読了的落語銃
2004年03月04日 初めて読む作家である!
 



「トカレフを片手に握りしめ」

1か月半ぶりの読了本の御紹介である。何故このように時間が開いたのかをちょっとだけ言い訳しておこう。読書は今年に入ってもずっと続けていたのだ。その証拠は「読了倉庫」の読了記録で御確認いただきたいが・・・。いささか「鬱」状態で読書するとなかなか読書スピードが上がらない。当然、読了ネタを書く気力も生まれてこなかったのだ。

私は読書の面白さは、単に本の出来だけが左右するものでは無いと考えている。

自分の体調や知識、さらに気持ちの有り様で幾らでも解釈が違ってくる。さらに私にとっては読破スピードが面白さを加速する大きな要因になっているのだ。人の記憶は時間と共に消えて行く。年齢を重ねてくると至近の記憶が薄れやすい。映画なら2時間で一気に楽しめるのでストーリーや登場人物の詳細について忘れることはないが・・・。1週間以上かけて本を読むと最悪のパターンとなる。精々がんばって3日以内に賞味するのが本の楽しみ方だろう。

理想的には一気読みなのだが、働いている以上、読書にかけられる時間は限られている。私はほとんど通勤電車の中だけに絞って読書している実体がある。で、久々に昨日の帰りの電車と今朝の出勤電車、さらに昼食時を利用して一気に読み終えたのだ。軽いフットワークで読める本なので御紹介しよう!

竹内 真著「粗忽拳銃」初めて手にした作家の本である。この本のジャンルは何だろうか?ミステリーでは無いな。かといってサスペンスモノやアドベンチャーものでもない。青春活劇モノか?ううむ・・・なんかジャンルは良く分からないが、スンナリスムーズに読み終えたことだけは確かだ!

いつものように腰巻きの惹句を御紹介しよう。

第12回すばる新人賞受賞作
竹内 真 著「粗忽拳銃」
一発の弾丸が明日を決めた!
前座噺家、自主映画監督、貧乏役者、見習ライター
夢に向かって四人組が駆け抜ける一気呵成の500枚

大型ストーリーテラーの誕生!!

夢を追うそれぞれ、ただいま奮闘中!
出だしが抜群にうまくて引き込まれてしまう。
拳銃一丁で、よくここまでお遊びに徹したと 感心する。
『粗忽長家』という落語との絡みかたも面白く、
小説という世界の無限の可能性に、今更のように気付かされた感じだ。
(中略)
何より私とって面白かったのはこの若者グループのたたずまいと、
かかわりかたであった。みな夢を追ってそれぞれの人 生、ただいま奮闘中、
というところだが、しけた青春ながら、やはり、そこはかとなく、
青春の匂いがある。それが読後感をさわやかにしているのだろうか 。
田辺聖子氏(評選より)

ネタバレにならない程度に書いてみよう。

主人公は「流々亭天馬 」なる落語家の前座だ。二つ目を目指し5年目の落語家修行の真っ最中である。そしてそれを取り巻く仲間の3人。この本のタイトル通り「拳銃」がストーリーの中心にある。全体的には落語テイストや落語蘊蓄が溢れている。ストーリーの発端はゴミ捨て場から「天馬」が拳銃を拾うところからだ。

拾われた拳銃がどう動き、人の心がどう動いて行くのか。そして、世間はどのように動き始めるのか?落語家、警察、ヤクザ、ガンマニア、インターネット、落語愛好家が織り成すストーリーは、荒唐無稽でセコクて貧乏でアブナイ話なのになぜか許せる気がするのはどうしてだろうか?主人公のキャラがそう感じさせるのかも知れないな。出演者達のそれぞれが抱える問題と、その解決もストーリーの「複線」になっている。ちなみにミステリーではないので「伏線」ではない。

さて、ここでいつものように一つだけ突っ込みを入れておこう。

私が感じるに、この作家はオートマチックの「実銃」を撃った経験が無いようだ。もっとも日本人で実銃を撃った経験を持つ人はごくわずかなのだろうが・・・。表紙にも描かれているが、この小説で言う「拳銃」とは「トカレフ」の事だ。この扱いについて小説の中で明らかに「へんだなあ・・・?」と思える表現があった。102ページ1行目〜2行目の記述内容が気にかかるのだ・・・。

強く握った右手からトカレフを受け取る。遊底を引いて次の弾を薬室に送り込むと(以下略)

実はこの一行は、この前のページで初弾を発射した直後の行動を書いてあるのだ。トカレフはオートマチックなので、発射すると遊底はブローバックし、次の弾を自動的に薬室に送り込んでいるはずである。つまり、表現されている「次の弾を薬室に送り込む」行為は必要無い。もし、この行為を行ったとすれば、薬室に入っていた未使用の弾がエジェクトされてしまい笑える状況となる。だが、そんな表現はどこにもなかった。

実銃あるいは、ブローバックするエアガンやモデルガンを扱ったことがあれば、ガンマニアでなくてもこんな記述にはならなかったはずだが・・・。もっとも、日本の小説に登場する拳銃の表現の中で「あれって変だよな・・・」と思えるケースには今までに何度も出くわしているのだがね。



竹内 真著「粗忽拳銃」はモデルガンのトカレフを片手に握りしめながら、軽快に一気に読み飛ばしていただきたい!だが、トカレフのモデルガンをお持ちのモノズキの方は少ないだろう。そこで・・・

急募!ガンマニアのあなたに「逆貢ぎ物」大会!

竹内 真著「粗忽拳銃」と「トカレフ」(モデルガン)をセットにしてプレゼントだ!

「逆貢ぎ物」御希望の方は「啓示倉庫」に「粗忽拳銃希望!」と書き込んでいただきたい。
希望者多数の場合は抽選で1名様に差し上げよう!締め切りは、2004年3月4日18:00だ!
いつものように、応募資格者はtanabe.tv登録会員のみだから、
必ず登録会員番号明記で応募するようにね!



本日の結論
不覚にも、読書中に一ケ所だけ涙を流してしまった私である!

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「独断倉庫」に関しての御意見は「啓示倉庫」へ書き込んで下さいな。



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