白岩的白城考

2002年01月11日 このあたりで一旦結論を出しておこう!

WHITE ROOK

WHITE ROCK


明らかに翻訳者の知識不足による誤訳である!


「国民的名セリフなのである!」

本日は1月8日の「コンバット・ホワイトロック」ネタの続編である。

テレビや映画に音声・音楽はツキモノである。ドルビーサラウンドや数々のテクノロジーにより、音声は鮮明にリアルに進化し続けている。DVDは5.1チャンネルのサラウンド機能を持っている。一般家庭でも、スピーカーとアンプをそろえればかなりのサウンド環境が安く手に入る時代となった。しかしシステム的環境が揃っても、住宅環境が大音量を発生させる鑑賞を許さない。なんとも悲しい貧しいジレンマである。

映画が発明された頃はサイレントだった。そのため、解説や音楽を映画に合わせ、生演奏でやっていた。私も一度だけ「ナポレオン」というサイレント映画の大作をNHKホールで鑑賞したことがある。15年程前だろうか?その時の生オーケストラは「カーマイン・コッポラ」が指揮していた。映画監督フランシス・コッポラのお父さんである。かなりの年令である。そして、3時間程の映画の間、ずっと生演奏が続くのである。あたりまえだが指揮者はその間、指揮棒を振り続けるのだ!あのイベントは、老人に対しかなり過酷な仕事をさせていたと想うなあ。

その昔、日本に映画が入って来た頃「弁士」なる職業があった。当時の映画には音はついていなかった。映像しか上映されないので「弁士」がその映像の生解説をしたのである。「メリーさんメリーさん!私はあなたを愛します!」などと男優、女優の声を使い分け壇上で熱演したのだ。

私の記憶に残る「弁士」は徳川夢声氏だ。もちろん私は彼の「弁士」ぶりを直接観たのではない。彼は無声映画衰退後、浅草六区で活躍し、テレビの台頭とともにナレーターとなり、かなりの期間活躍していた。子どもの頃はよく白黒テレビ番組で顔を見たものだ。おおむねNHKの番組だったなあ。「私だけが知っている」という推理クイズ番組だった記憶があるぞ。

さて、そんな日本の「弁士」達は、映像を観て彼等なりの原稿を作らなければならなかった。ある作品でのこと、ボクシングのシーンが出て来た。四角いマットにロープが張られ男達が裸で殴り合いをしている映像だった。当時、ボクシングは日本では知られていないスポーツだった。これは何だ?と理解に苦しんだ。しかし「弁士」はこの映像になんらかの説明を加えなければならないのだ。そこでひねり出した解説はこうだった。
「これは、西洋の縄張り争いであります!」

さあ、これを真実の出来事ととるか、小ネタと理解するかはあなたの判断に任せるとして、本日のお題「コンバット・ホワイトロック」ネタはこのことが絡んでくる。今まで集まった情報から推察する結論はこうであろう。

まず、昨日の掲示倉庫への書き込みから採録してみよう。

[187]どっちなんだ、サンダース!  From: 犬子  on 2002/01/10 19:00:29
はじめまして。”00066波”からの紹介で来ました。てっきり”ホワイトロック”だと思っていたら、ある回では”ホワイトルーク”と言っていました。無線ではなく普通の会話の中に出てきます。何回も言うので間違いないです。ショックです。

GI#1 「奴を見つけてやる。ホワイトルークめ」
カービー 「ホワイトルーク?」
GI#1 「奴の暗号名だ。ホワイトルーク」
ケーリー 「ホワイトルークだって?」
サンダース 「ホワイトルークは俺だ」

GI#1はホワイトルークを逆恨みしていてそう言うのですが、顔を知らないので本人の前で言ってしまうんですね。115話「戦友の生命/善人サマリタン」という話の中です...どうしましょう?

