六弦的調整考

2002年11月11日 ほんのわずかな違いなのだが!


このギターに関しての勘違いが・・・。

「疑ってみてはどうだろうか?」

勘違いについて書いてみる。

「どろなわ」という言葉がある。これを「泥で縄をなう」=「役に立たない事をする」の意味であると勘違いしている方々がいる。だが本来「どろなわ」は「泥棒を見て縄をなう」の省略形だ。つまり「事態が起こってからあわてて対処を始める」という意味なのだ。日本語にはこのように勘違いして使われている省略モノが多い。

「ぜ〜んぜん大丈夫!」という日本語は常識的に考えれば変である。だが、視点を変えるとそうでも無くなる事を発見した。「ぜ〜んぜん問題ないから大丈夫だよ!」の省略形である場合「ぜ〜んぜん・・・大丈夫!」と、まん中にブレイクを置き「問題ないから」を目でつたえながらの発言であれば、「ぜ〜んぜん・大丈夫!」は日本語として許される気もするなあ(そうか〜?やっぱり変だぞ!)

さて、本日は言葉の問題がメインでは無い。ほんのちょっとした勘違いが、ギターの使い難さを生んでいた事実が有るのだ。それを書いてみよう。世の中にはプロと呼ばれる方々がいる。働いている方々は、それで収入を得ていれば、みなさんその道の「プロ」である。その道の初心者でも「プロ」は「プロ」であると主張する。

私が最後に買ったギターは、オークションで手に入れたものであったが、売り主は「ギターショップ店主」だった。さらに彼は「自分でリペアもやっているから、ニューギターでも完璧に調整してお渡しします」と連絡してくれたのだった。「ギターのプロ」であり「リペアのプロ」である。弦のゲージを指定すればそれに合わせた調整を施し納品すると言うのであった。ほほう!プロの技術がどの程度のモノか楽しみだなあ!と思いつつ到着を待ち受けたのであった。

私が手に入れたのは「新古品ギター」だった。店頭に長期間展示されていたが買い手が現れなかった悲しい存在のギターだった。その為、お客が試奏した際の微細な擦り傷が散見された。それ以外にもいくつか気になる点はあったが、思ったより安かったので、それらは受け入れるとしてさっそくサウンドチェックをしてみた。

私の予測していたイメージとは違うサウンドだった。良く言えば「マイルド」悪く言えば「アタックが弱い」そんな感じの感想であった。そして、プロの調整とメンテナンス技術によって完璧に調整されたと宣言するギターがこれなのだろうか?と大きな疑問が残った。なんというか「この価格でこの程度なのかよ?」と思わせるギターなのである!

そう思わせる最大のポイントは「弾き難さ」だった。なんだか弦はビビルし、ナットの調整が甘いと感じさせたのだ。私もさほどギターを弾くわけでは無いのだが、それにしても「これって弾き難くない?」と思わせるのだ。一度そう思いはじめると愛着はわかない。ケースに仕舞って寝かせてしまう事になる。そのギターはすぐに玄関先のディスプレイ用ケースの中でひっそりと暮す事になった。

1か月程して「本当に弾き難いギターなのだろうか?」と再び取り出してみた。結果は同じだった。やはり弾き難いギターである事に変わりはなかった。ここで、ある疑問が浮かんだ。ギターが届けられた時点で「プロの手で完璧に調整されている」と思い込み、私の弾き方が未熟であると思い込んでいなかっただろうか?ギターの設計自体が良くない。そんな勘違いをしていなかっただろうか?

そう思い立てば、一から出直しだ!厳密なチェックを開始した。
思い込みの勘違い最大のポイントは「ネックの調整」だった。「弦のゲージ」まで指定して調整してもらったのだから、問題ないはずだと思い込んでいたのだ。そこで、チューニングを正解に行い、フレットの高さをスケールを当てつつ厳密にチェックしてみた。うおおお〜〜〜!!!なんじゃこりゃ〜〜〜!!!一見ストレートに見えていたネックは、良く見るとわずかに「逆反り」していたのである!これじゃあビビルはずだなあ!

ネックの状態は論理的には「完璧ストレート」であることが望ましいが、実際にはネックは「ほんのわずかな順反り」をしているのが標準セッティングである。この「ほんのわずか具合」がネック調整の腕であり味である。各メーカーごとに調整の基礎となる数値が存在するようだ。

このギターの「順反り数値」としてどの程度が正しいのか?私はそのデータを持っていなかった。だが、メーカーの主張する数値よりも、問題は「私にとって弾き易いのか?」の方が優先する!あえて「逆反り」させて使っているユーザーもいるくらいだ。「塩味が濃くて背脂チャッチャのラーメン」が好きな人がいる。「淡白な醤油ラーメン」が好きな人もいる。それぞれの好みの「味」があるように、ネックの太さや幅の選択と同じように「ネックの反り」も自分好みに調整しなければならないのだ。

通常ネックの調整はネック内に仕込まれた、トラスロッドを回す事で行う。更に一般的には「トラスロッド」は「順反り」にしか対応していない。弦の張力にネックが負けて順反りするのである。それを元に戻す為にトラスロッドを締めて調整するのだ。つまり常識的には「逆ぞり」はあり得ない反りかたなのでトラスロッドが対応できない!だが、実は両方向に調整出来るスグレものも現れている現状だ。

ではなぜあり得ない「逆反り」が起こってしまうのか?弦のゲージの問題である。太い弦を張ってネック調整をした後、細い弦に張り替えるとネックに与えられた弦のテンションが弱くなり「逆反り」になってしまうのだ。このギターは店頭で太い弦が張ってあったのに、私が細い弦を指定した為起こってしまった現象だろうなあ。だが・・・それを見のがし、ネック調整しなかったとすれば「店主の腕」もかなり怪しい感じがする。

このギターはネック逆反りである。調整的に「やっかい!」なのだ。もしトラスロッドが対応していなければ「太いゲージの弦」を張るしか手はない。私の握力は弱いので、それはやりたく無い。いよいよ六角レンチを持ち出しネック調整を開始した。おおお〜〜〜!!!両方向に調整出来るぞ〜〜〜!!! 助かった〜〜〜!!!

トラスロッドの回転は15度くらいに少しずつ行い、時間を置きながら確認しなければならない。ネックの反り具合が安定するまで待つのだ。今回の作業は微妙である。何度も微調整を繰り返しながらポイントを探った。そして、調整後一晩寝かせた・・・。ふっふっふ・・・翌朝ネックはみごとに理想的「順反り」になっていることが確認できた。弾き易い!実に弾き易い!

私が今回調整したのはほんのわずかにトラスロッドを緩めただけだ。それだけでこんなに使い易くなるとは!判り切っていた調整結果ではあるが、久々に「ネック調整」の重要性を再認識したので、本日のネタにした次第である。ギターを買いっぱなしで使いっぱなしのあなたも、一度購入時の「オリジナルの状態」を疑ってみてはどうだろうか?メーカー出荷状態が正しいセッティングだとは限らないぞ〜〜〜!!!

と、ここまで書いて来て新たな疑問が沸いて来た。さらに私は勘違いしていないのか?ある事実関係を確認し、再びレポートを近日中に記述する事にする!次回のテーマは「ナット」である!




本日の結論
自分のギターのネックは思い切って自分で調整しよう!

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