小銭的潤滑油


2018年11月07日 小さな金額で友好を深める!



「君の分も一緒に支払うよ!」

正直であること誠実であること、の意味を感じさせる久々の出来事について。

先月のこと、イギリスから禅駆動のオーダーがありました。すぐに製作して発送しましたが、イギリスの税関でどういうわけか留まってしまって、一週間ほど放置されていました。こればっかりはいかんともしがたく、見守るしかなかったのですが、その後はスムーズに行き出荷から12日後にはオーダーしてくれたギタリストの手に渡りました。

そして一週間後、彼からメールが届きました。サウンドはとても気に入っていて満足しているのだが、フットスイッチを踏むと大きなPOPノイズが出るというのです。なんだそれは?出荷時のチェックではそのようなことは起きなかったのですが・・・。しかし、相手が言っていることを無視するわけには参りません。POPノイズが出る原因は殆どの場合はアースの取り方が間違っているか弱い場合です。運送の途中でどこか激しいショックを受けてアース配線の部分が被害を受けたと考えるしかありません。

そこで、たまたま作り上げたばかりの禅駆動が手元にあって、それをオーダーした方と連絡が取れなくなっていたので「すぐに新しい禅駆動を送ります!」と翌朝にはイギリスへ向けて発送しました。これには相手も驚いたようで「いやいや、新しいのを送ってくれと私は言っていないよ!あなたが気分を害していないとよいのだが」と返信がありました。それに対して「これは私のプライドの問題です。完全な状態のペダルを渡せなかったことが悔しいのです。新しい禅駆動が届いたら、お手数ですが最初の禅駆動は初期不良品としてご返送ください。受け取り次第郵送料をご返金いたします。申し訳ございませんでした」と返しておきました。

3日後、トラッキングナンバーをチェックすると早くもイギリスのオーダー者の近くにある郵便局へ届いていました。あとは配達を待つばかり。翌日には配達されるだろうと思っていました。ところが!その郵便局でまたしても一週間放置状態があったのです!そこで、オーダー者へメールしました。

「あなたのペダルは近所の郵便局に留まったままのように思えます。郵便局へトラッキングナンバーを伝えて確認してください」すると翌日こんな呆れたメールが「あなたのメールによるご連絡はありがたい!ところが、調べてみたらペダルは私の街の郵便局ではなく隣町の郵便局に留まっていてそのまま放置されていました。私は土曜日に車で引き取りに行ってきます。受け取り、試奏を終えたら再度ご連絡します!」というのです。

連絡しなかったらどうなっていたのでしょうか?わけがわかりません。郵便制度発祥の地イギリスでこのザマですからね。日本時間日曜の朝、彼からメールが届きました。
「本日受け取りました。今度の禅駆動はパーフェクトです。全く問題はありません。サウンドも素晴らしい!あなたの素早い対応に感謝しています。本日中に最初の禅駆動は返送します。トラッキングナンバーはXXXXXXです。ちなみに、返送の郵便料金は私に返金しないでください。ささやかな金額ですから」

私は製作者として当然のことをしただけです。返送料金も返金すべきです。しかし、そこで考えました。返送料金の件はありがたくお申出でのとおりにしようとね。ユーザーは私の商品と一連の対応に対して満足していただいて、その評価として「返金は必要ない」と言っていただいたわけです。その言葉には多くの意味が含まれていると思うのですよ。彼の私や商品に対する感謝とか、スピードに対する評価とかね。実は今までにも「返送料は返金しなくて良いですよ」と言われたことが何度かありました。いろんなケースが有りましたが、いずれも同じような対応状況でしたが・・・返金を断られた場合に返金しないことで起こる相手の満足感も考慮すべきだと思うのです。分かりやすいイメージはチップですかね。

食事の後で日本人にありがちな「ここは私が支払いますよ!」「いやいや何をおっしゃいますここは私が!」とお互いに財布を出し合うあのケースはいつも面倒だと思うのです。最初に財布を出した方に対して素直に「ご馳走になります!次回は私が!」と言えば良いだけですからね。海外で外国人の友人と食事すると、そのやり取りがスマートでスッキリするので嬉しいですよね。誰かが「ここは私が支払います!」といった瞬間に終わりますから。逆に「君の分はチップ入れて25ドルね!」と言われても割り勘がスッキリと支払えます。

アメリカのギタリスト、Mr. Henry Kaiser と一緒に行動しているとHenry がさっさと支払おうとするので「ここは私が支払います!」と早めに自分から宣言しないと手遅れになりがちです。そんな時Henryは「Thank you!」の軽い一言で引き下がります。これが心地良いのですよ。これはアメリカ旅の際に何度も経験しました。屋台に並んでいたら現地で友人になったギタリストが「君の分も一緒に支払うよ!」と気軽に声をかけてきます。逆に私も別の場所で同じことをしました。大した金額ではないのですがお互いに気持ちよくおごったりおごられたりで、意思の疎通も図られたりとね。

小さな金額(小銭)のおごり合いは世の中の潤滑油のような気がしますよ。

本日の結論
小銭っていくらのことだろ?

「独断倉庫」に関しての御意見は「啓示倉庫」へ書き込んで下さいな。



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