六弦的設計考

2000年7月23日 憧れは必ずしも満足にはつながらない?

P.R.S.

GIBSON

Mosrite

この3人の画像の意味は?読めば理解できるだろうか?



「私のMosriteをそんなに責めないでくれ!」

某国家的放送局で「プロジェクトX」なるドキュメンタリー番組が放送されている。歴史的にはあまり有名ではないが、それにかかわった人々とその技術に焦点をあて紹介する番組である。毎回かなり感動モノである!今回は2週に渡り「戦後唯一の国産旅客機YS-11」の完成秘話が紹介された。かかわった人々の血のにじむような設計が名機YS-11を生んだのであった。この飛行機は現在も80機以上が、世界中で活躍しているという。これほど長い期間現役で飛び続けている旅客機は他にはない。一貫した設計思想が、安全で長持ちする機体を生み出したのである。私も一度だけ乗ったことがある。プロペラのすぐ横に乗ったので、音がうるさかったのを覚えている。

さて、本日は設計のネタである。ギーターネタなので、ついて来れない方は諦めるようにね。

7月中旬に、35年間憧れていたギター「USA製Mosrite The Ventuars Model」を入手したのはすでに周知の事実である。しかし、この件に関し、皆様方からいくつかの意見が寄せられた。その多くは「何でいまさらMosriteなのだ?気がしれん!」とのご意見であった。もっともである!そのご意見に反論の余地はない。

さらにギター好きの人々は口々にこう言うのだ。「Mosriteはサスティーンがないし、Mosriteの音しかしない!それに古いギターなのにとんでもなく高い!アレを欲しがる人のことが理解できない!」もっともである!だが、私は欲しかったのである!どんな駄目なモノでも欲しかったんだも〜〜〜ん!

それでは、何故それほどまでにこき下ろされるギターなのか?それを紐解いてみよう。まず、音として最大の欠点である「サスティーン不足」について。そもそも「サスティーン」とはなんぞや?弦をはじくと、しばらくはそのまま振動を続ける。弦の両端がきっちり固定されているとその振動は長く続く。しかし、固定がゆるいと弦の振動はそのゆるい部分で吸収され、すぐに減衰して消えてしまう。この弦振動をサスティーンと呼ぶのだが・・・

Mosriteでは弦を支えているブリッジが固定されていないのだ。弦に押さえ込まれ指で触った程度では動くことはないが、トレモロアームを動かすと前後にぐらぐら揺れるのである!これでは、サスティーンを稼ぐことは出来ない。サンタナ的なナキのロングトーンはまったく期待できない構造なのだ!

さらに手に入れて初めて見つけたのだが、0番フレットが装着されているMosriteでは、低いフレットでチョーキングすると0番フレットからノイズが発生するのだ!このギターが開発された当時 チョーキングはまだ開発されていないテクニックだったのだろう。設計にその部分の対策が欠如していたと推察されるのだ。

サスティーン不足とともに「ペナペナ」したMosrite独特のサウンドしか出ないとの指摘も多い。全くその通りである。だが、その音こそが欲しい音なのだ。このギターでハードロックをやろうと思っているのではない。きらびやかな、サウンドを紡ぎ出そうと思っているのでもない。あくまでもいにしえのベンチャーズテケテケサウンドが再現できればよいと思っているのだ。はっきり言おう!私にとって音はどうでも良いのだ!あのスタイルが憧れだったのだ。弾くことが目的ではなく、手元に置くことが目的なのだ。

それではクラシックカーに例えてみよう。マニアがT型フォードを手に入れて「ターボがついてねえぞ!」と騒がないだろう。「燃費が悪い」と怒る人もいないだろう。ましてや「ブレーキが甘い!」と嘆く人もいないだろう。要するに性能の問題ではないのだ。F-1と T型フォードを同次元で対比しても意味がないのである!マニアはそのオールドスタイルを手に入れたいだけなのだ。Mosrite=クラシックカーだと思っていただければよろしいのではないだろうか。

概ね、Mosriteを否定する人々は若い。彼らには原風景にこのギターが存在しないのだ。逆に言うと、私には「フエンダー ストラトキャスター クラプトンモデル」が魅力的に見えない。くれるというならもらっても良いが、私の原体験の中にそれは存在しない。

と・・・ここまで書いてきて・・・実は問題もあるのだ。私が23年前から使い続けているGIBSON レスポールは、発売当時からから完成度が高く、その性能を今も維持し続けている。私はMosrite入手の直前にP.R.S.を手に入れた。こちらは最新設計のギター理論で作られている!サスティーン、サウンド、弾き易さ、何をとっても超一流である。P.R.S.を触った後でのMosriteは、ある種「ガックリモード」も発生させるのである! P.R.S.=藤原紀香、GIBSON=由美かおる、Mosrite=天地真理に例えればその感じはつかみやすいだろうか?

P.R.S.

GIBSON

Mosrite


さらに具体的に書くならば、子供の頃に憧れた「アイドル」に35年ぶりにやっと会えたら「ババア」になっていた!!!そんな感じでなのである!33年前の「由美かおる」は今も立派に「由美かおる」である。しかしそれに比べ、30年前のアイドル「天地真理」は今は・・・なのである!(意味がわからんぞ!)もっと年寄りにはMosrite=「原 節子」であると言った方がご理解いただけるか?

アグネス・ラムさえ原体験にない若人達よ!私のMosriteをそんなに責めないでくれ!あれでも当時は立派に一線で活躍し、ギターキッズ憧れの名器であったのだからな!!!で、私は本日いったい何を主張しようとしていたのだろうか?自分でもわけが分からなくなってしまったぞ〜〜〜!!!


本日の結論
それにしてもMosriteにはサスティーンがねえぞ!なんとかならんのか〜?

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