鑑識的吉川線
2004年03月27日 警察の鑑識結果がちょっと変!
 

弁護士のドラマ内での知識レベルは?


「チェックを受けた方がいいんじゃないか?」

風邪の諸症状で苦しんでいたここ数日だったが、3月26日朝になり、ようやく峠を越した感じがした。まだ相変わらずのどが痛く、軽い頭痛と鼻づまりもあるのだが、昨日まであった体のだるさは少なくなって来た。シャワーを浴びる意欲もわいてきたので、久しぶりにさっぱりと洗い流した。ちなみに、ここ数年は「カゼ薬」を飲まないようにしている。「スティーブンス・ジョンソン症候群」の恐さもあるのだが、理由は別 にもある。

以前は、体調が悪くなるとすぐに薬に頼っていた。仕事をする上でやむおえない対処だったのだが、薬に頼ると、取りあえずその場はしのげるが、長い目でみると「いつまでもズルズル治らない」状況が続くのだ。根本的に人間が本来持っている自然治癒力で対応しなければダメなのでは?と考えるようになった。試してみると、どんなに辛くても薬を飲まずに静かに身体を休めていると、風邪は丸3日で治まる事が分かった。それ以来薬抜き態勢の当家である。

私が飲まないのはいわゆる「総合感冒薬」のこと。私は薬を否定しているわけではない。過剰な発熱はすぐに下げないと身体に悪影響をおよぼす。その為に薬は必要だ。だが風邪で体温が上がるのは、白血球がウイルスと戦いやすくする環境を身体が作る為であり、無理に熱を下げればウイルスはいつまでも死なない事になる。つまり風邪の諸症状が長引く事になる。だが、さすがに咳やのどの痛みは辛い。私も例外として、あまりに咳がひどい時は「せき止」だけは飲むようにしている。咳が治まらないと睡眠がとれないからだ。

前置きはこれくらいにして、ネタの話を始めよう。風邪で寝込んでいるとベッドの中からボ〜ッとテレビを見続ける事になる。そんななかで気付いたのである。久々にテレビドラマの話だ。

3月26日午後にオンエアされていた再放送の金曜サスペンス
「黒の奔流・奥多摩強盗殺人〜弁護士と女三人が乱れた共犯同盟に…」
松本清張原作 渡瀬恒彦 片平なぎさ 純名りさ さとう珠緒 北村総一朗
唐渡亮 古尾谷雅人 茅島成美 片桐竜次 松井紀美江 誠直也ほか

渡瀬恒彦が主人公の弁護士だった。頭の30分を見逃してしまったので、途中から見始めたのだが、その時点で主人公の弁護士は「恐喝」にあっていた。かつて弁護し無罪判決を勝ち取った女性のさとう珠緒が、実は「真犯人であった」という状況だったようだ。だが、判決後にそれが判明したところで、同じ罪で再び裁かれる事は無い。なんてなことがあり、どう言うわけか犯人のさとう珠緒は「脅迫」で何度も弁護士から金をもらい続けていた。

さて、このような番組の定番である弁護士の「逆襲殺人」が発生する事になる。弁護士はアリバイ工作をし終え、さとう珠緒の家に向かった。無事に上がり込み、弁護士はさとう珠緒の首を後ろからロープで絞めた。そして、二階へ向かう階段の手すりからロープをぶら下げ女を吊るした。つまり首吊り自殺の偽装だ。忘れないように偽造遺書も傍らに置いて犯行終了。

2日後、女の死体は発見され、警察の捜査が始まった。

ところが・・・ここで私は驚いたのである!なんだ〜?この話は!警察捜査の結果 、遺書もある事でいつの間にか「自殺」として確定したのである!えっ?なんだよ〜〜〜!!!「吉川線はどうなったんだよ〜〜〜!!!」と突っ込みを入れる私であった。

ここで「吉川線」の解説を行なっておく。
遺体には殺害に抵抗した形跡、たとえば絞殺に使われたロープを取 り除こうとしてできた引っ掻き傷が残る。この首の痕跡を「抵抗防御痕」と言い、発見者の名を取って通 称「吉川線」と呼ぶ。警視庁鑑識課長だった吉川澄一氏が学会で発表した事で名付けられた。ドラマの中では明らかに女はノドにかけられたロープを取り除こうとしていたはずだ。首を締められた者の当然の防御行動である。「吉川線」があれば他殺と判定しやすい。

さらに、絞殺死体には首に内出血の痕が残る。人が後ろから人の首を絞める際につくロープの線はほぼ水平方向につくはずだ。ところが、首吊り死体につくロープの内出血の痕は、当然ながら顎から斜後上に向かってつく。そうなると、水平方向と縦方向の2本の内出血線が死体に出る事になる。これは自殺の首吊りではあり得ない状況だ。この辺は、検死官もののテレビドラマでも紹介され一般 人でも知っている方が多い知識のはずだ。

つまり、このドラマでは警察が「吉川線」も「絞縄痕」も無視した検死結果を出しているのだ。私が唖然とした理由が御理解頂けただろうか?だが、私がもっと変だなと思ったのは弁護士のとった殺害方法である。「吉川線」はテレビドラマ「ビギナー」でも紹介されていたくらいだから「吉川線」や「絞縄痕」の存在は弁護士なら当然知っていなければならない基礎知識だろう。素人の私でさえ知っているのだからね。

ところがそれを無視して弁護士が「完全犯罪」を仕組むなんてなシナリオは私には説得力皆無だった。さらに一旦「自殺」と判定されて事件解決したはずなのに、後日弁護士の妻が「あの日、夫が被害者のマンションから出てくるのを見ました」と証言したことで「殺人」であると発覚するのだ・・・実は妻も、さとう珠緒を殺そうとして同じ時間に出かけていたのだ。ううむ・・・なんだかなあ・・・。共犯同盟というフレーズに溺れたすぎた感じがする。

テレビドラマだから・・・と言い切ってしまえば、そんなもんだろうなと思ってしまいがちだが、現実に働いている「鑑識官」や「監察医」の人々が見たら大笑いするに違い無い。ミステリー小説を読んでいても、銃器の扱い等のいろんな「変だな?」が出現するが・・・殺人が絡む小説を映像化する際にはプロの「監察医」のチェックを受けた方がいいんじゃないか?そうしないと、素人にツッコミを入れられるぞ〜!

で、さらに気付いたのである!今回の放送は「再放送」だった。つまり1回目のオンエアでこのミスに気付いた視聴者も多かったと考えるべきだろう。そうなるとクレームはその時どこからも出かなかったのだろうか?気になるなあ・・・。



本日の結論
松本清張の原作は読んでいないが、どうなんだろうかね?
やはり火サスや金サスはネタの宝庫である!

------------------------------

「独断倉庫」に関しての御意見は「啓示倉庫」へ書き込んで下さいな。



GO TO HOME PAGE