読了的探偵本

2002年11月07日 減らず口が楽しいなあ!


シリーズ4冊を読んだ!

「400円でこれだけ楽しめれば儲けものだと思うよ!」

この作家の名は「はら・りょう」と読む。困った事に書評を書こうとしたら、私のMACでは「りょう」の文字が出てこない。てなことで取りあえず今回は作家の名前が正式に漢字で表記できないと言う事態に陥った。ううう・・・早くも挫折か?だが、読み終えた以上はなんらかの「たわごと」を書き連ねなければ気が済まないぞ!

作家の「はら・りょう」はフリージャズのピアニストとして活躍していたようだ。その知識もちらりと垣間見える小説なのだ。私が今回読み終えたのは「探偵 沢崎シリーズ」4冊である。まずはタイトルを発売順に御紹介しよう。

「そして夜は蘇る」1988年初版 私立探偵沢崎、初登場
「私が殺した少女」1989年初版 第102回直木賞受賞作
「天使たちの探偵」1990年初版 注目の連作短編集
「さらば長き眠り」1995年初版 5年の沈黙を破る完結


私はこの作家に関して全く知らなかった。ある日BOOK OFFで獲物を捜していたら、100円コーナーで3冊の「探偵 沢崎シリーズ」を発見。その中の「さらば長き眠り」の最後のページを見たらシリーズとしてのリストがあった。しかし、目の前の3冊には2作目の「私が殺した少女」が入っていなかった。しかもそれは直木賞を受賞していると書いてあったのだ。ううむ・・・欲しい・・・欲しいぞ〜!

過去の経験から言うと、このようなシリーズの場合、一旦はまってしまうと一気に読み通したくなるのはみえている。そこでまずは目の前の3冊を買い占めておいて、「私が殺した少女」を見つけ出すまで自宅待機させる事にした。だが、3冊を買い占めておいてつまらなかったら・・・どうする?ふっふっふ・・・心配はいらないぞ!たとえ失敗したところで300円(消費税別)でしかないのだ!週刊誌1冊よりも安いのだ!モンダイナ〜シ!

1週間後、早くも別のBOOK OFFで「私が殺した少女」を発見する事に成功したのだ!これでようやくスタートできる!かくして4冊一気読みに突入したのであった。1冊目の「そして夜は蘇る」の1ページ目を開いて・・・うおおお〜〜〜!!!なんじゃこりゃ〜〜〜!!!文字が小さいぞ〜〜〜!!!2段組でビッチリ詰め込まれた文字は、読書量の期待は盛り上がらせるが、すでに「老眼」の身にはいささか辛いのであった。ううう・・・予期せぬ壁である!

しか〜し!断固として出資した400円(消費税別)は回収しなければならない!意を決して読みはじめるのであった。ほう・・・ほうほう・・・なるほどね!「渡辺探偵事務所」の「沢崎」が主人公なんだね!でワケアリで、ある刑事と暴力団員に付きまとわれていると・・・。ふむふむ・・・「沢崎」は減らず口が得意であると・・・。

気がつけばあっという間に3冊目に突入していた。けっこういけるのである!面白い!いつも読んでいるミステリーだと「刑事」が主人公となり事件を解決して行くパターンや、名探偵が鮮やかに事件を解明していくケースが多い。このシリーズでは「弱い立場の探偵」として描かれている。読者は「探偵」と一緒になって事件の謎に迫っていく事になる。助手もいない。たった一人の探偵行動である。

このシリーズの魅力は、短編も含めた3冊のすべてが4冊目に影響している事だ。最初から読み通していかないとストーリーの厚みが分からない。4冊全部で一つの話と考えれば良いかも知れない。ちょっと古い本だから敬遠される方も多いかも知れないが、400円でこれだけ楽しめれば儲けものだと思うよ!

ストーリーに疾走感があるわけではない。じんわりとしたテンポである。タバコの煙りと減らず口の「ハードボイルド」系小説である。謎解きを楽しむのも良いが、私は全シリーズを通して警察や暴力団に対し「沢崎」が口走る「へらずぐち」に魅力を感じたのだ。実社会であのような事を言ったら、喧嘩になるかも知れないなあ。

「昨日?そんな昔の事は忘れたなあ。明日?そんな未来の事はわからない!」なんてな台詞がアメリカの探偵小説であったが、そんな感じの台詞がふんだんに出てくるシリーズ小説だ。このシリーズには男の大人の「会話の魅力」と「男の悲しさ」が溢れている。4冊目の最後の最後に、ある事実が出てきて全体を決着させている。17年かけてその決着まで持って行ったのは作者が「とてつもなく気が長い」のか、それとも単に「成りゆき」の結果だったのか? 気になるところである!




本日の結論
読書の秋はこれくらいたっぷり読んでみようよ!

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