六弦的色浸透

2001年01月21日 果たして色はどこまで染み込んでいるのだ?



「あら〜!着色されてるじゃん!」

1月13日に貢ぎ物として届けられた「YAMAHA SG2000」は、その後すぐにパーツを全部外し、いよいよ塗装剥ぎのスタート地点へと体勢を持ち込んだ。私がかつてレストアした時に一番大変だったのが、じつはこれからの作業である。塗装はビッチリギター本体にハリ付いている。これを地味に剥がして行かなければならない。荒っぽい作業をすれば早く進むのだが、それでは木地が痛んでしまって、美しい仕上げにはならない。

細かなサンドペーパーでじっくり作業するのも手だが、じつは塗装の皮膜はかなり強固なものなのだ。そう簡単にはいかない。塗装を剥ぐにはいくつかの手があると言う。

1. 剥離剤を使う。
  これにはその塗装にあったモノを選ぶ必要がある。
  心配なのは生地に対する影響だ。剥離剤が木地に浸透することは無いのだろうか?

2. 塗装の隙間にカッターナイフを入れて、ペリペリと剥いで行く。
  これはイージーな塗装でないと成功しそうに無いな。

3. ドライヤーで塗装面を過熱し、皮膜を柔らかくしスクレーパーで擦りとる。
  過熱具合はどの程度が適当なのだろうか?ボディーへの影響が心配である。
  接着剤が使われている部分に問題は無いだろうか?

4. 電動サンダーで一気に擦り落とす。
  これは騒音とホコリで大変な作業となるのだ。アーチトップのボディーには不向きだろう。
  木地自体もある程度削り取られてしまうし、なるべくさけたい方法なのだ。

そのなかでイージーなやり方を一つやってみることにした。1の剥離剤使用である。過去に3の方法で成功した、登録会員00119松下様の御意見も参考にした。だが、松下様から来たメールには思いがけない一文が添えられていたのであった。

今回のレストア作業でまず目標にしたのが、ナチュラル仕上げである。このギターのTOPは良く見ると杢目が少し浮き上がっている。これを綺麗に見せてあげたいのだ。そのためには全体的に現在の塗装を剥がして、木材が持っている本来の色に戻さなければならない。ところが・・・。

松下様の情報によると「その時代のギターは木地そのものに着色してある可能性がある。その色まで削るとなると、ギターのオリジナルシェイプが変わってしまう可能性がある」ううむ・・・。そうなのか・・・。木にしみ込んだ塗料を削り取るとなれば、結果 的にボディーを削り取ることになるか・・・。

ここで考えた。もし、木地に直接色付けされていなければ、問題無く作業はすすめられるが、木地に着色されていた場合、私はどうするのだ?「あら〜!着色されてるじゃん!」とそこで諦めて作業を中止するのか?そんなことはあるまい?ここまで来たら、いまさら逃げ出すわけには行かない。届けられた時、すでにこのギターの裏面 は塗装が剥がされ、素材の木が剥き出しになっていたのだ。一刻も早く全体を剥がし、空気が乾燥している今の時期に再塗装をしてしまうのが、ベストなスケジュールであろう。

一度は塗装について、YAMAHAに問い合わせようと思ったが、どうあろうとも私は剥がすのである!もう、思いっきり剥がすのである!そしてオイル仕上げを行い、メイプルが本来持つ「美白シットリお肌」のギターへと変身させるのだ!そう決めているのに問い合わせしたところで意味は無い。やるしか無いのである!

で、さっそく剥離剤を手に入れて、テストを行ってみた。だが・・・。上手く行かない。どうも剥離剤のタイプが違っていたようだ。そこで、かつて私がレストア成功した時のように、丹念にサンドペーパーを使って、オリジナルシェイプを壊さないように作業をすすめる事に方針変更をした。

気になるのは木地着色の具合である。思いきってギターTOP側の塗装の一部を擦り落として、確認してみる事にした。ゴシゴシ、ゴシゴシ、スリスリ、スリスリ、繰り返すうちに木地が見えて来た。じっくり観察してみると、やはり木地は濃く茶色に着色してあったのだ。さらに作業を続けてみた。




おっ?なんだ〜?いったん着色された木地が見えると、すぐに木地本来の色になってきた。ううむ・・・。そうか!メイプルは木の繊維がミッチリ詰まっているので、色素が中まで浸透していないようだ。裏面 のマホガニー部分にはしっかり木目に色素がしみ込んでいたが、これならなんとかなるぞ!それでは、これよりじっくり時間をかけて全体の塗装を手作業で剥がす事にしよう!気が遠くなる程の時間がかかるだろうが、まあ仕方が無いな。やるしかないぞ!

剥ぎ終わりの目標は2か月くらいだろうか? うっへ〜〜〜!!!


本日の結論
パーツも金メッキをかけ直さなければならないと気付いた本日である!!!

------------------------------

「独断倉庫」に関しての御意見は「啓示倉庫」へ書き込んで下さいな。



GO TO HOME PAGE