読了的乱歩賞

2002年08月12日 久々に新刊本の読了だ!



「原作者がウハウハ儲かる事は無い」

フライ・フィッシングを御存知だろうか?釣り竿をムチのようにしならせながら、ラインをポイントへ飛ばし、毛針で釣り上げるフィッシングの事だ。毛針を羽虫と勘違いして魚は飛びついてくる。この釣りは、とてつもなくマニアックである。道具もさる事ながら、釣れない事が当たり前のような自虐的釣りでもある。

私は仕事の行き掛りで8年程前に、岐阜県の山奥でフライ・フィッシングの練習をした事がある。川で魚を相手の練習では無い。広いテニスコートで正しい竿の振り方をベテランから学ぶのであった。真夏ゆえに汗だらだらになりながらの練習であった。フライ・フィッシング竿の正しい振り方は、当初なかなかその理屈が理解できない。アクションを会得するにはいささか時間がかかるのである。

下の画像のように、竿を立てたまま竿のしなりとラインの重さを利用して振り幅を広くし、ポイントまで届くラインの長さまで振れるようになったら、いよいよポイントまで毛針を飛ばすのである。この「竿を立てたまま」の感覚がなかなか理解しにくいのだ。ついつい大きく振ろうとして竿を前後に寝かせてしまうと失敗する。



私は数時間程で理解した。だが・・・理解したからと言ってすぐに実践で活躍できるわけでは無い。ゴルフの理論がある程度理解できたとて、すぐにプロと戦えるわけが無いのと同じコトだ。それに、私は魚と言えども殺生は嫌いだ。理屈だけ覚えて、ついに最後まで一度もフライ・フィッシング本番を経験する事は無かった。前置きはここまで。

最近の読書はもっぱらBOOK OFFの100円コーナーに頼っていたのだが、久々に新刊本の読了報告である。昼間に会社近所の本屋で見つけて、すぐに読みたいと思ったので、夕方になり帰り道の古本屋を覗いてみたら、すでに店頭に並んでいた。新刊本と言ってもやはり古本屋で手に入れたのが私らしい選択である。本年度の第48回江戸川乱歩賞受賞作 三浦明博著「滅びのモノクローム」講談社刊がそれだ。

何故BOOK OFFに出て来るまで待たず「すぐに読みたい!」と思ったのか?それは「腰巻」の惹句にあった。

満場一致で選出!
一個のリールが
歴史の闇に光をあてる。


CM制作者が手作業で再生した古いフィルム。
そこには日本がひた隠しにしてきた過去が映っていた。
本年度 江戸川乱歩賞受賞作


この本はどうもCM業界がテーマになっているようなのだ。古いフイルムが持つ秘密とは?
購入後一気に読み終えたが、巻末の参考文献リストを見ると、この本はかなりこれらの資料本を元に書かれたのが分かる。過去の出来事や、歴史的事実の隙間にフィクションを加え、現代の知識を加味構成して行くとこのような話になるとの典型的な例だね。

そして、謎解きの一部となっているのが「フライ・フィッシング」である。「CM業界の知識、フィルムの知識、フライ・フィッシングの基礎知識、MacintoshG4での画像処理基礎知識」等があると更に楽しめる本だ。私は幸にしてそのすべてを持っていた。ゆえに私には理解しやすい話となっているのだ。

三浦明博著「滅びのモノクローム」は謎解きモノのミステリーとはちょっと違う。不可能殺人があり、そのトリックを暴き、見事な事件解決なんてな話では無い。日本がかつて犯した罪が徐々に明らかになって行くその過程を楽しむ本である。後味は決して「すっきり爽やか!」ではない。かなり重くからみつく。

さて、問題は「映像化」だ。毎年のように江戸川乱歩賞は「テレビドラマ」や「劇映画」の原作として使われている。江戸川乱歩賞受賞作の映像化権はフジテレビが持っている。受賞の際、賞金1000万円にその権利分が含まれているだ。その為、映画化されたからと言って、原作者がウハウハ儲かる事は無い。ただし、その映像化権も3年間の期限付きだ。それ以降なら、映像化権は再び作家に戻る。だが・・・その頃にはもう古い作品になっているので、映像化する会社は現れないだろうなあ・・・。

「滅びのモノクローム」は映像化した場合どうなのだろうか?私としては「面白いテーマだが、アル部分が映像にすると丸バレになる」のでかなり苦しい戦いになるのでは?と感じる。文章だからこそ成立している部分があるのだ。映像化チームの健闘を祈るぞ〜!

さあ!あなたは 第48回江戸川乱歩賞受賞作 三浦明博著「滅びのモノクローム」を楽しむ事ができるか〜?



本日の結論
この本の275ページに「片品村」が出てくるぞ!

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