読了的長官撃
2004年06月08日 あの事件のバーチャルな真実が・・・!
 



「気を付けてチェックしてみよう!」

今回は久々に BOOK OFF は関係ない。
先日、部下の机の上で発見し、借りて読んだ本だ!つまりタダ読了である!

過去の事件を題材に小説を書く場合、まず、膨大なデータを入手する必要がある。そして、現実に起こった事件のニュースや新聞から、読者が集め記憶している内容と矛盾してはならない。小説とは云え、整合性が崩れるとリアリティーが一気に霧散してしまうからだ。この小説、佐々木敏著「ラスコリーニコフの日」は1995年に勃発した「国松長官銃撃事件」を題材にしている。私はその事件を明確に覚えているが・・・。

あの事件や他に発生した事件と矛盾なくエンタテイメントとして組み立てて行かなければならないのだが、見事なまでに「これがひょっとしたら真実じゃないのか?」と思わせる構成に仕上がっている。精密につっついて行けばいくぶん荒っぽいところも感じられるのだが、概ね私には合格の小説である!

ゴルゴ13、ジャッカル・・・・・。
暗殺者ヒーローといえば、孤高の一匹狼と決まっていたが、
本書に登場するのは北の国家に管理されたスナイパーだ。
自らの立場に揺れ動きながらも暗躍を続ける刺客を前に
日本の上層部は迷走を続ける。
著者は現実の事件をモデルに現代史の裏側をリアルに看破してみせた。
香山二三郎(文芸評論家)


ネタばらしにならない程度に内容を紹介しておこう・・・。

この小説ではアジアの「K国」の工作員が任務を与えられることから始まる。ここで「拉致事件」の状況と「K国」がその後どのように「拉致被害者」を利用しているのかが詳しく紹介されて行く。「K国」はあの国であると読み替えて行けば非常に解りやすい。その工作員「エフゲニー」がどのようにスナイパーとして育てられ、どのような手順で日本に送り込まれたのか?を丹念に追っている。この辺も真に迫って面白い!

「K国工作員」対「警視庁」対「公安」さらに「米軍基地」や「某宗教団体」も加わり、これらが渾然一体となって繰り広げられる展開は、1995年のあの時代に起こった全ての事件の「内幕」として描かれている。読者は、知らず知らずのうちに全ての「架空の組織」を「現実の組織」と置き換えて読むことになり、リアリティーが加速する!

さて「ラスコリーニコフの日」の中では「オ●ム」の総本山捜索のシーンもリアルに描かれている。もちろん登場する団体名は全く別物だが・・・。で、我々の記憶意に残っている「宗教指導者」の哀れな逮捕劇ももちろん描かれている。カナリアのカゴを持った捜査員も登場する。そして、この小説の中で間違いを発見したのである。いつものように軽くツッコミを入れておこう!

現実の「オ●ム総本山捜索」のシーンでは、ニュースで多くの映像が流されていた。そしてニュースでもアナウンサーが間違えていた「ある事実」がこの小説でも見事に間違えられていたのだ。それは「チェーンソー」の使用である。家宅捜索する際に捜査員は入り口の扉を開くのに金属製のカギや鎖を切断しなければならなかった。現実の捜査場面でもアナウンサーが「チェーンソー」と連呼していたが・・・。この場合使用するのは「チェーンソー」ではない。

「チェーンソー」は「木材」を切断するための道具だ。これで分厚い金属を切ることは出来ない。金属を切断するのであればダイヤモンド歯を持った「電動カッター」が正しいと思われる道具だ。綿密なデータに基づいた小説なのに、この記述一つで「あらら・・・」と思わせてしまうのはなんだか勿体無いなあ・・・。ちなみに、この「チェーンソー」間違いはニュース番組で「電動カッター」が出てくる度に起こるので、気を付けてチェックしてみよう!

 
チェーンソー
 
電動カッター

「ラスコリーニコフの日」はあまり後味が良い小説ではない。日本の「国家として持たざるを得ない闇」が広がっているのを感じさせる。小説は小説として割り切って読むべきだろうが、かなり割り切れない「謎」や「苛立ち」が読後にも残り続けるのだ。佐々木敏の本はどれも、私にとって面白い本ばかりだ。かなり「リクツ」や「ウンチク」だらけの本が多いので、じっくり丹念に読めば面白みがさらに増すぞ!

で・・・タダで読ませてもらっただけで私は良いのだろうか?なにか引け目を感じつつ、部下に聞いてみた。

「他にも面白い本を持ってる?」

「自宅にたくさんありますよ!持ってきましょうか?
 ミステリー本は2回読まないので全部差し上げましょうか?」


なんだと〜〜〜!!!早く言ってくれよ〜〜〜!!!てなことで、私は直後に「バーター」を申し入れたのであった!

部下は酒好きである!そこで、1か月前に帰省した際に手に入れておいた幻の焼酎「百年の孤独」を私は差し出したのだ!ネット販売では1万円前後で取り引きされている焼酎である。1万円といえばBOOK OFFで100冊分にあたるが、本を売りに行けば200冊以上を持ち込まなければ1万円にはならない。これで部下が喜ばないわけがないな!かくして「バーター」は無事に成立し、私はこれからしばらく無料読書に浸るのである!わははは〜〜〜!!!



本日の結論
宮崎空港で並んで買った焼酎が本に化けるとは思ってもいなかったな〜!

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