読了的過去談
2004年07月22日 そもそものスタートはここにあり!
 
 
これは復刻版のようだが・・・。


「今となっては50年前の作品である!」

フレドリック・ブラウンという作家を御存じだろうか?私がSF好きになる大いなる切っ掛けとなった作家なのだ。今を去ること38年前・・・かなりイニシエの思い出になるが、中学2年生の頃の話である。その頃と言えば、ウオルト・ディズニーが無くなった年である。映画なら「ミクロの決死圏」や「マカロニ・ウエスタン」全盛時代だった。日本では加山雄三がスターになり、寺内タケシが「運命」なんてなLPを発表した頃だし。「ウルトラマン」の放送が始まったころでもある。

近所に住む同級生の福浦君がある日1冊の本を貸してくれた。(この福浦君は現在、登録会員00084として登録されている方だ)フレドリック・ブラウン著「天使と宇宙船」だった。短編と中編で16編が載っていた。SFは「空想科学小説」だと思っていた時代にまったく違ったアプローチのSFを読まされたのだ。そのSF感覚は当時の私にはショックだったし、とてつもなく面白かった。

すぐさま先に出版されていた短編集「未来世界から来た男」を手に入れて読んだ。こちらはさらに短編、中編が20編も詰まっているものだった。大いに興奮して読んだものだ。今になって考えると、大人の色っぽいオチの話もあったのだが・・・。その後、フレドリック・ブラウンの本が出る度に手に入れて読み続けていた。「スポンサーから一言」「真っ白な嘘」なんてな本も記憶しているなあ。

やがて高校生になってもフレドリック・ブラウンを読み続けていたが、このころになると悪知恵も働くようになり、学校から自宅に向かう途中にあった本屋に頼んで親父の名前で「ツケ買い」するようになった。親父は公務員だったので、勤務先に請求書が毎月届けられていたようだ。今のようにむさぼるような読書スピードではなかったのでたいした金額ではなかったのだ・・・。今頃になって気付いたのだが、この「本のツケ買い」に関して、父親から一度も言及された記憶がないなあ。モノが本だけに親父も黙認していたんだろうな・・・。

親父は青年の頃、画家になりたかったようだ。確かに趣味で油絵を描き、デッサンも上手かった。だが戦争に行き、終戦後は生活のため税務署員となった。定年で引退するまでずっと税務署員だった。そんな人生の中でわずかに美術に未練があるのを感じさせていたのは「世界美術全集」の存在だ。親父が亡くなって12年経つが、数十巻に及ぶ美術全集は今も実家に置いてある。母は持て余しているようだが・・・。それ以外にも「江戸川乱歩全集」とか、いくつかの全集を買い集めていたが・・・。それらを親父が読んでいる姿を私は見たことがなかったなあ。あれらの本はどのような意味で集められていたのだろうか?今も謎のままである。そんな親父であったから、私の「本のツケ買い」は言及されなかったのだろうか?

なんてなことを思い出していたら、なんと「天使と宇宙船」と「未来世界から来た男」の復刻版が出版されていることを知った。情報を読むと、そこにはそれぞれの目次も掲載されていたが、目次を読んで思い出せる内容はわずかしかなかったが・・・。おいおい!あれ程熱心に読んだのに内容を忘れちまったのか?こうなりゃ復刻版を手に入れて、また読んでみるかなあ。

なんてな経緯で、やがて1970年代になり「星 新一」や「筒井康隆」などの日本人作家の世界へと突入する私であった。「星 新一」の端正なSFは好きだったが、「筒井康隆」の異端的SFはもっと好きだった。ツツイストとしての自虐的異端的実験的世界はtanabe.tvの根底に流れているような気がするなあ。

フレドリック・ブラウンはSFだけでなく、ミステリーも書いていた。「交換殺人」なんてなのも有名な小説だ。殺人を犯すには「動機」が必要だ。その動機が逮捕の切っ掛けとなる。だが、まったく関係ない2人の犯人がそれぞれ殺したがっている相手を交換して犯行に及べば、殺人者と被害者にはつながりや動機が発見できなくなる。本来の殺人動機を持った人物は同時にアリバイも構築しやすい。そんな小説だった。交換殺人トリックの元祖だ。

「3.1.2とノックせよ」「不思議な国の殺人」「霧の壁」なんてのも読んだ記憶があるが、いずれも面白かったとしか記憶していないなあ・・・。ところで、私が初めて読んだフレドリック・ブラウンの本「天使と宇宙船」は、いったいいつ頃書かれたものだろうか?ちょいと調べてみて驚いた!なんと1954年の作品なのだ。今となっては50年前の作品である!しかし・・・私が初めて読んだ時点では、まだ11〜12年前の本でしかなかったのだ。大笑いである!

SF短編がお好きな方で「天使と宇宙船」や「未来世界から来た男」をまだお読みになっていないのであれば、一度お読みになっても損はしないだろう。旧さを感じさせない短編集であると思うのだが・・・。



本日の結論
フレドリック・ブラウンの短編には落語のオチみたいなストーリーもあったなあ〜!

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