六弦的月面形

2000年1月22日 またしてもビョーキが復活してしまった。



「弾くことを拒否するのか?」

昨年末からのギター連続購入騒ぎも一段落し、2000年を迎えた。そうなると、2000年代最初に手に入れるギターはいったい何か?が次のテーマになる(なるのか?)すでに心に決めていたのは「Mosrite」だったが、なかなか手頃なものが見つからない。「Mosrite」はどういうわけか、おおむね高額なのだ。やっと安いのを見つければそれは全部日本製のコピー商品。私が欲しいのは「Mosrite U.S.A.」だけなのだ。

そして、先週頭にWEBオークション眺めているうちに、ふと目に入ってきたギターがあった。

人は幼い頃から、いつかは手に入れたいと思っているモノがある。20年前、私がふと欲しくなったモノに「KAWAI MOON SAULT」があった。非常に特殊な形状のギターである。上の画像で分かるように三日月のボディーデザインなのだ。しかし、これを手に入れないからと言って、私の生活がどう変わるものでもない。それほどせっぱ詰まって欲しかったわけでもない。ただ何となく欲しいな・・・その程度の感覚であった。20年も過ぎ去った昨今、その「KAWAI MOON SAULT」がオークションにかけられていたのだ。

残念なことに、オークションの「KAWAI MOON SAULT」には画像が無かった。単にギター名と、20年前のオリジナルのまんまでオリジナルハードケースも付いていると明記してあっただけだ。小さい傷も多少とある。それ以上の程度は全く分からない。が、私は昨年末に3カ月かけて、ギターレストアをやった実績がある。いざとなれば、再びレストアをやればよい。かなり安い値段なのだ、ちょっと乱入しても良いかもしれない。

オークションでは、落札にちょっとしたテクニックがある。例えば10日間の入札期間があるとすれば、その間ずっと他人の入札状況を見ているだけにし、決して自分では金額を入札してはならないのだ。深夜に勢い込んで入札し続けるとオークションの金額がむやみに上がるだけだ。テクニックはこうである。入札最終日の締め切り時間5分前に最高額を確認する。そこで、自分の出せる金額より低ければ、締め切り3分前に一気にそれ以上の金額で入札するのだ。この3分前が重要である。これより早いと同じ作戦の他人に再度高額入札され、ブツを奪われる可能性がある。しかし、3分以内だと他人はまず反撃できる時間を確保できない。さらに2分以内だと、自分が入札できなくなってしまう可能性があるのだ。以上の理由で、3分前がかなり微妙な時間となる。

今回はこの作戦を忠実に実行するのだ!

作戦は着々と進んだ。この「KAWAI MOON SAULT」の入札締め切りは1月20日23時9分 であった。その間観察を続けた。まだまだ余裕の低価格である。そして、いよいよ1月20日22時30分。カウントダウンが始まった。10分ごとにブラウザをリロード繰り返しながら、金額の確認を続ける。23時になった。すでに入札額は動かなくなっていた。しからば、私の出番である。1000円ほど上乗せして入札してみた・・・げげっ!!!あちゃ〜〜〜!!!今私が入れた金額があっさり否定されてしまったのだ!すでに敵はその金額より上を入れて設定してあったのだ!残り時間は3分しかない。

入札チャンスは、時間的に後1回しかない。素早く2000円増やして再入札!!!おっと!おっと!おっと〜〜〜!!!アクセス拒否されてしまった!!!この時間帯にオークションページはアクセス数が多くて、時々アクセスできなくなってしまうのだ!焦りつつ、さらに入札ボタンをクリ〜〜〜ック!!!ふふふ・・・ふはははは・・・・わははは!!!!見事に入札できたぞ!見事にわたしが最高金額入札者である!さらに、締め切りまでわずか1分前である。もう誰も寄せ付けるものではない!

その1分も過ぎ、史上最大の作戦は完了した。ブラウザをリロードすると、私が落札者であると表示されているではないか!ふはははは・・・・わははは!!!!あとは、出品者からのメールを待ち、引き渡しの交渉をすることになる。やがてそのメールは届いた。出品者は中野区在住の北洞(きたほら)氏であった。次の日まで連絡を取り合い、近くなので、1月21日終業後、私が直接引き取りに行くことにした。目的地は中野駅そばの「カラオケ メロディーハウス」である。北洞氏は店長なのだ。

「KAWAI MOON SAULT」はカラオケ用の個室に置かれていた。さっそく見る。かなり時代がかっていた。さすがに20年の年期を感じる。金属パーツはサビびだらけ。肝心のブリッジは元クロームメッキの「バダスブリッジ」だろうが、錆びてボロボロに見える。ボディーは擦り傷が結構多い。ペグ(糸巻き)も錆でガサガサになっている。エスカッションもかなり痛んでいる。これも取り替えねばなるまい。大笑いは、20年前購入当時の「保証書」が添付されていたことだ。たしかに昭和55年5月購入となっている。だが、この保証書に効力はまったくない!(あたりまえだがね)ネックには傷が無く弾くことに問題はなさそうだ。

この怪しげな状態のギターを購入して良いのだろうか?一瞬悩んだが、このような状況でも私は購入を決心した。昨年暴れていたレストア虫が再び騒ぎ出したのだ。というのも、昨年 レストアしたときに取り外したブリッジが「金色バダスブリッジ」で、ピカピカのまま手元に残っているのだ。あれを再利用すれば、出費は無くて済む。それ以外にもマイクロスイッチのナットが目立って錆びていたが、やはりこれも手元に予備があるのだ。とっとと取り替えれば済むだけだ。問題はペグになる。これはさすがに予備を持っているはずもない。時々オークションに出ているので、そいつを買って取り替えれば良いだろうな。レストアは追々時間をかけてやればよいだろう。

てなことで、帰宅後すぐさまブリッジ交換にチャレンジ!予定通りぴったり納まった。マイクロスイッチのナットも交換!ンン〜〜〜見た目が良くなってきたぞ!弦も新しいものに張り替え、ひとまずなんとか格好がついた。画像ではあまり分からないが、まだまだ手入れは必要である。醜いアヒルの子は今後、果たしてどこまで白鳥に近づけるのか?楽しみである。




音のチェックために「KAWAI MOON SAULT」を膝に抱えてみた。その時初めて、私はこいつの大いなる矛盾に気づいた。ボディー形状は三日月形である。膝に乗らないのだ!いやいや、乗らないわけではないが、実に安定氏が悪い。ツルツル滑り、ちょっと動かすだけでずり落ちてしまうのだ。なんというボディー設計なのだろう!ストラップでぶら下げない限り弾けないギターなのだ。座って弾くことを拒否する形状なのだ〜〜〜!「座ることを拒否する椅子」というアートが存在する。それにも似た存在なのだろうか?「弾くことを拒否するギター」というアートなのか?そのような設計思想なのか河合楽器株式会社ギターデザイン部は?(なわけね〜だろが!)

このような矛盾を抱えつつ、今年も又、レストア作業に突入した私なのである!!!

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