六弦的弦太考

2002年11月12日 設計の基準値はどこにあるのだろうか?


さらに、このギターに関しての勘違いが続く・・・。

「こればっかりは自力でやらない方が良さそうだ」

早くも昨日の続きである。

前回は「ネック調整は自力でやれ!」との結論を出していたが、それを書きながらふと「私は更に勘違いをしているのではないか?」との疑問が浮かんで来た。ネック調整をする前に、もう一つ確認する事があったのではないのか?そんな疑問である。

某ギターメーカーはマニュアルに「0.09 〜 0.42」の弦を張るようにと指定している事実が有る。さらに弦のメーカーまで指定しているのだ。これにはどんな意味が有るのか?それは「設計段階の基準値」だと考える。「0.09 〜 0.42」の弦を張る前提でギターのすべてが設計されているのだ。そこで問題になるのが「ナット」の存在だ。

ナットは精密に加工されている。ギター職人やリペアマンの腕は「ナットの精度」で計り知れるというくらい微妙な加工を必要としている。そして、その加工には「弦のゲージ」つまり太さが重要なファクターだ。ナットには溝が刻んである。もちろん弦を置く溝である。溝の形は底が丸くなっている。これは弦の太さに合わせたものだ。だが、全く弦と同じ太さでは使い物にならないので、20%程度余裕を持って作られている。

つまり、弦の太さが基準となりナットが整形されているのだ。となれば、弦のゲージがギターメーカーにより指定されているのもうなずける。では指定されている「0.09 〜 0.42」ではなく「0.10 〜 0.46」を使いたい場合、張り替えてしまったらどのような事が起こるのだろうか?

「ナット」の溝の余裕は20%程度有るので「0.10 〜 0.46」でも装着は可能だ。だが、本来有るべき「ナット溝の余裕」は少なくなってしまう。キツキツナットでは弦のすべリが悪くなってしまう可能性があり、チューニング時の安定性が悪くなるのだ。更に太い「0.11 〜 0.48」を張りたいとしたらどうなるのだろうか?某ギターでやってみたところ6弦がナットの溝に入らなかった。そのギターにとってやはり理想的な弦は「0.09 〜 0.42」であるということだね。

逆の場合も考えてみよう。太い弦を設計基準にしておいて、使用時に細い弦を張るとどうなるのか?ネックは逆反りを起こし、ナットの溝はユルユルとなる。こうなると、溝の遊びが多すぎて弦のホールドが悪くなるのだから、ギターとして問題外の展開となる。

今回私が「さらに勘違いしているかも!」と感じたのはその点であった。上記画像のギターはそもそも設計段階での弦ゲージは「0.10 〜 0.46」かそれ以上ではなかったのだろうか?それを私が「0.09 〜 0.42」にして欲しいと指定した為に、ネックの逆反りが発生し、さらには「ナットの調整が変」と感じさせるユルユルナット状況を生んだのではないだろうか?

このギターの「ナット」をもう一度良く観察してみよう。PRSと同じように、溝は深く弦をホールドする形状である。通常ナットはこれ程弦をホールドする形状では無い。トレモロつきのギターの場合はやや深めの溝を彫るが、このギターの場合はトレモロなしだ。ここまで深くする理由が見つからない。他社のギターのナット形状を観察してみると溝の深さは、ほぼ弦の太さの半分程度である。

これほど深くナット溝を設計したということは、弦のゲージもかなり厳密に指定されていると考えるのが自然な成り行きだろう。そこで前回の「ネック調整」の努力は無かった事にして、再度弦を1ランク太い「0.10 〜 0.46」に張り替えて確認すべきであろう!との結論に達したのである!

弦はダダリオの「0.10 〜 0.46」を用意した。6本の弦を張り替える作業は面倒である。だがその面倒さを甘受しなければ六弦世界へは旅立てない。ただ黙々と作業をこなすだけである。ボディーの塗装を弦で傷つけないように気遣いながら作業は進んだ。弦は金属の為、張り替えた後チューニングすると少し伸び音が安定しない。しばらく置き去りにして安定するのを待った。

再びチューニングを行い、アンプに繋ぐ。前回特に気になっていた1弦の解放音を弾いてみた。うおおお〜〜〜〜!!!まっとうな音じゃね〜かよ〜〜〜!!!やはり私の考えた事は当っていたようだ。ゲージを太くして正解である!そもそもこのギターは「IOMMI」モデルなのだ。もともと「ヘビーなギタリスト」モデルなのである。私のような「0.09 〜 0.42」しか使えないヘナチョコギタリストでは無いのだ!「0.09 〜 0.42」を想定した設計であるはずが無かったのだ!

てなことで、ギターの弦のゲージを変える時は「ナット」の溝を精密に切り彫り直す必要があることが明確に判明した。だが、こればっかりは自力でやらない方が良さそうだ。信頼おける「プロショップ」に依頼した方がよろしいなあ!だが・・・私だってこのギターは「プロショップ」で買ったはずなのだが・・・。




本日の結論
ギターのコンディションは良くなったが、
弦が太くなったので、私には再び苦手なギターに戻ってしまった! ううう・・・。

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