魔術的選択談

2002年10月03日 消え、飛び、そして驚愕する!


ボールペンを引っこ抜いても万札に穴は開かない!
ミスター・Mも最近CMでやっていたね〜!

「それがプロたる実力である!」

マジシャンは華麗なる技をもってお客を魅了する。お客はその不思議な世界に驚愕し魅了される。一見物理的不可能を可能にするマジックの世界はどの世代でも魅力的に感じられる事だろう。このWEBを解説した初期の頃「手品倉庫」を設置していたが、これはホンのわずかの時期しか存在していなかった。理由は「プロマジシャンの商売の邪魔」をする可能性があったからだ。

私は子供の頃から様々なマジックを観続けて来た。テレビが普及し盛んに放映されるようになり、初代引田天功が私の憧れの人となった。その後、テレビはダグ・ヘニングス、デビッド・カッパーフィールドのような世界的スターマジシャンを生んだ。もちろんプリンセス・テンコーも忘れてはならない。そしてここ10年程日本のテレビで頑張っているのがミスター・Mだ。

ミスター・Mがテレビに登場し始めた当時「100円玉を突き抜けるタバコ」を良く観た。客はその現象の不思議さに大騒ぎをしていた。その他にもさまざまな「不思議現象」を引き起こし、TV番組では「超魔術」と呼び始めた。ミスター・Mは「超能力者」のような言動を始めた。日本中がその言動に惑わされ、魅了された。

その頃私は「バカこくでねえ!」とその現象に反発していた。確かにTVで見せられた「超魔術」は素晴らしい現象だったが、それはあくまでも「トリック」を駆使した「手品」であり「超常現象」ではなかったのだ。見せられたのは手品の技術の素晴らしさでありマジシャンとして評価すべきであった。それが演じる方と観る方ともに勘違いか生まれ、TV局の戦略とアオリで「伝説の超能力者」として動き始めたのだった。

私が当時「バカこくでねえ!」と確信したのは「物理的不可能」なことがマジシャンとしてもあるからだ。つまりマジックで「100円玉を突き抜けるタバコ」が成立するには、いくつかの条件がある。まず、タバコが貫通しているのをコインの前後から見せ、さらにタバコを吸ってみせる為には「確実に100円玉に穴が空いている」必要があるからだ。

さらに、コインに穴が空いている前提で考えると、事前にはタバコを通す前に何かが穴を埋めているはずだ。明らかに全体像は100円玉にしか見えないのだが・・・実は精巧に加工された本物の100円玉の中心部分で穴を埋めてあるのだ。つまり、2個の100円玉を加工して外側部分とまん中部分が作られ組み合わされているのだ。だが・・・このような貨幣加工を日本で行うと「罪」になる。りっぱな犯罪者となるのだ。

もともとは、アメリカで考案された「手品」である。日本円にして数千円で販売されているコインである。アメリカでは当然25セント硬貨あたりが加工されている。しかし、日本で演技するには日本の硬貨の方がインパクトが強い。そこで100円玉の加工となったわけだ。たぶんアメリカの業者に加工を頼んでいるのだろう。アメリカで加工する分には日本の法律が及ばず、罪に問われないからだ。

現在も多くのマジックを披露しているミスター・Mだが、さすがに「超能力者臭」は消し去っている。かなり批判されたからだろう。テレビで披露される多くのマジックには「原案者」が存在する。そして、その道具や理屈を説明した「手順書」が販売されている。

マンガの原作者と漫画家の関係とでも言えば良いのだろうか。トリックを考えるものとステージで演じるものとにマジックの世界も別れているのだ。販売されているそれらのネタのリストを見ると、ミスター・Mの多くのマジックは「素人でも購入可能」なネタだらけである。クローズアップマジックが多く、大掛かりな仕掛けにはならないので安いものでは2000円程度から数万円程度のネタまで様々である。

現在はWEBの通信販売でほとんどのネタが手に入る。財力がありそれらのネタを手に入れる事ができれば、あなたもその日から「マジシャン」になれるのだ。だが・・・一つだけ気をつけたい事がある。それは話術だ。プロがプロである理由に指先の訓練もあるが、実は「絶妙な話術」が要求されているのだ。ミスター・Mも言葉の誘導が巧みなのだ!それがプロたる実力である!

「ミス・ディレクション」と言う言葉がある。マジックを観ている人々に「錯覚」を起こさせる為に行われる。それは動作で行われる事も多いが「絶妙な言葉」である事も多い。とても簡単で有名な言葉に以下のようなものがある。これは某マジシャンがその昔よくテレビでやっていたものだ。まず、食パンを一斤取り出す。それを二つに切り、テーブルの上で左右に少し離して置く。

「右を選ばれますか?左を選ばれますか?」

ステージ上のマジシャンから指名されそう問いかけられたら、あなたはどう答える?「右!」もしくは「左!」と答えるに違いない。それ以外に答えようがない質問だ。50%の確率で当るはずである。そこでまず「左」と客が答えたとしよう。マジシャンはさらにこう続けて言うのである。

「左でよろしいですか?
  本当に左でよろしいですか?
  今ならまだ変更しても構いませんよ!」


ここで指名された客は「私が選んだのだ!」と使命に燃えている!更に熟慮し「よし!あんなにマジシャンが換えたがっているのだから左のままにしてやれ!」と決心する。「左です!」と再度声を発するお客なのである!

マジシャンが「お客さまから観て左のパンですね!」と言いながら、食パンを取り上げナイフで切り裂くと中から時計が現れる。そして右側のパンを切り裂くと中に何も入っていない。大拍手である!お見事である!

だが・・・もしその時「右」と客が答えたらマジシャンはどうするのか?時計は出現させられるのか?それを可能にしているのが「絶妙な言葉」なのだ。「右ですか?左ですか?」はその基点を明確にしていないのだが、無意識に「自分から観て」と感じている言葉なのだ。

ここが言葉による「ミス・ディレクション」なのである。客の「右」を聞いたマジシャンは、迷わずマジシャンにとっての右側になるパンを取り上げ「右のパンですね!」と言いながら、客に確認もせず強引にパンを一気に切ってしまうのである。つまり客が「右」と言おうが「左」と言おうが最初に切るのは、マジシャンから観て「右」のパンだけなのだ。必ず当るのである!

このようにマジックは「簡単だが効果的な原理」を考え出せば言葉だけでも不思議な世界を造り出す事ができる。特に客が自分で選択したと思うように仕向ける言葉が効果的だ。これに引っ掛かると、あなたはあっさりマジシャンの術中にはまる事になる。

さて、これを読んで上記の「パンのマジック」を「オレもやってみよう!」と思われても、絶対数人の前でやってはならない! お客は大人数で離れたところにいる必要があるのだ。理由は簡単!目の前の客が「時計の入っていない方」を指差しながら「こっち!」と言われてしまったらそれでアウトだからだ!

てなことで、これからは独断倉庫に時々マジック話が登場する可能性がある。だが、ネタばらしにはしないつもりだ。と言うわけで、一番上の画像の「お札を突き通るペン・穴が開かない万札」のネタの問い合わせはしないように!答えるつもりはないのだよ!



本日の結論
大枚を叩いて、マジックのネタを通販で大量に仕入れてみた!
見た目は派手でも、原理は簡単で大笑いのばっかりだ〜〜〜!!!

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