駆動的超越型

2011年11月14日 提案があってプロトタイプを製作!



「試奏して欲しいもんです」


世界的な不況と致命的な円高で、ペダルのオーダーがすっかり止まってしまいました。直近の25日間でまっとうなオーダーは1台のみ。いささか参ってしまいましたが、かといって精神的にいたぶられることは無くて、のほほんと生きております。

眼瞼下垂手術もあったので、やらなければならない作業が発生しないのは少し助かった気もしますがね。それでも、半田ごてを握らない日々が続くとちょっと寂しいですよ。そこで、以前から「こんなの作ってみてよ!」と言われ続けていたペダルを作ってみるかと、ようやく腰を上げました。

当初は、コンプレッサーを作ってみようと動いていたのです。そもそもは、Henry Kaiser からコンプをプレゼントされてそれを参考に「その上を行くものを作ってみない?」とそそのかされたからですが。1台だけプロトタイプを作った段階で、ふと感じた疑問がありました。「良い音のコンプってなに?どの部分?」

自分で判定できないものを作るのは難しいですよね。Henry が気に入っているコンプも「これのどの部分がいいの?」となかなか理解できない状態でした。1台だけ作ったプロトはKOREさんに渡したっきりです。自分が欲しいものではないのでさらに開発を続ける意欲もわかず、そのうちあの東北大地震ですっかりすべての開発意欲が失せてしまいました。

さらに Henry から春先に「こんなペダルは作れない?」とメールが届きました。

「私は、禅駆動TWIN CUNTOM がとても気に入っている。両チャンネルを同時ONのサウンドが好きだ。これを8ノブではなく4ノブにして小さなケースに出来ないだろうか?ペダルボードの設置面積を小さくしたいんだ」

ですが大地震直後のことだったので、私はそのメールをすっかりスルーしていました。というか忘れ去っていたのでした。ところが先月になり、Henry が南極大陸に取材で上陸していた時に現地からもう一度提案メールが届きました。

「春に提案した件だけど・・・弾駆動で作れない?Super DUMKUDO ってなネーミングで。回路的には・・・・・・・・のようにすれば安く出来ると思うんだけど・・・」

再びやって来た提案にそろそろやってみるかと準備を始めました。まずはケースとパーツの手配。たぶん Henry が考えているサイズは、通常の弾駆動で使っているサイズなのでしょうが、物理的にそれではパーツが収まらず無理です。というか、Henry の考えている回路構造では彼の望むサウンドは無理であると私は判断したのです。私が考えたのは、やはり2回路を使う構造でした。つまり余り安くは出来ないと・・・。

そこで、ケースは通常使っているAサイズより一回り大きい AAサイズをターゲットとしました。さらに4つのポットはステレオ用の2連のものにしました。コントロールを2段重ねにする作戦。材料発注の段階では、まだAAサイズケースに本当に収まるかどうかは自信がありませんでしたよ。パーツ到着後に各パーツのサイズ測定をしても、かなりギリギリな感じでした。

こうなると、ケースに穴あけをする前にはかなり慎重にならざるを得ません。1mm穴あけの位置を間違えるとそれでパーツが収まらなくなる可能性大です。しかし、ここで悩んでしまったうえに例の手術騒ぎで、眼を開けるのが辛くなって作業が出来なくなり、しばし放置してしまいました。

再び気を取り直して作業を始めたのがポッキーの日である11月11日のこと。意を決して午後からケースにマーキングを開始。図面は無いので、すべての穴の位置を私の頭の中にある完成図に向かって決めて行きます。今回のポイントは、3モードスイッチの設置位置です。2つ設置しなければなりませんので、ケースの左右にその位置を決めました。となると、当然LEDインジケータの穴も2つ必要です。これもまた悩みの種でした。



現物のパーツをあてがいながら全ての位置決めを完了。しかし!この時点でもまだワイヤリング後の納まりに対しての自信は無く「何とかなるだろう!」とついにドリルで穴あけ開始!ちなみにケースのカラーは、スペシャル感を出す為にシスルーレッドにしてみました。もちろんTOP面のデザインも新しく行いました。

で、いざパーツを組み込んでみると、やはり予測した通りかなりギリギリのサイズです。2回路分の配線材も複雑に交差しますので、ピッチピチの配置にせざるを得ません。作業を進めるうちに3モードスイッチの位置が下過ぎることに気付きました。3mm位置を上げれば理想的な納まりになるはずでしたが・・・しかし!もうすでに穴あけは完了しています。このままで仮組作業は完了!続きは翌日へ持ち越しです。

11月13日午後になり、再び作業開始です。半田ごてを温め、一気に作業を進めました。狭いケース内で上下2段の配線構造なので、なかなか簡単には行きません。今までにやって来た手順では処理しにくい部分もあり、作業時間がかかりすぎてしまいました。ハンダ作業が面倒くさい構造なのですよ。特に2段ポットは狭い場所にごちゃごちゃと設置しなければならないので配線作業が大変です。

最終的にオペアンプを取り付けて内部は完成!裏蓋を閉めてみると、何とかギリギリ納まることを確認して一安心しました。では通電してみましょう。3モードスイッチの点灯を確認・・・確認・・・かくに・・・ん?なにこれ?なんだよ〜〜〜!!!今までに経験したことが無い変な点灯具合です。理解できない作動にしばし呆然!

片方を赤にすると、もう一方が赤しか点灯しないのです。青も緑も点灯せず。でも、片方を青や緑にすると赤以外は問題なく点灯。意味が分かりません・・・。ここで推理です。回路は繋がっているのに、なぜこんなことが起きる?今まで経験して来た作り方とどこが違っている?

悩むこと10分。突然ある違いを思い出しました。でも原因は本当にそれでしょうか?考えているよりやった方が早いですね。LEDに繋いでいる保護用の抵抗4.7KΩをもう1本並列で増やしてみました。これで、抵抗値が正しく補正されましたので、通過電流が本来の値に。なるほど!やはりここでしたか〜!あっさりと早期解決できました!これで完成です!



サウンドは、いつもの弾駆動サウンドがさらに太くなった感じですね。これは好みの問題ですから、実際に試奏してもらわないと何とも言えないのですがね。オペアンプはNJM4558Dツヤありを2個使っていますが、これは変更しても面白いかもしれませんね。片方をNJM4558DAツヤありにするとか。ほんのわずかなアッサリ感を加えた方がより良くなるような気もします。しばしイジクリ回して、サウンドを決定しますかね。

さっそくテストした結果、初段にNJM4558DAツヤあり、二段目にNJM4558Dツヤありを採用しました。NJM4558Dツヤありを2個使うとちょっとくどいような気がしたのですよ。かなりお気に入りのサウンドになりました。

しかし!誰でも使いたいサウンドであるかどうかの判断は難しいですね。太すぎるというか・・・。KOREさんに試奏をお願いしたいところですが、今は年末に向けてとても忙しそうですからね・・・。どなたか、耳の良い方に試奏して欲しいもんです。



本日の結論
久々の新しい構造での製造はかなり疲れました・・・。作るにはあれこれ時間がかかる構造です・・・。

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