妄想的蝉寝姿

2002年08月08日 妄想が妄想を呼びシュールな世界へ〜〜〜!!!


会社の前で見つけた蝉。まだ足を動かしていた。

「もう!あんたが面倒見るッて言ったからOKしたのに!」

真昼。ジリジリと照りつける太陽に気温は36度を示していた。
東京の都心部にも蝉はいる。どこからともなく「暑さを増幅」するような蝉時雨が聴こえて来る。この暑さで蝉は一気に地中から地上へその生活の場を変えて来たのだろう。6年の地中生活と、わずか1週間の地上生活。毎年、この時期になると蝉の一生の空しさが哀れを誘うのである。

もし、人と蝉の立場が逆転していたらどうなるのだろうか?しばし、空想の世界に遊んでみよう!生物として人間がどのように地中で発生するかは省略するとして、とにかく人の生命が地中に発生するのである。地中でなんらかの養分を採りながら、赤ん坊が6年間眠り続けるのは可能なのだろうか?取りあえずこれまた可能だったとしよう。

前提条件として、世界は「蝉」が人に代わって牛耳っているのである。とりあえず、現在と同じ世界を「蝉」が作り上げたと想っていただきたい!いや!想わなければこれから先が成立しないのである!だから「想え!」なのだ。

都心部の公園のアチラコチラにこんもりと盛り上がった地面があり、そこから夏の暑い日に突然、人間の赤ん坊がモコモコと立ち上がる!ゾンビみたいだなあ・・・。そして、近場の木にもたれ掛かりながら身体を震わせ、1時間程で成人へと成長するのである!そのため服を着るという概念も持っていない。真夏には街中でヌーディスト・クラブ状態に突入するのである!

生物である以上、種の保存は大きなテーマであり、最大目的である!だが、時間をかけて恋愛している暇は無い。人に与えられたのは1週間だけのわずかな命なのだ!合コンなんてな発想も無い!言葉を覚える暇も無い。本能で動くのだ! 人間は地上に出て初日から、いきなり生殖活動を始めるのである!もう、手当りしだい街中で生殖活動である! あちらの木陰、こちらのビルの隙間で生殖活動は繰り広げられるのである。しかも真夏のクソ暑い時期に限って展開されるのだ!うおおお〜〜〜!!!暑苦しいぞ〜〜〜!!!

しかし、アスファルトは暑く焼けている。人が裸足で歩くにはいささか辛い。いくら本能で動くとは言え、この気温では体力は消耗し過ぎるし、活動が制限されるだろう。となれば、人間は夜行性とならざるを得ない!さらに、活動するとなればエネルギーが必要である。たった1週間の人生とは言え、何もカロリー摂取しなければ活動できないだろうなあ。

さて、人は何を食うのか?他の生物を捕食するには、人間の運動能力は低すぎる。都会に人が捕食出来る程のノロイ生物は存在するのか?夏場に大量発生した人間の腹を満たすほどの生物は?ううむ・・・思い付かないなあ・・・。となると人間は菜食主義者として生きるのか?本能なので「主義者」ではないなあ。手当りしだいに、その辺りの草や木の葉を食べるのか?これまたバッタの大量発生のようで、瞬く間に都心部から緑が失われて行くのか?

食せば、当然の結果として排泄作業がうまれる。しかし、人間にトイレの概念は無い。そこいらで適当に済ますのである。人間はこの時期になると「蝉」から「今年もまた人間の大量発生で臭いわね〜!」とカメムシみたいな言われ方をされてしまうのである!だが、この季節の排泄物は一時的に「蝉」に迷惑をかけるのだが、たいていは台風がやって来て洗い流してくれるのだ。被害が長期に及ぶ事は余り無い。 人間として地上に出て1週間しか生きられないので、便秘で苦しむ事は無い。最長便秘期間は決して1週間以上にならないのだ。

人間の慌ただしい生殖活動のみの人生はやがて1週間目を迎える。そろそろ寿命である。街のあちらこちらに老いた人間がバタバタと倒れ始める。同じ日に地上に出た人間は、ほぼ同じ日に倒れる。だが、排泄物と違って、人間そのものは台風で流される程小さく軽くは無い。自然に分解されるまで待つには腐敗が進み過ぎ「蝉」の生活環境が脅かされる。そこで「蝉」は夏になると「人間回収車」を用意するのである。「花火」や「浴衣」と並んで夏の風物詩とも言われているのだ。

「人間回収車」は時給が高く、夏のアルバイトとして学生に絶大な人気がある。短期間に大量の「蝉手」が必要となる。7月頭に集中する御中元の配達のアルバイトから続きで「人間回収車」で働く「蝉」も多い。もちろん、学生アルバイトでは無く、夏場だけ「人間回収車」専門にプロフェッショナルとして働く「蝉」たちもいる。彼等は「蝉プロ」と呼ばれている。

たまに、地上に出て来たばかりの「人間」を捕まえて自宅に持ち帰る「蝉の子供」もいる。夏休みの宿題で観察するのだろう。だが、それは「親蝉」にとてつも無く嫌われている宿題だ。実は親蝉にとって、人間の排泄物と1週間後の後始末が大変なのだ。重いし運び出すのも苦労する。粗大ゴミの日まで保管しなければならないし「もう!あんたが面倒見るッて言ったからOKしたのに!」と母蝉の叫び声を背に「子蝉」は友達と遊びに出かけるのである。そんな母蝉の髪型はもちろん「蝉ロング」と聞いた。

そして「子蝉」達も大きくなり、やがて「代ゼミ」に通うことになるのだね。




本日の結論
会社前の路上で仰向けに死にかかっている「蝉」を見た。この状態を「セミ・ファイナル」と人は呼ぶ。

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