読了的審査会

2002年03月03日 もし選定されたらどうする?


佐野 洋著「検察審査会の午後」1995年5月 新潮社刊


「今から御指名が愉しみである!」

佐野 洋著「検察審査会の午後」1995年5月 新潮社刊を読み終えた。この本もまたBOOK OFFで100円購入したものだ。小説新潮に1992年から1994年まで掲載されたシリーズを1冊にまとめたものである。審査1〜審査8までの8ブロックに別れた小説だ。8つの事件を丹念に検証して行く内容だ。同じテーマの短編集の感があるが、全体を貫く別要素があるので、全体の統一感は問題ない。

「検察審査会」なるものの存在を御存知の方はいるだろうか?もしくは「検察審査会」に参加された方はいるだろうか?最近になり裁判に「陪審員制度」復活の話が飛び交うようになって来たが、それはまだ先の話だ。だが「検察審査会」はずっと実施され続けている。そして、ほとんどの国民がそれを知らない現実がある。もちろん私も全く知らなかった。

「検察審査会」は検察が不起訴にした事件を「あの事件は本当に不起訴であるべきだったのか?」と検証するのである。そして「再調査すべきである!」と判定すれば検察に再調査を促すのである。しかし、ここで問題となるのは「検察審査会」の参加者達である。

検察審査会法
第1章 総  則
第4条
検察審査会は、当該検察審査会の管轄区域内の衆議院議員の選挙権を有する者の中からくじで選定した11人の検察審査員を以てこれを組織する。


これはどう言う意味か?「ほとんどの大人が検察審査員となる可能性がある」ということだ。それも選挙人名簿からくじ引きで決定されるのだ。そうなるとある日「おいおい!なんだよこれ?呼び出しが来てるよ〜!」と慌てふためくことになる。そして、検察審査員としての指名と呼び出しは基本的に「拒否」出来ない。あなたも私もいつ指名されるやも知れないのだ!そして、仕事を休み「検察審査会」に出席しなければならない。これは「国民の義務」である!だが、一部条件付きでこの指名を免れる方々も存在する。例えばこんな方々。

第2章 検察審査員及び検察審査会の構成
第6条 左に掲げる者は、検察審査員の職務に就くことができない。
1.   天皇、皇后、太皇太后、皇太后及び皇嗣

あれ?天皇家は選挙人名簿に載っていないはずじゃないのか〜?くじで選出されることはあり得ないはずだが・・・。わざわざ第6条に書くことなのか〜?なんてな突っ込みも起ってしまう「検察審査法」である。詳しい条文を読みたい方はこちらへ検察審査会法

「検察審査会」に出席するとどのようなことになるのか?まずは守秘義務が生じる。この会議で話されたことは決して外部に漏らしてはならない。非公開の会議なのだ。そして漏らすと罰金を取られることになる。いきなりくじ選びで呼びつけておいて、法律の素人に罰金かよ〜!ってな疑問も湧くが、さらに事後「検察審査会」で行われた内容を記事として書くことも禁止事項となっている。

「検察審査会」は基本的に「素人集団」が11人で「検察の判断を審査」するのである。これって、時間が許せば人生経験として面白いことではないだろうか?検察側の調査データを読み「これって変じゃない?」とおもったら「再調査!」を命ずれば良いのだ。素人が見て明らかに「これって変じゃない?」と思えるデータがそんなにあるとは思えないが・・・。

実際には、運営上かなり複雑な部分もあるので、ここではこれ以上書かないが、ほとんど表現されることがない「検察審査会」の具体的な動きをミステリー仕立てで読ませてくれる、佐野 洋著「検察審査会の午後」は面白いと思うな。

不謹慎ではあるが「検察審査会」の存在を面白いと思える私は変だろうか?そして、いつの日か私にも御指名が来ることがあるのだろうか?ふっふっふ・・・今から御指名が愉しみである! でもなあ・・・現実には小説の内容程に面白い事態が起るのだろうか?

この小説はテレビの連続ドラマの要素を持っている。かつてヒットした「ヒーロー」のような感覚で、表現するのも面白いのではないだろうか?しか〜し!非公開の「検察審査会」なので、経験者も迂闊には協力できないだろうな。ううう・・・難しいなあ・・・。




本日の結論
誰か検察審査員に指名された経験者はいます?

------------------------------

「独断倉庫」に関しての御意見は「啓示倉庫」へ書き込んで下さいな。



GO TO HOME PAGE