取りが続きついに、ショップ内に77mm以上の象牙端材は300g存在する事が判明した。上等である!300gといえば、上の画像の3/5である。サドル30本分はありそうだな!少なくとも20本は確保できるだろう!てなことで、私は迷わず「300g全部譲ってください!」と注文をしたのである!即OK が出たので、その夜WEBバンキングで端材料金をショップの口座に振り込んでおいた。これで購入手続きは完了である!

ショップの口座へは、3月28日朝の業務開始時刻に入金される事になる。ショップ担当者からはその後、振込を確認したらすぐに象牙端材を発送するとメールが届いた。ふっふっふ・・・たぶん29日か30日にはこの手に届くだろう!実に楽しみである!

だ〜が〜!ひとつ気になる事もある。象牙の表面に近い部分は果たして本当にアコースティックギター用サドルとして立派に通用する材料なのだろうか?象牙そのものは高級サドル素材なのだが、当家に送られて来る端材はあくまでも「はんぱもの」である。使えるかどうかは時の運なのだ!作ってみなきゃ分からないのだ!つまり、今回の象牙端材入手は「軽い博打」的要素も含んでいるのだよ!




本日の結論
もし届いた端材がサドルとして使えないと判明したら・・・へこむだろうなあ・・・!

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