読了的魔術人

2002年10月23日 かなり面白く読んだぞ!



「この辺りの心理描写もなかなか面白い」

このところ手品がマイブームになってしまい、マジック用品を色々買い漁りバタバタしているうちに、なかなか本を御紹介できなくなっていた。面白い探偵モノやミステリーを読んではいたのだが、なんだかそれを発表する気力が萎えていたのだ。すまん!最近すこし更新が辛くなっている状況なのだ。更年期症状か?そんな矢先の読了である!

今回は、小学館刊 松岡圭祐緒「マジシャン」¥1,600-がターゲット。松岡圭祐は「催眠」や「千里眼シリーズ」でお馴染みの作家である。催眠術を得意とし、一時期よくテレビで見かけたが、いつの間にか作家となり、得意分野の知識を総動員してベストセラー作家となってしまった。私はこの作家の全作品を読破している。

最近の松岡圭祐の本は世相の取込みが実に早い。数年後に古本で読むと辛いかもしれない程、今の流行りの事件やテレビ番組、タレントなどの実名が次々に登場してくる。今回の本のテーマはタイトルの通り「マジシャン」である。デビッド・カッパーフィールドやマリック等の名前も出てくる。今回の本は今まで読んだ事のない新しいタイプの「奇術小説」だ。松岡圭祐らしいと言える作品だな!

さていつものように腰巻きの惹句を書き出してみようか〜〜〜!!!

この作家にしかかけなかった「催眠」から5年----。
再びこの作家にしかかけない魔球のような”奇術”小説が誕生した!


二転三転四転五転
騙す、誤魔化す、
まやかす、眩ます、
嵌める、惑わす、誑かす!


本書に描写されたトリックは、
現職の刑事の方々にお見通しいただき、
実際に詐欺として被害者を騙しうるものであることを
保証してもらっている。

前人未到の奇術詐欺ノヴェル

目の前でカネが倍になる----。参考人達が口を揃えてこう証言する奇妙な詐欺事件に、警視庁捜査二課の警部補・舛城徹は困惑していた。手品めいたトリックの匂いを感じた舛城の捜査に引っ掛かる、プロ用マジックショップ。その社長を追った舛城の前に、マジシャンを志す一人の少女が現れる。その少女が語ったカネが倍に増えるトリックとは?

警視庁に通報される金融関連詐欺事件の大半は立件できないという。中には「奇術詐欺」とも呼べる、凝ったトリックを使った事件も少なくない。余人の想像を絶するその手口とは?そしてその発明者の実像は?

「人を騙すこと」を業とする「奇術師」対「詐欺師」の目くるめく頭脳戦!

ううむ・・・警察もこの本の内容が詐欺事件として犯行可能であると認めた事を堂々と明示している。恐るべき作家の自信である!犯罪に使われる詐欺の手口がマジックで使われるトリックを応用したものだとしたら・・・手品と詐欺の境目はどこなのだ?この辺りの心理描写もなかなか面白い。

目の前で現金を倍に増やしてくれる人物が時折現れるという奇妙な事件が起こった。事件ではあるが今のところ被害者はいない。警察は事情聴取を行うが、誰もが「目の前で手も触れずに現金の束が2倍に増えた!」と証言する。正真正銘の真札である。そしてその現金は増やしてもらったそれぞれの証言者達が懐に入れているのだ。本当だとすれば、誰がなんのために行っているのだ?100万円の束が目の前で200万円に増える・・・200万円は400万円に増える・・・そんなバカな・・・。

担当刑事は詐欺事件の匂いを嗅ぎ付け捜査に乗り出す。そして、同時進行でXEコンピュータウイルスが日本を襲い始めた。詐欺事件に協力する若きマジシャン。マジックの知識を総動員して戦うマジシャンとはナニモノか?この小説は、マジックのウンチク満載である。現在マジックにはまっている私が読むと、身に付けたばかりの知識と相まってとてつも無く面白いのだ!

えっ?いいのかよ!と思える程マジックのネタばらしも文中で行われる。詐欺事件を解決するにはネタバラシが必要になってしまうのだった。それに躊躇するマジシャン。だが、容赦なく要求されるネタバラシ。「犯罪捜査協力」と「マジシャンとしての暗黙のルール」に板挟みとなり苦悩する若きマジシャンなのである! そして時間との戦いが始まった!怒濤のラストへ突入していく!真犯人はどこに居るのだ?

マジック好きはもちろん、マジックにあまり興味が無くても充分に楽しめるぞ!この作家の小説は、いつもちょっと粗っぽい部分があるが、今回も見事にそれが出ている。だが〜!そこはそれフィクションの世界なのだ!笑って許してやってくれ!二転三転四転五転する展開は、一気に読み通す面白さだぞい!単純な謎解きに終わらせていないのが、テレビにも多く出演していた経験が生きている松岡圭祐のエンタテイメント性だろう!勢いで読め〜〜〜!!!

小学館刊 松岡圭祐緒「マジシャン」は10月10日に初版が出たばかりなので、まだBOOK OFFには置いて無いだろうなあ。早いところでは半額コーナーにあるかもしれないが・・・。ちなみに私は「古本屋わいわい」で1,180円購入した。充分にその価値はある本だと思うがね!BOOK OFFで100円になるまで待つのも良いかもしれないが、その頃にはすっかり新鮮味が無くなりそうな「マジック・ミステリー」である。読んでみると小説におけるネタの新鮮味の意味がよ〜く分かるのだ!




本日の結論
そうか!あの手品はああやれば出来るんだ〜〜〜!!!って叫ぶ事になる本でもある!

------------------------------

「独断倉庫」に関しての御意見は「啓示倉庫」へ書き込んで下さいな。



GO TO HOME PAGE