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「ぶっ殺してやろうかと思うほど」

この年齢になると、過去の経験値が高いだけに様々な記憶が突然飛び出すことがあります。今朝ふと思い出したことが有ったので忘れないうちに書き留めておきましょう。

30数年前の出来事。私が大手TVコマーシャル制作会社に勤務していた頃の話です。Mプロデューサーがロケーション撮影のためにアメリカに旅立ちました。ところが、Mプロデューサーは同じ時期に2つの案件を抱えていて、撮影日が重なっていました。もう一つはメキシコでのローケーション撮影。

アメリカの撮影場所はロスアンジェルス。M氏は現地スタッフと打ち合わせののち、メキシコの撮影現場に向かいました。ロスアンジェルスの撮影現場は責任者がいなくなってしまいますので、私がその代理として急遽呼び出され、LAへ向かいました。M氏によって、すでに打ち合わせは終わり段取りは完了しているはずでした。ここまでは問題なしでしたが・・・。

LAの撮影は某超有名日本人を撮影する仕事でした。LAに入って私はすぐにコーディネータと打ち合わせ。撮影内容はM氏の判断の元すべてフィックスしているわけですから、私が出る幕はありません。しかし、予算管理だけはしっかりしておく必要がありますから、コーディネータにいくつか質問しました。（この打ち合わせの意味はもう一つありました。M氏の予算管理がいい加減で何度も煮え湯を飲まされた経験があったからです）

すると、驚くべきことがその提示された見積書の中で発覚しました。ロケーション撮影で借りるビルのレンタル料が日本円にして３００万円と書かれていたのです。どう考えてもありえない数字でした。私が認識している予算では３０万円から４０万円が上限のはずです。一体どうしてそうなった？このままでは予算大爆発です。そこで、私はコーディネータに聞きました。

「なぜロケ場所代が３００万円というとんでもない金額になっているのですか？」するとコーディネータは「ロケハンが終わった段階で、M氏が絶対この場所で撮影したいから許可をとってほしい。金はいくらでも出す！」と言ったというのです。私は信じられませんでした。上限のない予算なんてありえませんから。そもそも予算を無視したロケハンなんてありえないからです。

一瞬悩んだ私でしたが、撮影は３日後の予定です。躊躇しているわけにはいかないのです。そこでこう言い放ちました。「しかし、その予算は私には許されていません。その金額は支払えませんので、すぐに別の撮影場所を１日以内に探してください。予算は３０万円以内でお願いします」

それに対してコーディネータは「でも！！！M氏はその金額でOKを出したんですよ！」私は静かに応えました「それは昨日までの話です。今は私がこの撮影の全責任を負っています。私の判断が最終判断です！すぐにロケ場所を探しに行ってください。再交渉で当初のロケ場所が３０万円で借りられるのであれば問題ありませんが！」

その日の夜、再びコーディネーターがホテルにやって来ました。そして彼らが言った言葉には大笑いでした。「当初のロケ場所を再交渉した結果、３０万円で借りられることになりましたので、あの場所で撮影をお願いします！」との報告が有ったのです。この意味するところは何でしょうか？私の一言で値段が十分の一になったのはなぜ？ほんとに再交渉の結果？当初から３０万円じゃなかったの？そのコーディネーターとは二度と仕事はしなくなりました。

やがて日本国内での後処理も終わり、最終結果は映像も予算もすべて予定通りに収まっていました。そしてしばらく経ったときのこと。M氏が私に対して言った言葉「あの仕事が、まさか予算内に収まるとは思っていなかったよ！」ぶっ殺してやろうかと思うほど怒りが湧きましたね。

実は、この話にはもう一つ別の上司のY氏の話がヒントになってました。そのY氏がやはりアメリカのコーディネータ事務所で撮影の打ち合わせをしていたときのこと。あるものをレンタルする事になり、コーディネータの助手がその金額を調べてボスに報告している事務所にたまたまY氏は居合わせたのです。

助手が報告したのを聞いたボスは「それはレンタル代５００ドル必要です！」とY氏に答えたそうです。この時コーディネーターのボスが知らない事実がありました。Y氏は英語が堪能だったのです。助手がボスに報告していた時確かに「それは５０ドルで借りられます！」と報告しているのをY氏は一緒に聞いて理解していたのです。Y氏はそのボスに「私は英語が理解できるのだが！あの助手は確かに５０ドルだと言っていたよ！」と英語で伝え、その後このコーディネーターはお出入り禁止となりました。


本日の結論
ちゃんとギャラを払っている上にこんな事されたら誰でも怒りますよね。

「独断倉庫」に関しての御意見は「啓示倉庫」へ書き込んで下さいな。

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