読了的桜季節
2004年04月14日 一気に読み進んでみたら!
 

歌野晶午著「葉桜の季節に君を想うこと」2003年 文藝春秋刊


「大仕掛けのミステリー」

先日、登録会員00068タックル様から貢ぎ物として届けられたミステリー本がある。
歌野晶午著「葉桜の季節に君を想うこと」2003年 文藝春秋刊がその本だ。昨日朝の出勤電車で読みはじめ、本日の昼飯時間に近所のラーメン屋で「当店のおすすめ!にぼしラーメン」609円(消費税込)を啜りながら読み終えた。

この本のタイトルは「葉桜の季節に君を想うこと」などと実にロマンチック。まさに今の季節に読むふさわしいタイトルであると言えよう。恋愛小説のような優しさに溢れたタイトル感がある。しか〜し!題名に騙されてはならない!見事なまでのハードなミステリーなのである!

本作品は、2004年版「このミステリーがすごい!」で1位、2003文春ベスト10で2位 を獲得している。444ページのかなり厚めの本だが、文体の軽快さもあって、一気に走り抜けるように読み終えることができた。だが、ここで「葉桜の季節に君を想うこと」を詳しく紹介しようとすると一つ問題が発生する。必然的にトリックに言及しなければならなくなるのだ。

WEBにころがっている書評を拾い読みすると、いずれの方もその部分で困っているようだった。さらに、この小説への不満を漏らしている書評も多い。そりゃそうだろう。小説なんだから、好き嫌いはあら〜ね!

まずこの本が私にとって「ミステリーとして面白い!」のは当たり前なのだが、実は終盤になり、突然「あら?あららら????」と思考がかき乱される記述が始まるのだ。私の気のせいか?それとも何か勘違いしているのか?混乱しながら読み進むと、そこには「うううう・・・やられた〜〜〜!!!」とtanabe.tvのパスワード騒ぎでよく御披露している「ミス・ディレクション」の渦に自分が巻き込まれていたことに気付くのである。

もともと、ミステリー本は「ミス・ディレクション」を読者に誘発し犯人像やトリックを混乱させる手法をとっている。ミステリーは「ミス・ディレクション」が存在していてあたり前の小説形式である。しか〜し!今回はその「ミス・ディレクション」の向かう先が全く違う方向性を持っているのだ!(方向性ってなんだよ〜?)ある意味で「シックス・センス」や、宮部みゆき「R.P.G.」の感覚だろうな。

こうやって解説しつつも本当の事を言えず、いら立ちを覚えるなあ・・・。端的に説明してしまえばそれで済んでしまうのだが、それをやっちゃあまだ読んでいない方々に殺されそうな雰囲気がある。もうこれ以上その件に関しては記述しないぞ〜! このページを読んでいる暇があったら、とっとと歌野晶午著「葉桜の季節に君を想うこと」を読まれることをお勧めする。

さ〜てそれではここから先は、私にしか書けない、他人とは違った視点から書くとしようか。

「葉桜の季節に君を想うこと」のメインストーリーは霊感商法の被害者から頼まれて、犯罪グループの調査に乗り出した「なんでも屋の探偵」の活躍を描いたものである。探偵と言うからにはアクションあり、謎解きあり、ヤクザとのドタバタありで、惨たらしい現場も登場する。妖艶な女達も登場する。

そんなストーリーの中で、私しか書けないものとはいったい何だろうか?ふっふっふ・・・。実はこの小説には私自身との変な符合がひしめいていたのである。文中で発見した言葉がそれだ。

「倉庫番」が3回登場する。

「田辺」が多数出現する。

「誕生日は5月14日」と出てくる。

ほらね!読んだ方にはもうお分かりだろうが、私の書評でしか書けないことがらでしょ?

まあひとつ、細かいことは抜きにして、重箱の隅をつっつくような他人の書評は気にしないで、読んでやっておくんなさい。 WEBに多く転がっている書評を読み比べると、騙される不快感がある方も多数いるようだが、私は騙された快感の方が大きかったぞ!

深刻ぶって読む本では無い。軽快にに読み飛ばして「あっちゃ〜!やられた〜!」と大笑いしていただきたい本なのだ!読み終えて気付いたのだが、1ページ1行目からすでに作者の仕掛けたミス・ディレクションは始まっている!作者は書いている途中、とても楽しかっただろうなあ・・・。

最後にお願いである!この本をこれから手に入れて読まれる方は、本の巻末に添付されている「補遺」を絶対に事前に読まないでいただきたい。「補遺」を読んでしまうと、手品の仕掛けを先に教えてもらってからイリュージョンの舞台を観るような、情けない結果になっちまうぞ!



本日の結論
このミステリーは決して映画化できない宿命を背負っている。
ある部分で仕掛けに無理があるっちゅう意見が分からなくも無いなあ。

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「独断倉庫」に関しての御意見は「啓示倉庫」へ書き込んで下さいな。



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