六弦的復活頭
2004年09月01日 気になる修理結果は!




「あの修理方法はどうなの?」

いや〜!9月になっちまいましたな〜!で、又してもクソ暑い日になって外に出りゃ汗だらだら。さて、こんな暑い日に私はさらに暑い思いをしなければならなかったのだ!それでは気になるあの結果を御報告しよう!

事の起こりは8月8日の事だった。Gibson ES-175をスタンドに立て掛けておいたのだが、ふとした拍子に引っ掛けて倒したのだ。ああららら〜!と手を伸ばし掴もうとしたが・・・。バタン・・・。呆然と眼線をギターに向けると、そこには無惨にもヘッドがバッキリ割れてしまったGibson ES-175の悲惨な姿が横たわっていたのだ・・・。定価42万円のギターが・・・ううう・・・。


泣いてばかりはいられない。すぐに気を取り直し、この破壊されたギターのヘッドを何とかしなければならないぞ!と策を練った。自力で修理することも一瞬考えたが、余りにもテンションがかかる部分なので、ここは一つプロの手に委ねることにした。さて、リーズナブルにヘッド再生してくれるショップはどこにあるのだろうか?

広く六弦系登録会員にも情報をいただきつつ、私自身もWEBを探しまくった。その結果選びだしたリペアショップが「■■ factory」だった。所在地は山手線「上野駅」近くの「入谷」だ。地下鉄日比谷線「入谷駅」から徒歩5分の位置にある。修理に持ち込んだのは8月12日。真夏日でギラギラした太陽が照りつけていた。ギターとケースの総重量は10数キロあるだろうか。それをぶら下げ、延々、電車を乗り継ぎ最後は徒歩で持ち込んだのであった!

完成予定日は9月1日だった。そこで本日朝、メールで「完成していたら引き取りに行きたいのですがいかがですか?」と連絡しておいたところ、昼前には「完了しています」との返信が来た。昼休みになるのを待って会社を飛び出した私であった。外気温は34度になっていた。行きは手ぶらなので問題はないのだが、帰りは汗ダラダラになりそうな気配だ。覚悟しよう!

半月前に来た行程なのだが、乗り換えの際に電車のどのポジションが有利なのかをすっかり失念していた。おろおろしながら再度学習を行いつつ先を急いだ。入谷駅から地上に出るとやはり太陽は容赦なく照りつけてきたが、逃げ隠れする日陰はまったくない。そんな時に限って行きたい方向の信号は赤。さらにジリジリと太陽光線は降り注ぐのである。ジッとしていられなくなり、横断歩道橋へと足を向けた。

首都高速の入谷出口を右に見つつ足を進める。ズンズン歩いて約5分後、目的地の「■■ factory」へ辿り着いた。相変わらず薄暗い店構え。ショップと言えるような体裁ではない。ごちゃごちゃと修理品やパーツが置いてある。わずかにある床の隙間が通路だ。ドアを開け声をかけた「ごめんください!引き取りに来ました!」この声の掛けかたで、いかにこの店が客の来訪を無視しているかが解るだろう。職人2人だけ経営しているので、受付嬢なんぞは存在しないのだ!

奥からのれんをかき分け職人が顔を覗かせた。前回預けた時の方だ。職人は「ES-175ですね!出来上がっていますよ!」と作業場の奥から私のギターケースを運んで来た。ケースを床に置き、ギターを取り出した。修理したヘッドは綺麗に治っていた。塗装は傷跡を隠すために塗りつぶしの薄茶色だ。確かに見た目はその塗りつぶしのおかげで「修理したぞ!」の感が強い。だが、歴戦の兵(つわもの)っぽい雰囲気もある。長く使い続けると、この塗装に愛着がわくかも知れないな。自虐的か?