テレビドラマ「コンバット」は'62年から'67年に放映された傑作長編テレビシリーズ。第2次世界大戦中の西ヨーロッパ戦線を舞台に、ノルマンディー上陸など史実に沿ってアメリカ陸軍歩兵小隊の転戦記を描く。派手な戦闘アクションを中心に描くのではなく、兵隊ひとりひとりの人間に迫るヒューマン・ドラマであった。

まだ第二時世界大戦の臭いが少し残っていた時代だ。日本では大正製薬提供でオンエア開始されたと記憶している。「コンバット」が輸入された当時、セリフの日本語吹き替えをする必要があった。そして、オリジナル原稿を日本語へ翻訳する際、翻訳者が「WHITE ROOK」を「WHITE ROCK」と見間違えた可能性がある。音から拾うのではなく、翻訳者は印刷された原稿だけを観たのだろうな。

翻訳者にはかなり基礎知識が必要だ。「コンバット」の通信用コードネームは全面的に「チェス用語」が使われていた。しかし、翻訳者はそれに気付かなかった。「お城の形をしたチェスの駒」=「ルーク」であるという知識がなかったのだ。そのため「WHITE ROOK」は「ホワイト・ロック」と翻訳されてしまった。さらに不幸だったのはテレビドラマ「コンバット」を見ていた当時の日本人達のほとんどが、チェス用語の知識を持っていなかったことだった。今だって「ルーク」と聞いて「動きが飛車に似たチェスの駒」とすぐに答えられる日本人は少ないはずだが・・・。

だが、当時かなりの軍事マニアでない限りこの翻訳ミスには気づけなかっただろうな・・・。

「チェックメイトキング2!チェックメイトキング2!こちらホワイト・ロック!」は毎週何度もサンダース軍曹が発した名セリフである。現在でも当時少年であった国民たちのほとんどが「ホワイト・ロック」であると信じているように、日本全国に染みついた名セリフなのである。たとえ、シリーズオンエア途中で「あれってホワイトルークが本当なんだぜ!」と視聴者から指摘があったところで「もう今さら変えるわけにはいかんだろうが〜〜〜!!!」と責任者は言うしかなかったのだろう。もしかして、番組がオンエアされた後も、長い期間視聴者からその指摘はされなかったかも知れないなあ。

そして、いよいよVHSによる「愛蔵版  コンバットシリーズ」の販売企画が持ち上がった時「WHITE ROOK」に気付いた翻訳者がいたのだ。いっけね〜〜〜!!!とね。しかし、やはり「チェックメイトキング2!チェックメイトキング2!こちらホワイト・ロック!」は、テレビ業界が打ち立てた国民的名セリフなのである!今さら変えるわけには行かない!と、やはり変更を躊躇してしまったのだ。だが・・・さすがに他の会話の中に出て来た「WHITE ROOK」だけは「ホワイト・ルーク」と訳さずにはいられなかったのだろう。製作者の苦労が忍ばれるなあ。

以上のように、これは独断と偏見で導いた結論である。真実を知る方があれば是非御一報を!

そういやあ中学生のころ、国語の教科書に載っていたヘミングウェイ「老人と海」の中に、明らかな誤訳があるのを見つけた記憶があるなあ。あれって・・・どんな単語だったかなあ・・・忘れたなあ・・・。

と、一旦結論を出したところで、突然新しい情報が聞こえて来たのだ!
11日夕方、登録会員00035橋本様から電話があった。近所で仕事が終わったので会いませんか?とのお誘いである。終業直後だったので、すぐに五反田で待ち合わせ食事をすることにした。そして、レストランで話し込み、私が「コンバットネタ」について切り出したところ、橋本様はここ数日のこのネタをまだ読んでいなかったのだ。そこで質問してみた。

田辺 「チェックメイトキングツー!チェックメイトキングツー!この次は?」
橋本 「 こちらホワイトルーク!ですよね!」

うっ・・・いきなり正解ジャブをボディーにくらって失神しそうになる私であった。いったいどうしたのだ?余りにも鮮やかなこのホワイトルーク攻撃を、橋本様はどこで仕込んで来たのだろうか?

田辺 「ホワイトルーク?・・・・・・どうして・・・・・・日本人ならホワイトロックでしょ〜!」
橋本 「えっ?そうだったんですか?ずっとホワイトルークだと思ってました。
    むかしやってたバンドの名前がホワイトルークだったんです!
    友だちがつけてくれた名前だったんですが・・・」
田辺 「その友だちはなんでホワイトルークを知っていたんですかね?」
橋本 「んんん・・・電話して調べておきましょうか? 明日にでもメールで報告します!」


このような内容の会話が繰り広げられたのだ!さあ!どうなるのだ?気になる続編を待たれよ〜〜〜!!!



本日の結論
「Checkmate King 2,Checkmate King 2,this is White Rook!」は、日本語化するにあたって
「王手2番!王手2番!こちら白飛車!」とでもすりゃあ良かったのだろうか?

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