念写的超能力

2002年05月28日 その日、私は当惑してしまった!



「そこに私自身が何もトリックを画策する必要はない」

先日「ブリトニーのチケットの謎」をテーマにして独断倉庫に書いた。仮称を「ブリトニー」にしたのには全く意味はない。ただその瞬間に「ブリトニー」と頭に浮かんだだけだ。そして、そのチケットが挟まれていた本を読み終えた。ふっふっふ・・・。いったいどんな本だと思う?

翻訳ものである。原題は「ELLA」とある。邦題は「孵化する少女 戦慄のサイコ・ホラー エラ」となっていた。2000年1月 徳間書店刊だ。さて、ここで何故こんな本を選んだかと言えば、BOOK OFFの100円コーナーで見つけたからだ。460ページ程の結構厚めの本なのだ。お得感溢れる厚みなのである!

さらに私が興味を示したのにはワケがあった。その本の筆者である。なんと「ユリ・ゲラー」なのだ!「ユリ・ゲラー」は1977年日本テレビの番組に初登場し、スプーンを曲げ、壊れた時計を動かし、念写を行い、一大「超能力ブーム」を日本中に巻き起こした。国内でも超能力少年が何人も現れたのは御存知の通りである。その後、いくつもの検証番組で「あれは巧妙なマジックである!」と同じ現象を再現してみせるマジシャンが増え、しまいには某大学の教授が辞表まで胸に忍ばせ「超能力はトリックである!もし本物であったら物理学者を辞める!」と宣言してしまった。

私自身は、宗教的、霊的、超能力的見せ物にはかなり懐疑的だが、ユリ・ゲラーが初めて書いた本であるという宣伝文句に惹かれ買ったのだ「アイツがいったい何を書いたのだ?」その興味だけである。

ユリ・ゲラー著「孵化する少女 戦慄のサイコ・ホラー エラ」は主人公エラ(14才)が超能力に目覚め、それを取り巻く人々の葛藤、とマスコミの翻弄される日々、さらに救世主として昇華して行く過程を描いたフィクションである。エラを利用して稼ごうとする人々の動きが笑える。マスコミの対応もいかにもありそうで大いに笑える。

この本を半分以上読み進むと、キリスト教的バックグラウンドを持った小説である事が匂いはじめる。3/4も読むとすでにメシアの世界に突入する。超能力=宗教の図式が色濃くなってくる。翻訳モノとしては非常に読みやすい本だ。ストーリー展開も理解しやすく「ユリ・ゲラー」の執筆者としての技術力を認識した次第である。

さて、先程超能力的世界に懐疑的であると書いたばかりだが、私の人生で一度だけ信じざるを得ない現象に出くわした事がある。1977年に日本で初めてユリ・ゲラーがテレビに登場したその日の出来事であった!私はその日、夕方から某CMの打ち合わせで会社の会議室に入っていた。

やがてスタッフが揃った時、その1人が「打ち合わせの前にユリ・ゲラーのテレビを観ようよ!」と言い始めた。すでに超能力者ユリ・ゲラーの名前だけは先行情報で流れていたのだ。CM業界人は物見高いのである!番組が始まってすぐに念写実験の為に「ポラロイドカメラ」を準備するように言われた。私はすぐに、いくつかあった新しいフィルムパックの中から、一本を抜き出しカメラに装填し、カメラ全体を黒いビニール袋に入れた。この袋は映画用のフィルムが入れてある業務用のモノなので、まったく光を通す事はなかった。これで何かが写るならそれは奇跡的出来事である。物理的に証明できなくなる。

袋の上からポラロイドカメラのシャッターの位置を確認し、レンズのある方を自分の額に向け準備万端である。たとえレンズ前の袋が破れていたとしても、そこには私の額があるのだ。しかも、額に直接くっつけているので、ほとんど光がもれる可能性はなかった。これでも写るか?写せるもんなら写してみやがれ!さらに新品の封を私が自ら切ったばかりのフィルムなのだ。すでに感光している可能性はまずなかった。

やがて「ユリ・ゲラー」はテレビの中から視聴者に語りかけはじめた。「私と一緒に写れと念じながらカメラを自分の頭に向けてシャッターを切りなさい!それでは、1、2、3、写れ〜!」その瞬間、私も「写れ!」と叫びながらシャッターを切った。スタッフも一斉に叫ぶのであった。今から思えば大人気ない大笑いの光景である。

ポラロイドカメラを袋から出し、フィルムを引き抜いた。当時のポラロイドはいったんフィルムを引き抜いて、薬品の袋をローラーで破き、現像を開始させるものであった。1分後に薬品面のシールを剥がすと写真が出来上がる仕掛けだった。そして、1分後静かにシールを剥がした・・・。うおおお〜〜〜!!!なんぢゃこりゃ〜〜〜!!!そこには何だか分からないが明らかに映像が写っていたのである!全身鳥肌が立ってしまった瞬間であった!

では何が写っていたのか?しばらくは大事にその写真を保管していたが、引っ越しの際に紛失してしまった。今となっては記憶に頼るしかないが、下の画像を観ていただこう。こんな感じで写っていたのである。



抽象的な鮮やかな色の帯。それが何であるのか?スタッフの誰にも分からなかった。もし、光がもれたり、あらかじめ感光したのだったら、こんな帯状にはならないだろう。もっといい加減なグラデーションが存在するはずだ。黄色、オレンジ、赤、クッキリ別れたこの3色の帯は何を意味するのだろうか?いくら考えても思い付くものはなかった。そこに残った事実は「なんらかが写った」と言う事だけだった・・・。打ち合わせ後、謎を抱えたまま深夜帰宅の途についた私である。

だが・・・驚愕の事実はこの後すぐ!

半年前に結婚したばかりの私は、当時「亀有」のマンションを借りて住んでいた。3DK電話付きという変則的条件の優良物件である。引っ越して間もない頃だった。ポラロイドに謎が写し出されたその夜、帰り着いた私はすぐにベッドルームへ向かった。それは四畳半の小さな部屋。入り口のドアを開き、一歩踏み込んだ時、全身が一瞬にして泡立ったのである! そこには、あのポラロイド写真と全く同じ色彩が存在したのだ〜〜〜!!!うおおお〜〜〜!!!!

私がその時見つめていたのは床面に広がる絨毯であった。そこには私が独身時代に五反田のTOCで購入した、派手な色の安物の四畳半用絨毯が敷き詰められていたのだ。絨毯は、置かれたセミダブルのベッドと本棚で半分が見えなくなっていた。そして、ベッドルームの入り口から見える床の絨毯の色が、まさにあのポラロイド写真と同じだったのだ!呆然と佇むしかない私であった。

これを、様々な条件をくぐり抜けた結果発生した単なる偶然と判断するのか?だが、明らかに私がポラロイドカメラとフイルムを準備し、シャッターを押し、フィルムを引き出したのである!そこに私自身が何もトリックを画策する必要はない。他人に仕掛けられる時間も全く無かった。あの「念写事件」は、今も私の中の謎として残り続けている。



本日の結論
誰か、論理的な解明をしてくれ〜!

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