英国的音帯域

2012年04月15日 素晴らしい一夜だった!


Mr. Richard Thompson Billboard Live Tokyo.



「私は彼女の名前を知らないのですよ」

4月15日朝。4時40分に目覚めた。昨夜はテストとして自宅で眠剤を飲まずにどれほど眠れるかをやってみようと考えた。0時40分に消灯してすぐに眠れたようだ。夕方から外出していたのでその疲れもあったのだろうね。4時間の睡眠だったが、他人が介在しない環境で寝られたので、病院より遥かに熟睡出来た感じがする。今日昼間もうたた寝をして睡眠時間をもう少し確保することにしよう。

さて!昨日の午後から夜にかけての出来事をご報告せねばなるまい!最悪の体調の私はその後どうなったのか?そして、Mr. Richard Thompson との出会いはうまく行ったのか?と言ってももう、上に画像があるのでお分かりだと思うが・・・。ではその経緯を書いてみよう。


4月14日お昼になっても、私の体調は最悪だった。少し吐き気があり、腹は痛いまま。頭痛が伴う目眩が少しあり、帰宅後はコタツにへたり込んでしまっていた。下剤が効くのをひたすら待つ状態。腹痛がピークに達するのを待ってついに排出権獲得!いっきに絞り出した!途端におなか周りが楽になった。

クスリを飲むために、昼飯を炊きたてのご飯にしてもらって卵ご飯でなんとか流し込んだ。しばし落ち着くのを待ってから、今度は熱いシャワーを浴びた。シャッキリする!体重を量ってみると、入院で1.5キロ減となっていた。やはりダイエット効果はあったなあ。これで1年前から10キロ体重が減ったことになる。

夕方までまだしばし時間があるので、録画してあったドラマをいくつか観ながら過ごすことにした。テレビの音がやはりまだ完璧には聞こえない。少し右耳に圧迫感が戻ってきた感じだった。体調の悪さと、右耳の調子で出かけるのがおっくうになるが約束を守るのだ。じっとその感覚に耐えていた。16時に妻が外出先から戻ってきた。私は17時半に六本木待ち合わせなので16時20分に家を出れば良い。

ここまで頭がフラつくのは血糖値が下がっている可能性があると考え、少し甘いものを食べてみることにした。羊羹一切れと、野菜ジュース飲みつつ長崎カステラをパクつく。久々の甘いものが嬉しい!大きめをほぼ完食。これが正解だったようだ!駅に向かう車の中や、電車の中ではまだ体調が落ち着かなかったのだが、1時間後に六本木の Billboard Live Tokyo に到着する頃にはすっかり気分が上向きになってきた。こりゃあいい!

今回もまた、tanabe.tv 音楽系専属通訳として橋本氏にご同行をお願いした。開場入り口で待ち合わせして、バックステージパスをもらい入場。今回の招待は、Mr. Richard Thompson の大親友であり私の親友ともなった Mr. Henry Kaiser が「是非、聴きに行ってください!」と手配してくれたものだった。18時と21時の2ステージあるのだが、Henry はこういう「Richard は同じことはやらない主義だから、2ステージとも聴くべきだ!」とね。で2ステージ分のバックステージパスが2人分用意してあった。

1階に用意された席に着くと相席。先客に挨拶しつつ座った。さらに右耳のクリア度が増してきた。耳のヌケ具合が心地よい。しばし、橋本氏と世間話しながら開演を待つ。18時開演。アコギ1本を抱えて、Mr. Richard Thompson は下手から現れた。今回はアコギ単独ライブだから、とてもシンプルな舞台だ。足下にエフェクターが少し置いてあるだけ。

アコギにはサウンドホールにピックアップが取り付けてある。ギターにジャックインしてすぐに演奏開始!おおお!おおお〜〜〜!!なんとクリアで気持ちよいサウンドだろうか!オベーションなどのエレアコと違って作った感が少ないナチュラル系アコースティックギターのトーンが心にしみるのだ。それにもうひとつ驚いたことがあった。

