抗鬱的試奏会
2005年03月21日 勇気を出して電話してみると!


コレを読んで何を思うのか?


「プラシーボの使用の可能性があるため」

このところずっと「鬱」状態でかなり苦しい生活をしていた。だが、その感覚は医師に診断された結果出された病名ではない。「鬱ではないのか?」と私が思っているだけだった。妻は「男性の更年期障害じゃないの?」ともいっていたのだが・・・。

もう何度も書いて来た事だが、いかんともしがたい精神状態に陥っていたのだ。一日中わけもなく悲しみがわき上がって来たり、眠れなくなったり、食欲が激減したりと、自分でコントロールできない感情に支配されてしまうのだ。しかし、周りから見ればただの「不機嫌なおじさん」にしか見えないはずだ。そこで、脱出するためにはそろそろ医療的な手を打たないと、延々と続く気がして来た・・・。さあどうする?

そんな切羽詰まった精神状態の3月19日朝、新聞の折り込みチラシにこんなものを発見した。某製薬会社の「うつ病対策薬」臨床試験の被験者募集のチラシである。


さてと、いくつ当てはまるのだ?数えてみるとかなり該当するようだ・・・。まいったなあ・・客観的に判断するとやっぱりそうだよなあ・・・。てなことで、チラシを見つめしばし悩んでいたが、とりあえずそこに書かれた電話番号にかけて応募条件なんぞを聞いてみるのも面白いかもしれないと考え始め・・・。

10分後、治験お問い合わせセンターに電話をした。

電話に出た女性担当者は、穏やかなゆったりとした声であった。最初は録音されたものかと思ったほど正確でゆっくりした発音である。電話をかけて来る申込者は「うつ病」であるため、その対応なのだろうが私にはあまりにも会話が、一言ひとこと噛みしめるようにゆっくり過ぎていらだちを覚えた。

まずは、治験の概要について教えてもらった。次に私の住所が治験参加者として有効かのチェックが始まった。車で20分ほどの場所に参加している病院があると判明、住所的にはOKとなった。治験は週1回の通院で6週間かかると言う。次は症状の確認である。

過去2週間の症状について、一つ一つ質問され答えて行ったのだが、やはり予想した通りの症状満載で「ズッポリ鬱」の満点状態であった。フ〜〜〜・・・。だがそこから先、急に話は現実味を帯びて来た。まず今回の募集は「あくまでも治験である」ことだった。それを了解していただきたいと言うのだ。その意味はこうである。

治験は患者と医師と相談して、治療薬を出してもらうのだが、今回はその治療薬の実証実験である。そのためには患者に渡される「治療薬」が「プラシーボ」である可能性があるというのだ。プラシーボとは、本物の薬と全く同じ外観はしているが薬の効果がないニセモノの事である。デンプン等を固めて造ったものだ。

つまり「本物の薬」と「偽物の薬」が医師も知らない状態で患者に渡されるのだ。医師はすべてを「本物」だとの前提で相談に乗り、薬を出すのである。患者も医師も全く知らない状態でないと、新薬の信憑性が正確に判定できないからだ。「プラシーボ」を渡された患者が「無事に回復しました!」と報告すれば、それは薬効ではない。フンイキで回復した事になる。

さて、治験の方法は理解したが、振り返ってみると私はどうしようとしているのだろうか?私は実験に参加したいのではなく「根本的治療」を願っているのである。切実に「こころの風邪」から脱出したい今なのだ!この治験に参加して6週間に渡り「プラシーボ」を渡され、それを呑み続ける可能性があるとの、説明を聞いているだけで気が滅入って来た。

電話の向こうで担当の女性は、プラシーボの使用の可能性があるため「治療がご希望でしたら治験に参加されるよりも、お近くの心療内科で治療された方がよろしいと思いますよ!」とアドバイスしてくれた。アドバイスはありがたいのだが・・・。

この治験募集に応募する方々は「鬱の治療」が目的ではないのだろうか?すがる思いで電話するのではないだろうか?あのような「プラシーボ使用の可能性」を説明されて納得して参加してみようと考える方はいるのだろうか?なんともはや、不思議な募集があるものだ・・・。医学的には、医薬的には必要な治験かもしれないが、「プラシーボ」を呑まされた患者はその後どうなるのだろうか?結局、丁重に治験の話は無かった事にしてもらった。ふ〜〜〜っ・・・。





