「こりゃ〜モウケモンてなとこだね！ 」

「●●の遺伝子」とタイトルがつけられた本は何冊か読んだ記憶がある。「イエスの遺伝子」を読んだのは2年程前だった気がするなあ。今回読み終えたのは、早野　梓　著「幸福の遺伝子」新潮社である。1998年発行。これまたいつものBOOK OFFにて100円入手である。この作家に関しては何も予備知識がなかったが、本棚に並んでいたのを手にとって「あとがき」を読んでみると非常に気になった。テーマが「青木ヶ原樹海」なのだ。私のわずかな知識では「富士山のすそ野にある自殺の名所」でしかない。そこをテーマに何を書くと言うのか？

さらに、巻末の参考文献一覧をみて驚いた。66冊も並んでいるのだ。キーワードは「森」「脳」「DNA」「遺伝子」「免疫」「フラクタル」「生態学」「宇宙」「量子力学」「自殺」「失踪」「オーストラリア」「洞窟」「宗教」などの様々な分野に広がっている。これほどまでに他人の書いた本を参考にしながら書いたストーリーとはいったい何だろうか？誰しも気になると思うのだが。

読み始めてもこの本のジャンルがよくわからなかった。大学教授が失踪した。それを捜す妻は、残された手がかりを元に富士の青木ヶ原樹海へと辿り着いたのだった。果たして夫は樹海に身を沈めたのか？それをどうやって調査するのか？気になる展開でのスタートとなった。

通常、小説を読み始める場合にその本のジャンルを確認するものだ。しかしBOOK OFFで購入する際には、そんな細かいことはさておいて「なんとなく面白そう！」とのカンで選んでいる。ということは、当然ハズレも存在する。では、この「幸福の遺伝子」のジャンルはなんだろうか？そもそも、この本は私の好きな「ミステリー」なのか？それすら不明のまま読み出したのであった。ハズレなければよいのだが・・・。

結果から書こう！私には大当たり！だったのだ〜！

ミステリーの臭いを醸し出しながら、ストーリーが展開する。樹海の案内人である土産物屋の老夫婦。大学教授婦人。カメラを持って突如現れた知的女性。樹海に住む謎の人物。そして、大学教授。彼等はそれぞれに哲学を持ち、宗教感を持ち、人生について、宇宙について、大いに語りまくるのである。それらの知識満載「ウンチク」会話を成立させる為に、参考文献が大量に必要となったようだ。読む程に、遺伝子とDNAはどう違うのか？ なんてな風にすっかりDNAにも詳しくなってしまうのだ。

この小説の中で核となるのが「フラクタル」だ。私が「フラクタル」という単語を初めて聞いたのは河口洋一郎さんのCGによってだった。もう15〜16年前になるだろうか。「フラクタル」は、株価の推移を研究しているうちに発見された理論である。ここで「フラクタル」の理屈を説明しても意味はないので、知りたい方は自力で検索して見つけてほしいが、見つけても決して分かりやすい書き方がしてあるとは限らない。結構めんどうな解説が必要となる理論なのだ。以下に私がWEBで見つけた解説を転記しておいたが・・・

フラクタルの定義
フラクタルとは、ハウスドルフ次元が位相次元より大きい集合のことであり、そのときの次元をフラクタル次元という。すなわち、ハウスドルフ次元を計算し、その次元が位相次元よりも大きければ、それがフラクタルだ。つまり、ハウスドルフ次元を計算しさえすれば、それがフラクタルであるか判定できるわけだ。しかし、ハウスドルフ次元と位相次元が一致していてもフラクタルな特徴を持つ集合は、存在するので、この定義のみでは不充分である、それは特異な集合のみだ。また、ハウスドルフ次元を正確に求めることは非常に困難であるために、近似値を求めるいろいろな方法が作らた。

D=2ln(P/4)/ln(A)

おおお！そうかそうか！こりゃ分かりやすいぞ〜〜〜！なんてな事は誰も言えないだろ？ところが、早野　梓　著「幸福の遺伝子」野中では、自然な形で「フラクタル」がなんであるのかを、分かりやすい例え話で詳しく説明してくれるのだ。それを読むと、人生そのものがフラクタルであると感じる。そして二次元のフラクタル、三次元のフラクタル、時間軸のフラクタル、さらに次元とは何か？などのウンチクまみれになってしまうのである。そのマミレ具合がとてつもなく楽しいのだ！

けっして難しい本ではない。樹海に分け入る人捜しと、それを取り巻く心優しき人々や、樹海そのものが持つ特異な世界の話である。様々なマニアックな話をまとめて一気に読んでみたい方にお勧めする。この本のジャンルがなんであるのかは良く分からないが、フィクションであることだけは確かだ。まあ、100円でこの知識が身につけば、こりゃ〜モウケモンてなとこだね！でも・・・誰でも楽しめる本ではないことも確かだぞ〜〜〜！！！ハラハラドキドキの展開は期待するなよ〜！



本日の結論
青木ヶ原樹海に一度行ってみたくなったなあ〜！

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