読了的赤色本

2002年04月24日 途中までは面白くなるのかと心配したが・・・!


今野 敏著 「レッド」平成10年刊


「この知識を持っていると、命拾い出来るケースもある」

久々に読了報告である。このところかなりの本を読みあさって来たが、なかなか発表するに至らなかった。例えば高村薫著「マークスの山」は直木賞受賞で大ベストセラーになった本だった。ドラマにもなっていた。多くの人々が読んでいると、どうも手を出しにくい雰囲気が漂う。それでもそのうち読んでみようと思いつつ放っておいたのだが・・・。

気が付くと「マークスの山」はBOOK OFFで頻繁に見かけるようになっていた。そりゃそうだよな!ベストセラーだもんな!世の中に大量に出回っているんだから、BOOK OFFにも大量に流れ込んでいる理屈になる。で、今となっては「マークスの山」も100円販売である!

先週読んでみた。刑事の群像として男らしい構成が面白かったのだが、犯人の動機がなんだか頼り無く、冒頭のシーンも後から考えればわざとらしい。ここまで長くする必要があったのか?そんな感じがした。「先を急いで読まなければ!」との感覚が薄い本だった。てなことで、御紹介しなかったのだ。

予備知識無く乱買乱読していると、外れも多い。外れ60%、当り30%、大当たり10%てな比率だろうか。しかし、その10%の大当たりも「私にとっての大当たり」でしかない。あなたが読んで面白いと思うかどうかは保証できないのだ。そんな昨今、手に入れた本の中に今野敏著「レッド」があった。これまたなんの予備知識も無く買った。

「レッド」は中当りと判定した。私が最近読んだ本の中では比較的薄めである。315ページ1段組み。パラパラとめくってみれば、会話文比率がかなり高い事に気付く。情景描写は高村薫のネッチリしたトンコツ背脂スープに比べ、今野敏はアッサリ昆布かつお醤油スープってな感じがする。その分だけキレとスピード感があるような気がする。だが、あまりコクはない。

「マークスの山」は男臭い世界をキッチリ描いているだけに、発表当初、男が女性名で書いた本ではないか?との噂もあったようだが、私にはトンコツ背脂スープ系の描写が女性の描写感であると覚えてしまった。読了後、どうも人に勧める気が起きなかったなあ。

これ以上「マークスの山」を「レッド」と比較しても始まらないので、話を先へ進めよう。

「レッド」の舞台は1990年代終りである。旧ソ連が崩壊し、その残滓が漂う世界情勢の中、某環境調査団体へ出向させられた刑事と自衛隊員のはぐれ者コンビが、山形県の小峰村へ出張を命じられた。自然環境の調査である。やる気のない出張命令内容。食指が動かない出張目的。だがそこには「ある大いなる秘密」が隠されていた・・・。

村長、助役、警察、自衛隊、新聞記者、CIAエージェント、グリーン・ベレー、ネービーシールズ、大物政治家、そしてクリントン大統領。登場人物はバラエティーに富んでいる。小説はもちろんフィクションである。てなことで「何でもあり!」の状態でつぎつぎに陰謀が明らかになって行くのだ。

先ほども書いたが、かなりの部分を会話が占めている小説だ。中盤までは田舎の村でうろうろする話なので、この先面白くなるのか?とちょいとイラついたが、後半アメリカとの絡みが始まると様相が変化し始める。最後は・・・これ以上はネタばらしになるので書かない!軽いフットワークで気軽に2時間楽しめる本だ。

常にコッテリ重厚本を好む方には物足りないかも知れない。たらふく飲んだ後に出される「お茶漬け」感覚で読まれると納得出来るだろう。逆に、重厚長大になりそうなテーマをここまでサラリと短く仕上げた手腕に拍手しても良いのではないだろうか?宮部みゆきが書いたとしたら、この4倍の長さにはしただろうなあ。

2時間もののミステリードラマとしてTV向きの脚本になりそうなストーリー展開だ。軍事マニア向けの小説とは言い切れないし、かといって典型的な刑事物でも、政治ものでも無い。政治、軍事、密約、国家、地方自治、報道、等がバランスよく配合された、お手軽ダイエット飲料のような、今野 敏著 「レッド」平成10年刊である。

最近、テロ対策で日本の警察にも導入されたサブマシンガン「H&K MP5」も登場する。特殊部隊定番のサブマシンガンである。今回はサイレンサーつきなので「H&K MP5SD3」と若干名称が変化するのだが。こいつを手に入れ撃ちまくる主人公達である。しかしサイレンサー付きで、あまり音が聞こえないので「プスプスプス」と撃ちまくる事になるのだ。

「H&K MP5」とセットになる拳銃が「ベレッタ92F」だ。「レッド」でも見事にセットで登場する。両方ともまったく同じ9mm拳銃弾を使用する。弾丸の使い回しができるので便利なのだ。この知識を持っていると、命拾い出来るケースもある(ホントかよ〜!)ブルース・ウイリスはそれで寿命が延びたのだ!

あのヒット映画「ダイハード」のラストで、マクレーン刑事が「H&K MP5」の弾を、背中に張り付けた「ベレッタ92F」に詰め替えて使ったのは有名なシーンである。まあ、こんな知識をひけらかしてもしょうがないか・・・。でも・・・ひょっとすると日本でもこれから先は役に立つかも知れないぞ!(そんなこたあないって!)

このような小説だと、戦闘シーン以外にも口封じの為にバッタバタと死者が大勢出るのがパターンだ。しかし・・・! 何人ヤラレルのかカウントしながら読んでくれたまえ〜!(いったい何人なんだよ〜〜〜!!!)読後やや爽やか!



本日の結論
電車の中で読みながら、最後のシーンでちょっと涙ぐんだ私である!

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