番組的共鳴感


2009年06月19日 久々にドラマを観て泣きました!



「なんだか今日は」

自分が「鬱」に陥っている時、自分で自分の行動を客観的に観るのは難しいことです。しかしそれでもなんとか観察し続け、自分が思っている自分の理想像と現実の乖離に苦悩するのが「鬱病」患者です。

ちょっと古い話しになりますが、先月末から今月中旬にかけてNHKで3回にわたり放送されたドラマがあります。「ツレがうつになりまして。」というタイトルの番組です。ツレ(亭主)がある日「鬱病」になり、漫画家である妻の対応を詳細に表現したドラマです。鬱病患者の側と、それを見守る家族の立場が両方バランスよく表現されています。そして患者にアドバイスする医師の姿も出てきます。これも的確です。

私はリアルタイムで観ることが出来なかったので、録画しておいて昨日一気に観ました。そして感じたことがありました。鬱病患者として今まで自分を他人と比較したことはありませんでした。これが私独特の「鬱の世界」なのだと信じていました。ところが・・・番組を観ていると、そこで表現されている事柄がすべて自分と重なって見えるのです。健常者にとっては理解しがたい感覚が手に取るように「わかる」のです。泣きました。悲しいからではなく「共鳴感」からです。演技とはいえ、死への逃避や無力感からの自己否定など、その苦しさが理解できたからです。

今私が一番辛いのは、天候の変化による気分障害です。雨が降ったり、曇天だととたんに沈み始めます。つまり低気圧になると一気に気分が落ち始めるのです。ということは梅雨のシーズンは最悪になるということなのですよ。この部分もきちんとドラマの中で表現されていました。そのシーンを観ながら私は涙を流していました。「やはりこれは鬱病患者共通の感覚なんだ・・・」とね。

そのように、番組の中で表現される事象がすべて私のことのように感じられて「鬱病」の世界が私だけではなく、多くの共通項を持つ人々がいるのだとすこし精神的逃げ道が見つかった気がします。「鬱」は孤独です。その孤独感から少しでも脱却できるのは助かります。

で、私が評価したのは主演していた二人の役者です。漫画家の妻は藤原紀香、ツレと呼ばれる夫は原田泰造。二人とも私の評価は今まで低かったのですが・・・。今回の演技で彼らの素晴らしさを知りました。特に原田泰造の「鬱病患者」としての表情は鬼気迫るものがありました。何も出来なくなる感覚、それに伴う無感覚な表情。電話の音を嫌がったり、些細な日常の行動が出来なくなってしまう感覚・・・。それらを的確に表現していました。

藤原紀香はスッピンの演技でした。ドラマですからある程度のメイクはしていても、それがほとんどスッピンに見えるほどの素顔さらし具合です。これがリアリティーを生んでいました。あのスッピンの藤原紀香だったら私は友達になってもいいかなと思いましたよ。夫にどう対処してよいのかわからない妻の動揺が、やがて鬱の夫と共存することを見いだして、その状況を漫画にして出版するまでに達します。この過程で視聴者は藤原紀香とともに「鬱」への対処と理解の勉強を自然にさせられるのです。

ドラマは、夫が鬱に陥る前から始まり、やがて鬱に近づき、そして真性鬱になり、治療の日々、少しだけの回復、そして再発、これらが丁寧に描かれています。3時間で鬱を理解するにはとても的確な番組だと思いますよ。すでにオンエアは終わっているので、どこかでもし観る機会があったら、今は興味がない方も是非ご一度ご覧いただきたい番組です。鬱病とは何か?鬱病患者に対する対応はどうすべきか?そして・・・自分が「鬱」に陥ったときどうすべきかがわかりますよ。ここが一番お勧めする部分です。明日はあなた自身の問題になるかもしれないのですから。その時に死に急がないためにも・・・。

以下に番組のポスターを掲示しました。このポスターは二人の表情が番組の中身とは少し違っています。これはまだ鬱になる前の二人です。特に藤原紀香はこのようなメイクは全くしていません。ほとんどスッピンと感じます。ここまでスッピンをさらすか?その表情のリアリティーがよりドラマを私に近いものと感じさせてくれました。

このドラマで表現されている内容や演技は決してオーバーではありません。私が観る限り、かなりリアルな鬱病患者の行動や感覚を表現しています。私もほぼ同じ行動をしていました。鬱病を克服した患者の話しを聞くよりも、このドラマを3時間観る方がより早く鬱の世界を理解できると思いますよ。

少しだけ突っ込みを入れるとすれば、ラストで奥さんの妊娠がわかるハッピーエンドになるのですが、この部分は現実に抗鬱剤を飲み続けている男性の方は「なんで?」と思われたに違いありません。詳しくは書きませんがね。それから、2カットほど原田泰造の笑顔が不自然でしたね。その時点であのような笑顔が浮かぶことはないと思いましたよ。あの場合、ほぼ無表情のほうがよりリアリティーが出ると感じました。

なんだか今日は、この二人と話しをしてみたいと変な願望が浮かんでいます。



本日の結論
久々にテレビドラマを集中して観た時間でした!

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