私の右耳だが、演奏開始時点で驚くほどクリアに聞こえ始めたのだ。ギターサウンドのハイレンジからローレンジまでクッキリ鮮やかに受け止めることが出来たのだ。なるほど!音を楽しめるってこういうことだったのか!と正常な聴覚のありがたみをしみじみ感じつつ感動すら覚えていた。やがて1時間10分の演奏とアンコールが終わった。超絶のフィンガリングとボーカルに感動だ!心地よい余韻。そしてなんといっても、音量がいまの私に優しかった。これがロックコンサートだとたぶん私はここにいられなかっただろうな。

Mr. Richard Thompson が舞台からはけた後、ツアーマネージャーらしき人物が舞台を楽屋方面に向かって横切って行くのが見えた。私は素早く立ちあがり、彼の方へ手を振る。彼もそれに気づいて立ち止まってくれた。私は歩み寄り確認。握手しつつ彼は話しかけてきた。大きな体格のイタリア系だね。今後の会話は全文日本語意訳化して再現する。

「ハイ!私はサイモンです!あなたはMr.Tanabe?」

「そうです!私が田辺です!お招きありがとう!楽しかったよ!」

「そりゃあよかった!あなたのことはHenry から聞いてるよ!2ステージ目も楽しんでね!
 もう一人友達も来てるんでしょ?どこ?」

すぐに橋本氏を手招きして呼んだ。紹介が終わると、サイモンは、

「じゃあ!楽屋に行こう!」

と、階段を上り始めた。私たちは2ステージ目が終わってから楽屋訪問と考えていたのだが、いきなりかよ!

前回Robbenの時にも入ったので、楽屋の構造は分かっていたが、今回はさらに奥の部屋に招き入れられた。テーブルの上には夕食のにぎり寿司セットと、ざるそばが用意されていた。なるほど!これが夕食か!そこに立っていたのは Mr. Richard Thompson だ。まずは握手して自己紹介。

「はい!田辺です。コンサートはとても楽しみました。ありがとう!
 あなたとは2年前にLAで会ったのですが覚えていますか?」

持ってきたiPadで2年前の夏にLAで会ったときの画像を何枚か引っ張りだし観てもらった。

「ハイ覚えていますよ!Mr. Matt Groening の家で Henry と一緒に会ったね!」

以下がそのときに撮影した写真の1枚だ。この時点で私は Mr. Richard Thompson がどのような人物か全く知らず、単なるHenryの友達ミュージシャンが遊びにきているだけと思い込んでいたのだ。帰国後調べてみると、偉大なるミュージシャンであることが判明して驚いたものだった。


2010.09.10 Mr. Richard Thompson & Mr. Howard Leese

そしていよいよ、弾駆動の引き渡しとなった。バッグからいつものケースを取り出し、中身を開いて弾駆動を手渡した。今回はポリッシュケースのデザインにしておいた。Mr. Richard Thompson は見るなり、このピカピカ具合が気に入ったようだった。

「クリーンブースターからオーバードライブまで使えるからね。
 Henry もお気に入りだから楽しんで!
 ちなみにこれは、メイド・イン・ホスピタルだからね!私は今朝退院したばかりなんだ!」

「 そうだ!Henryから聞いてるよ!君の耳は聞こえるようになったかい?もう大丈夫?」

「大丈夫!さっきのコンサートがクリアに聞こえたからね。ありがとう!」


そして、マネージャーのサイモンが弾駆動を見て面白い言葉を口走った。

「おう!マザー・オブ・トイレットシート!」

なんだそれは?彼がその後説明してくれたが、どうもイギリスの慣用句かスラングのようだった。こういうピカピカのものに対して「お母さんがピカピカに磨き上げたトイレのようだ!」と言うのか?初めて聞いた言葉だが、褒め言葉のようだね。こんな会話が楽しめるのも嬉しいね!

その後、寄せられた情報により上記の言葉の件に付いて、理解出来た。気になる方は「マザー・オブ・トイレットシート!」で検索してみて。いくつも出てくるから。

Mr. Richard Thompson はすぐに3モードスイッチに気づいて質問してきたので、ゲインの味付けの違いの話をした。LEDもそれに合わせて3色に切り替わるよと教えると、かなり喜んでいたな。そして最後に、名刺を渡して伝えた。

「弾駆動を使ってから、感想をメールで送ってね!楽しみに待ってるから!」

「わかった!メールを送るよ!ありがとう!」

これで引き渡しの儀式は終わりだ。これから先はお約束の記念撮影とサインをもらおう。とその時!イカンイカン!まずい事態となったのだ!私はボケた頭で家を出た際に、デジカメを置き忘れてきたのだ!しまった!だが iPhone があるので急遽それで対応することにした。Mr. Richard Thompson はカメラの位置を見つつ、弾駆動をキチンと正対させて自主的に持ってくれた。プロだねえ。実にジェントルマンだ!

