暴走的結婚式
2004年05月17日 悲愴感漂う冒険が始まった!
 



「嵐が近付いていた・・・」

人生には何度も危機が訪れる。その度に人はグッと踏ん張り乗り越えて行く。だが、時には足下がぼろぼろ崩れ去り、あえなく谷底へ落ちて行くこともある。だが・・・再び膨大な時間をかけ這い上がり、希望を胸の片隅に抱きつつ明日へ向かって走り出すのだ!

これは、平成の世まで生き延びた登録会員A氏が先頃経験した感動の物語である!A氏から届いた短いメールを元に、私が全貌を再構築してみた。現実と違っている部分も在るだろうが、それは独断倉庫の常である!適当に解釈して読むように!




時代は遡る。A氏は10数年前突然離婚した。理由は書かないが・・・。当時A氏には男の子が2人いた。妻は2人の子供を連れて出ていった。それ以来、A氏は元妻の顔を見ることは無かった。子供だけには親権者として限られた状況で時として会うことができた。男親としては男の子の成長は気になるのだ。その後、A氏は再婚した。

新しい家庭を守り続けたA氏は、やがて病魔に襲われた。胃ガンであった。転移も多かったようで、切除された臓器はいくつにも及んだ。だが、幸い命は取り留めた。食は細くなったが、酒もいける。むしろ発病前より風邪もひかなくなり、妙に元気になってきた昨今だった。体力づくりの為、以前からヨットを仲間と楽しんでいたA氏だった。再婚した妻と共にクルージングを楽しんでいた。

仲間のヨットで楽しんでいれば、そのうち自分のヨットが欲しくなるのは目に見えていた。昨年ついに、念願の自家用ヨットを手に入れた。中古ではあったがA氏には十分なブツだった。夫婦でクルージングを楽しむ日々が増えていった。その後ガンの再発も無く、平穏な日々が過ぎていった。

そして、先頃突然「結婚式の招待状」を受け取った。別れた男の子が成長し結婚する年齢になったのだ。父親の心は乱れた。A氏にはそれが「儀礼的な招待状」であると思えた。その招待を真にうけて、結婚式に参加することなんぞはまったく考えられなかった。大人としての判断である。だが「息子の晴れ姿を見届けたい!」その思いがつのっていった。苦渋の日々が続いた。

結婚式場の関係者を装って、せめて遠くから式を覗くだけでも出来ないのものか?なにか手は無いのか ・・・。例えば・・・。

◆ 式場の専属カメラマンを装い変装して堂々と乗り込む。(A氏は元カメラマンだった)

◆ ウエイターの格好をして披露宴会場に忍び込む。(実行できる可能性が強い!)

◆ 披露宴の司会者を替わってもらう。(とても難しい選択だ)

◆ 披露宴会場のロビーでひたすら息子が通過するのを待つ。(地味だが確実性がある)

いくつもの作戦を組み立てては消していった。これらは大人が取る行動では無い・・・。確かにそうなのだ。正々堂々と会えるに越したことはない。だが、心理的なバリアがA氏を束縛していた。元妻と顔を合わせず、息子夫婦の顔だけを見る方法は無いのか・・・。その日は近付いてきた。だが、まだA氏は結論を出せなかった・・・。作戦が立てられなかった・・・・。彼等の晴れ姿を目にすることは出来ないのか・・・。途方に暮れていた・・・。

時は迫った。明日はいよいよ結婚式。A氏の精神状態は大きく揺さぶられていた。このまま何も動かなくていいのか?実の親として一言「おめでとう」を伝えなくて良いのか?行かなくて後悔はしないのか?今、何をするべきなのだ?A氏の自問自答は続いた・・・。そしてその日、嵐が近付いていた・・・。

夜になった。A氏は居ても立ってもいられなくなった。ここは熊本、式場は長崎。これから陸路で行くには遠すぎる・・・だが・・・海を突っ切る事ができれば・・・おおお!直線距離なら長崎は目の前にあるぞ!「そうだ私にはヨットがある!よ〜し!いくぞ〜〜〜!!!」突然決断したA氏はヨットハーバーへ向かって飛び出して行った!迫り繰る嵐、それに漕ぎ出す先は夜の海なのだ!そこには危険きわまりない状況が待っている!

ここから先は、以下に転載した本人のメールの行間から御推察いただきたい!

行って参りましたよ。
結婚式 の前夜、居てもたっても いられず、
近くの港まで、ヨットで行きましたが(5時間掛け)、
何ををどうしたら良いか判らず、 現場ホテルの周りをウロウロして居りましたが、
長男が、気ぃ効かしてくれて・・・
二人(新郎新婦)を呼出してくれ、会うことが出来ました。
又5時間かけ嵐の中帰って参りましたが、
雨の長崎、感謝感激雨アラレ大作戦 結果・・大成功・・・・でした。


そうか〜!帰りの5時間の方が辛かった様だな!これを暴挙とひとは言うのだろうか?それとも親の一方的な激情なのか?往復10時間をヨットで、と考えた瞬間にこの結果を運命が引き寄せたのだろう。決して他人に奨められる手ではなかった。不幸にして別れて暮らすようになったが、 子供達よ!君たちに会いたくて、そしてその伴侶に会いたくてヨットを操って、荒れ狂う夜の海を、君たちの元へと走ったのだ!親の思いはここまで熱いのだ!遠くからでもオヤジを大事にしてやれよ!

ところで、この話にはまだ続きが在る。
実は今回、次男が先に結婚したのだ。長男は今年の10月に式を挙げる予定だ。さあど〜するA氏よ!次も同じ手を使うんじゃないぞ!長男には、もっとグレードアップした「オヤジの暴走」を見せつけてやれ〜〜〜!!!



本日の結論
娘よ!私は船酔いが激しいので、こんなことはやらないからな! (やる必要も無い!)

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