読了的方舟本
2004年03月17日 引き続き同じ作家を読んでみた!
 



「疑問を抱くところが」

本日も、内容的にあまり詳しく説明しない方がよろしい本なので、短い御紹介になるが、御勘弁頂きたい!

佐々木 敏著「ゲノムの方舟」は559ページ・2段組みだ。読み通すには勢いと覚悟が必要だ。これまた蘊蓄攻めの本である。特に遺伝子工学の分野について深く掘り下げてある。主人公は日本人である。遺伝子工学の世界的権威だ。必然的な蘊蓄であるといえる。

地球上に存在する人類の総数は何億人が適正なのだろうか?爆発的に増え続ける人類の明日はどうなっていくのだろうか?そして、未来に人類が生き残り続けるために「世界的人口抑制策」を密かに生み出した集団があった・・・。だが、それは諸刃の剣でもあった・・・。

アメリカ国家とは何か?民族とは何か?人種とはなにか?差別とは?多くの課題を抱えつつ物語は疾走する。途中で止められない面白さだ!次々にページをめくり、事件の経緯を早く知りたくなる本だ。この本を読んだ人々の感想の中に「このドラマは是非アメリカで映画化してもらいたい!」と書いてあるのを発見した。

「アメリカ」と限定しているところにこの本の意味がある。これから読む方のためにそれが何故かは書かないが、読み終われば素直にそのような感想になることは請け合いである。最初から最後までずっと「仕掛け」だらけである。陰謀のからみあいが、裏切りを助長し続ける。「人種の壁」が戦いのキーワード。

この本にも多くの銃器が登場する。つまりドラマの展開上、そのような銃撃戦が存在すると言うことである。この作家は実に蘊蓄熱心で頭の良さを感じさせるのだが・・・。銃器に関して本当にこれで良いのだろうかと疑問を抱くところが終盤になり1か所だけ見つかった。以下の通りである。

佐々木 敏著「ゲノムの方舟」551ページ〜552ページより引用

得意のマシンガンを諦め、拳銃を選ばざるを得なかった。
トッドの持ち物だった、ロシア製のトカレフを取り出すとそれに安全装置をかけた。
詳しくはわからなかったが、マシンガンの経験からみて、
これで安全装置がかかったのだろうと思える操作をしたあと、
それを上着の内側の、ベルトとシャツの間に差した。

おおお〜〜〜!!!またしてもトカレフである!ロシア製のトカレフと書かれているので、オリジナルのTT1933トカレフであると解釈できる。以前に読了で御紹介した「粗忽拳銃」でトカレフについて御紹介したが、私の知識によると「ロシア製のトカレフには安全装置は付いていない」のだが・・・。どうなのだろうか?

私が持っていたモデルガンのトカレフにももちろん安全装置は付いていなかった。ちょっとWEBに転がっている情報を探してみた。

TT1933(M1933 トカレフ・ピストル)

1930年、旧ソビエトのフィヨドル・バジリビッチ・トカレフがブローニングやコルトガバメント を見本に改造設計したソビエト軍用ピストル。 TTはツーラ・トカレフと読む(ツーラ造兵廠で作られたトカレフ33年式拳銃、の意) とにかく生産性重視のため極端に簡素化され、軍用ピストル中最も少ない部品構成で設計された。そのため手動安全装置(マニュアルセフティ)すら付いていない。

第二次大戦中のソビエト兵(主に将校や砲兵)のお供として大量に生産された。 戦後も長く使用され、東欧、中国などでコピー製品が製造された。中国名「黒星」。 はてはアジア近辺で粗悪コピーされて日本に密輸されたりした。

やはりそうであった。安全装置はな〜〜〜んも付いていないのがオリジナルのトカレフなのだ。と思っていたら、別の情報を見つけてしまった!以下の通りである。

正規に米国に輸入されたトカレフには後つけの 安全装置(1911の様な)が装備されます。カッコ悪く、信頼性も?なので正規輸入物は コレクションとしての値打ちは殆どありません。(輸入刻印も入っちゃうし)

オリジナルトカレフには安全装置が無い。
CZには安全装置がある。
 

そうか・・・トカレフは安全装置を後付けしないとアメリカには正規輸入できないわけね。だが・・・この小説の展開から言うと、一旦アメリカに正規輸出した安全装置付きトカレフを主人公が手にするのは変な状況だ。詳しくは書けないが、この小説は、ソ連製オリジナルのトカレフが使用されていると認識すべきストーリー展開なのだ。

ということで、私の最終結論は「やっぱり変!」である!



本日の結論
私はまたしても充分に楽しんだ!「軍事蘊蓄及び遺伝子工学好き」向けの本である!
じっくり読み込んでアメリカを理解しながら読み進むと楽しめるぞ!

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