忍者的車中談

2018年05月21日 記憶を掘り起こしてみよう!



「一気にスターダムにのし上がったのです」

1枚の古い写真が膨大な記憶を呼び覚ますことがあります。実は、3月20日に書いた話の続きを思い出させる写真が一昨日も片付け中に本棚の中から出てきたのです。おそらく1980年の写真です。右側で寝ているのが私。左側でペンを持って考え事しているのは誰でしょうか?正解は「小杉 正一」さんです。それって誰?

セイコーのクレドールという高級腕時計のTV-CM撮影でLAに行った際の出来事でした。出演タレントは長嶋茂雄氏。このときは監督を休業していた時期です。昭和55年だったと思いますが、LAで2本のCMを撮影する予定でした。1本目はLAのアートセンター内で無事に撮影を終えたのですが、その直後トラブルが起きました。

「シゲが行きたくないと言っている」とマネージャーから連絡が入ったのです。なにそれ?実は2本めの撮影はユタ州にあるアーチーズ国立公園での撮影でした。LAからはかなり遠く、しかもセスナ移動が予定されていました。長嶋茂雄氏が自ら「私は行きたくない」と言うはずもなく、明らかにマネージャーの言い分だったのでしょう。

そこで、急遽手配の変更です。しかし撮影場所を変えるわけには行きません。特徴的な地形を利用した撮影なのですから。作戦会議の後決定したのは、長嶋茂雄氏のアップの撮影はLA郊外にある「レッドバレー」で行う事。この場所はかつてハリウッドの西部劇でスターたちをグランドキャニオンまで連れていけない場合頻繁に使われたロケ地だそうです。

ユタ州ロケは遠景だけして、岩の上に経つ長嶋茂雄氏のスタンドインの後ろ姿だけ撮影することにしました。すぐに長嶋茂雄氏のスタンドイン探しが始まりました。そして、見つかったのは体格もがっしりとして身長も近かった「小杉正一氏」LAの空手道場の先生でした。我々のホテルに来てもらい、日本人の理容師を呼んで長嶋茂雄氏と同じスポーツ刈りにしてもらいました。コスチュームはタキシードなので、レンタルで調達。遠くから薄ろ姿だけ見れば長嶋氏にかなり似ていました。

レッドバレーでの長嶋氏本人のアップ撮影とスチール撮影は無事に終了して、撮影隊は翌日ユタ州ソルトレイクシティーへ向かいました。と、ここで一つの事件が起きました。小杉正一さんが空港の警備に足止めされてしまったのです。理由を聞いて大笑いしてしまいましたが・・・小杉さんがしていたベルトは大きなバックルに仕掛けがしてあり「十字手裏剣」が仕込んであったのです。それが金属探知機に反応したと。勿論係員に取り上げられていましたが。なぜ十字手裏剣を?とこの時は疑問に思ったのですが・・・。

ソルトレイクシティー空港からはセスナ4機に分乗して、アーチーズ国立公園へ向かいました。


アーチーズ国立公園の代表的なアーチ岩 撮影場所もここでした。

行きのセスナは、あまりにも気流が悪くてエアポケット落ちまくり揺れにゆれ。全員が気分悪くなって体調不良に。帰りは絶対にセスナは嫌だとスタイリストが言い始めて全員が賛同!帰りのセスナをキャンセルし、大型バスをチャーターしました。その帰りのバスの中が一番上の写真です。大型バスにスタッフ10名ほどしか乗っていないのでガラガラ。私が小杉正一さんと話をしていたら「映画に出たばかりなんですよ」と宣材写真のブロマイドを見せてもらいました。「燃えよニンジャ」という映画。小杉さんは「また何か撮影があったら使ってくださいよ!よろしくおねがいしますね!」と営業スマイル!そして、この撮影が終わった時点で「小杉正一」さんとの縁は切れるはずでしたが・・・。



帰国後CMも無事完成し、この撮影のことを忘れ始めていた翌年のこと。写真週刊誌「FOCUS」を買って驚きました!日本人ハリウッドスター誕生!の見出しであの「小杉正一」さんが笑顔で映っているではありませんか!なんと「ショー・コスギ」としてハリウッドスターになっていたのです!えええ!!!

これは私がバスの中で見せてもらったあの写真の「燃えよニンジャ」が全米で大ヒットしたことにより、アメリカは一気に忍者ブームとなり、その後も「忍者シリーズ」が続き、小杉正一さんは一気にスターダムにのし上がったのです。
その後、息子さんのケイン・コスギも日本で有名になりましたね。映画「忍者シリーズ」は日本では余り有名ではないのですが、アメリカでの忍者ブームの火付け役になったくらい凄かったようですよ。

その後、一度もお会いすることはなく今日まで来ました。20年ほど前に日本のTV番組で「ショー・コスギ」の裏話として「長嶋茂雄のスタンドインをやった」と本人が話す番組をやるので、CM素材を貸して欲しいと撮影当時の広告代理店営業担当から連絡がありました。結局、私はその番組を観ることが出来ませんでしたがね。



本日の結論
これが私とショー・コスギ氏の4日間の出来事です。久々に思い出しました!

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