読了的非在本
2004年01月15日 初めて読む作家である!
 



「なんてな余計な事を」

作者は鳥飼否宇である。私は初めて読む作家だ。今回はまず、腰巻きの惹句から御紹介する。何故いきなり最初に腰巻きから書き始めるのか?何故いつもと違うパターンで紹介するのか?ミステリー小説っぽく、その理由は最後に明らかにする・・・。

鳥飼否宇著「非在」
横溝正史ミステリ大賞優秀賞・受賞第1作

南海に、人魚や朱雀が棲む孤島があるという・・・。
自然界は最高の謎解きの場!!!生物観察をフィールドワークとする著者が描く、
ネイチャー・アドベンチャー
+ 本格ミステリ
= 21世紀文学の新しい試み


植物写真家・猫田夏海は、ボトルに入っていたフロッピーディスクを拾う。
そのディスクには、未確認生物を調査探索するサークル「ウルトラ」の
一行が、沙留覇島という島に調査に向かい遭難した顛末が記され
ていた。驚くべきことに沙留覇島とは、「人魚」が棲み、幻の鳥と言わ
れる「朱雀」が舞い、謎の仙人が人を欺く、空想上の生き物が現実
にあらわれる島だった。猫田は、鳶山と高階の三人で、不思議の詰
まった島・沙留覇島探しの旅に出るが・・・。生物観察を日々続け
る作者が生み出した、ミステリに新しい流れを作る、驚天動地の力作!


さてと・・・、上の惹句と紹介文を読んで「どんなミステリー小説だよ?」と思われただろうか?ネタバレにならない程度に説明すると、本格ミステリー小説は「必然」によって合理的に謎が解明されなければならない小説形式である。解明された内容に「若干無理っぽいんぢゃないの?」程度は許されるとしても、概ね「なるほどね!」と読者がその合理的説明に納得しなければならないのだ。

複雑なトリックを解明する為には、それなりの仕掛けの解明が必要となる。トリックには物理的なもの以外に、心理的なものやミスディレクションで読者が勝手に勘違いするように仕組まれるものもある。この小説では「殺人解明のしちめんどくさいトリック」の構造がたっぷりと仕組まれているのだ。さらに都合の良い主人公の「ああ勘違い」部分が読んでいてちょっとかったるくなったなあ。

だが、この「非在」の中では常識的に存在しないはずの空想の生物「朱雀」や「人魚」さらに「仙人」を合理的に登場させ「非在」を最終的に「実在」にさせていく・・・。そんな事は可能なのか?ふっふっふ・・・読んでみればそれが実現されているのだ。人魚の実体は、はたして何なのか?

ところでそろそろ、「最初に腰巻きから紹介した謎」について説明を開始しよう!

私にとって「非在」の最大の謎は、実は本文の中に存在していなかったのだ!腰巻きの紹介文の中に「ボトルに入っていたフロッピーディスクを拾う」と書かれている。だが、本文のどこにもそんなシーンは無いのだ!いや、正確に書けば「フロッピーディスクを拾う」のは事実なのだが、それは小説中では「ボトル」に入っていないのだ!

それでは本文からその部分を書き出してみよう。

15ページ9行目〜
白砂の上を歩いている時、波打ち際に奇妙なものを見つけたのだ。
 それは食品の保存に使うプラスティック製の密閉容器だった。
長さと幅がともに十センチ程度、厚さが三センチくらいの立方体。
・・・・・・中略・・・・・・
意外な事に、フロッピーディスクが一枚だけ入っていた。

どうだろうか?この文章を読むと形状が「ボトル」などではなく「タッパウ●ア」としか思えない表現だろう?それが何故、腰巻きの紹介文では「ボトル」になっちまったのだろうか?さらに想像を逞しくしてみよう。「フロッピディスクが入るボトル」とはどのような形状だろうか?かなり口のバカでかいボトルではないだろうか?

波打ち際で拾ったブツであるところから安易に「ボトル」だと、紹介文を書いた人物は思い込んだのではないだろうか?しか〜し!中略した部分にはさらにこのような文章が書いてあったのだ。

わたしは同じような容器をフィルムケースとして使っている。
撮影済みのフィルムを入れておけば、万一の場合にも濡れずにすんで便利だからだ。

ほらね!やっぱり「タッパウ●ア」としか思えない表現だろう?そもそも、このフロッピーディスクを拾うシーンがすべての事件解明のスタートなのである!かなりいい加減な「紹介文」なのだが、出版されるまでにこの事実に気付かなかったとすれば、出版者にも問題あるのだが、作家もスルドク指摘して回収させるべきぢゃなかったのか?なんてな余計な事を考えてしまう私であった・・・。

てなことで、本日は初の試みとして、本の内容にほとんど迫らない書評をやってみた!


本日の結論
だから、ストーリーはどうなのよ?

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