画像の右端は塗装が透明なのが分かる。

補習した部分には補強材を入れ削り出し、オリジナルより少し厚めに出来上がると聞いていたのだが、見た目にはほとんど気にならない厚みだ。予想よりかなり薄い感じがすると伝えたところ「これだけの厚みがあれば充分です。大袈裟なボリュートは必要ありませんよ」 との説明だった。「すでに、弦を張り5日間置いてあますが、チューニングの狂いもないので大丈夫でしょう!もし何か問題が出ればすぐに御連絡ください。すぐに対応します!」と追加説明された。ちなみに、修理後の保証期間は3か月間だ。

で、帰ろうとした時、足下にアコースティックギターが置いてあるのが眼に入った。修理中のM社のD-4Xだった。そのM社のD-4Xは哀れな姿を見せていた。ネックの反りを補正するための「アイロン」と呼ばれる道具が取り付けられていたのだ。D-4Xの本体はピッカピカだった。気になったので、なんでこんな新品状態なのに修理しているのか?を尋ねてみた。

「最近のM社は生産時のロットによって当たり外れがあるんです。問題があるロットのギターはほとんど全部ダメですね。高いからとか安いからとか、まったく関係ないです。D-XでもD-4Xでもダメな物はダメですね。このD-4Xも楽器屋から回って来た新品修理なんですよ。新品状態で反りがかなりひどかったんです」

なんですと?それではブランドが崩壊しているではないか〜!さらに暴露話しは続いたが、ここから先はとてもそのままは書けないキツイ内容だった・・・。おおコワ!興味がある方は、いずれ私と顔を合わせた時にお尋ねいただきたい。直接ならお教えしよう!さらに私の持っていた疑問をぶつけてみた。

「今から18年程前にGibson LP Customの指板がボディーから少し浮いたので
 渋谷のPAC●に修理に出したけど、修理から返って来たのを見ると
 指板とボディーの隙間に白いパテが詰めてあっただけ。あの修理方法はどうなの?」

「そのGibson LP Customは70年代の後半ですか?」

「えっ・・・確かに1978年製ですが・・・」

「そうですか!それではしょうがないですね。70年代後半のGibsonではかなりそのケースが多いんです。
 材がねじれたり、指板が剥がれたりと、当時の造りがそうなんですよ 」

「あらら・・・で指板はどうやればボディーにくっつくんですか?」

「そのままにして置く方が賢明です。演奏に影響がなければ諦めて下さい。
 前回の修理も自分でパテ埋めすればタダで済んだのに!もっともパテ埋めの必要もありませんがね!」

「そういやあ、私はこちらのWEBの修理状況の写真を見てここならと来たんですが、
 知り合いも多くのギターマニアがこちらの画像を参考に自力で修理しているそうですよ」

「あらら・・・それはそれで困りましたね。真似をしてさらにひどくなると・・・」

「自己責任で修理するんですからそれは問題ないでしょう!わははは〜!
 それでは、またトラブルが発生したら御相談しますのでよろしくお願いします!」

「いつでもお引き受けしますよ!もうギターの弦を張ったまま倒さないで下さいね!」

「使わない時は、必ずケースに入れるようにします!」

なんてな世間話をしつつ、店を出た。良く考えると、私は一度も職人の名前を聞いたことがない。つまり今も知らないのだ・・・。そんな関係があっても良いではないか!ギンと照りつける太陽は容赦ない。帰りは右手に重いギターケースをぶら下げているので、すぐに汗が吹き出し始めた。

やがて上野駅に辿り着き、山手線に乗り換えるため切符の自動販売機の前に立った。と、その時!1人の年老いた女性が私の横に立った。年齢は80才は過ぎているように見えた。私が切符を買う様子をジッと見つめているのを感じたので、女性の方へ顔を向けると・・・。

「すみません・・・ちょっとお尋ねしたいのですが・・・。
 160円の切符を買うにはどうしたらよろしいのでしょうか?」

そう聞かれたのである!おおお〜〜〜!!!なんという初歩的な質問だろうか!心洗われるような新鮮な質問である!そう言えば、かつてフランスの駅で、切符の買い方が解らず自動販売機の前で立ち往生していたら、親切なフランス人が助けてくれたなあ・・・。などと過去の自分を思い出したのである!ここは親切でステキな中年男性を演じなければならないだろう!

「まずその200円をこちらに入れて下さい。
 はい、それではこちらのボタンを押してから160の数字を押して下さい。これで終わりです」

「どうも、ありがとうございました・・・」

老婆の消え入るような声を背中に颯爽と歩き出した私だった。だが・・・そのときふと私の心に過るものがあった。あの老婆は決して私の勤務先に「白桃の詰め合わせ」を持って現われるようなことはしないよなあ・・・・(お〜い!なに考えてんだよ〜!)



本日の結論
ES-175は持ち帰って弾いてみたら、サスティーンが良くなって気持ちよかったぞ〜!
私はギターの修理をこのSHOPに今後も頼むことにした!今は言えないが根拠あり!

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