そんな状況の昨今、やはり他にも重い「鬱」に悩まされていた登録会員がいた。数ヶ月前から何度もメールのやり取りを行い、お互いの状況を連絡しあっていたのだが、ついにその登録会員から「半年も続いていた鬱からの脱出に成功した!」と連絡があった!何が彼をそうさせたのか?何が回復のきっかけなったのか?知りたかった・・・。

サラリーマン兼ジャズギタリストでもあるその登録会員は、最近私が送ったメールの文章と、独断倉庫の内容を読んでいるうちに「倉庫番にそろそろヤバイにおいがしてきた!」と感じられたようだ。同じ「病」を経験した者だけが「鬱」サインを見つけられるのだろう。そして・・・そのカンは当たっていた。私は先週どん底に近い精神状態に堕ちていたのだ・・・。

かくして、復活者である登録会員00137荒井様は3月20日午後、わざわざ千葉県から東京を横断し「ホワイトナイト」となって当家に乗り込まれて来たのである!当家への目的は二つ。私の「鬱」を緩和するために救援隊として来られる事。ありがたいフットワークである!他人のためにコレが出来るという事は、荒井様は完璧に御自身の鬱脱出に成功したと思われた。もう一つは以前からのご希望であったBugsGearの試奏である。

私自身は、前日にストリングネット社の社長ご夫妻に「韓国家庭料理の食事会」へ夫婦でご招待され、おいしい食事と、様々な韓国文化と日本文化の差異について語り合う事で少し精神状態が柔らかくなり始めていた。荒井様のご訪問に対しても素直な対応を出来る状態にはやや戻り始めていたのだ。他人を受け入れる準備だけは出来ていたようだった。

これで4回目の顔合わせとなる。お会いしてみると、荒井様はつい最近まで「鬱」で長期間にわたり苦しんでおられたとは思えないほど、穏やかでゆったりした雰囲気だった。これが「脱する」ということか・・・。まずはその切っ掛けから復活までの状況話を延々伺ったのだが、結論として「思い切って3か月の長期休暇を取り、海外に出かけ精神状態を切り替えられたのが成功だった」とあった。

そうか・・・そこまでやったのか・・・。他にもいくつかの「脱出」秘策が授けられたのだが、やはり日々の仕事をやりながらだと、精神状態がなかなか切り替られないのだろうなあ。不思議な事に話を続けて行くうち私の心の中にあった空洞が少し埋まり始めているのに気付いた。明らかに精神状態が楽になり始めたのを意識した。

結局、私自身が無意識のうちに思考のループ状態に追い込まれていたのだろう。それをとりとめも無く話す事で、新しい精神的迂回ルートを発掘させ、やや解放できたのかもしれない。男といえども、おしゃべりは必要なのだ!無駄話は決して無駄ではない。そんなヨモヤマ話をしながらも試奏は同時進行で続けられていた。そして、荒井様の試奏本数はついに8本に及んだでのあった!


BugsGear DR-50UL


BugsGear OR-50TW + Fishman


BugsGear DT-50TL


BugsGear TOR-35


Kraken Flagman Custom
荒井さまには試奏の感想の細かな部分はあまり尋ねる事もしなかったが、ほとんどのギターを気に入っていただけたようだった。特に気に入られたのは雰囲気から、BugsGear DR-50ULとOR-50TWのようだったが・・・。他にもBugsGear DM-50ULや Parker Fly 、Fender Customもお試しいただいた。私は荒井様がさりげなく弾かれているジャズのフレーズを延々浴びながら「ワケの分からない悲しみ」がいつの間にか消えているのを感じていた・・・。本日時点で75%程度の回復か?

驚く事に、お茶を飲みながら試奏しながら話し続けていたら陽が暮れて来た。4時間半も私の部屋に2人でこもっていたのか!何かに集中するのではなく、たまにはこんな時間をダラダラと過ごすのも私には必要であると感じた夕方だった。荒井様にとっても私が発したいくつかの言葉がヒントになって、次のステップに進む事が出来る手がかりを掴まれたようだった。「情けは人のためならず」全くその通りである!私はもっと話をする事に時間を使ってみよう!


本日の結論
試奏の途中で「哀愁のヨーロッパ」が何度も聞こえて来たなあ〜!

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