楽屋は光量が少ないのでストロボが無いとちょっと辛いのだがね。橋本氏に撮影してもらった。案の定暗かったので少しブレてしまったが良しとしよう。で、この画像でお気づきだろうか?私の表情である。自分で見てもかなり柔和になっているのが分かる。いかに今日のライブを楽しめたか、そして、耳の状態が良くなっているかがお分かりになるだろう。



サインをもらう際に、もうひとつのネタを Mr. Richard Thompson に伝えた。頻繁に当家へ来るヤマトの配達おばさん(おねえさんかもしれない)が当家に配達に来た際、玄関内に飾ってあった私とRichard の写真を発見して「なぜ?なぜここに Richard Thompson と一緒の写真が!!!」と絶句した話があったのだ。彼女は Mr. Richard Thompson の大ファンであるという。

そこで、用意してきたMr. Richard Thompson の写真をレイアウトしたサイン用紙を渡しつつ、

「あなたの大ファンである配達員の彼女のためにサインをお願いしたいのですよ」

「おう!それは喜んで!ところで、彼女の名前は?」

「ごめんなさい!私は彼女の名前を知らないのですよ」

「OK! じゃあ、私のサインだけ入れておくね!」

こんな会話があり、無事にヤマトのおねえさん用サインは入手出来たのである。これまた面白い話でしょ?そのヤマトのおねえさんに「14日は Mr. Richard Thompson と会いに行くんだ」と配達してくれた際に話したところ「是非お二人一緒の写真を撮って私に頂けませんか?」と言っていたのだ。その写真プラスサインだから喜んでくれるだろう。日頃、調達している部品はほとんど彼女が当家へ届けてくれるのだからね。そのお礼でもあるのだ。

2ステージ目は、1ステージ目よりさらに楽しめた。内容も良かった気がする。橋本氏も同じ感想だったなあ。満足!まんぞく!そして、再度楽屋に挨拶に行き、Mr. Richard Thompson にお礼をのべ、橋本氏とMr. Richard Thompson の記念撮影をした。マネージャーSimonとの写真も撮っておいた。またいつの日かお会いしましょうと、Richard & Simon に別れを告げ、Billboad Live Tokyo を後にした2人だった。

Mr. Simon Tassano & Mr. Hashimoto & Mr. Richard Thompson


私にとっては激変の一日だったなあ。体の絶不調から、大喜びのライブまでその幅は大きかったぞ。

帰宅後、ふと感じることがあった。大物ミュージシャンやマネージャーに対して、全く躊躇することなく自主的に話しかけ、なんとか会話を成立させている自分がいたことに気づいた。その行為に対して、ゆとりさえ感じていた。Robben の時よりそれは進化していた。私の英語は流暢なわけではない。かなりいい加減だし稚拙だしアバウトだ。ほとんどしゃべれないに等しい。でもなんとか力技の会話によって意思は伝えられ、相手の言っていることも理解出来ていた。

なんだろう?この私自身の変化は?ギターペダルの評価だけではなく、私自身の内部にも大きな変化が起きていると感じるのだ。Henryが、私の病状のことをSimonやRichardに伝え、それを彼らがまた私にHenryから聞いているよと伝えてくれる。そんな関係がさりげなくそこここに転がっている現状が、私の内面の何かを刺激しているに違いない。

今朝になりメールチェックしてみると、コンベンションでモントレーに滞在中のHenryからメールが届いていた。

「私はRichardのギタープレイはグレートだと思うんだ。あなたもそう思うかい?
 Richard と Simon からメールが届いたよ。彼らもあなたに会えてとても喜んでいた!」

陽光まぶしい朝だ。今日は労働しない。のんびりと体を自宅で休める日とする。あせりは禁物だ。


本日の結論
退院直後にめげそうになっていたが、ライブに行ってよかった!精神的復活が出来た!

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