判明的大喝采

1999年07月11日 やっと正体が判明したのだ〜〜〜!


Ovation Collectors' Series 1982-8

「こいつは一体何モノなのだ?」

今を去ること16年前になるだろうか、私はLAにいた。仕事で約1か月間ホテル暮らしをしていたのだ。仕事の打ち合わせ以外でほとんど一人暮らしのLAは暇であった。当時、まだバンド活動をやっていた私は、時間を見つけては楽器店巡りをしていた。出張も半ばをすぎたあたりに、突然ギターを買いたくなったのだ。

その頃の円は安かった。つまりドルで買い物をすると、日本円に換算してかなり高い買い物になるのだ。だが、異国での一人暮らしはそのようなことで物欲を躊躇させることはなかった。クレジットカードは持っている。銀行残高までの購買意欲は満足させることができるのだ!

そんなある日、一軒の楽器屋に足を踏み入れた。天井が高い。その天井までの広い壁にもギターが沢山ぶら下げてあった。この店のメインはギターである。ホテル暮らしではアンプまで買うわけにいかないので、まずアコースティックギターを探してみることにした。

探すうちに、日本に帰ってからのことを考えると、エレクトリックギターの方がよいのでは?との思いも沸いてきたのであった。そこで、ターゲットを「Ovation」にした。「Ovation」は日本語にすると「大喝采」になる。これはエレクトリック・アコースティックギターである。両方が満足させられるではないか!それに、以前から欲しかったブランドでもあったのだ。

東洋系の店員が寄ってきた。

「日本からこられたんですか?」

いきなり日本語の出迎えである。日本人であるらしい。ありがたい!これで値切りがぐっと楽になる!私のその思いを、そうとも知らず店員は続けた。

「エレクトリックですか?」

「Ovationを探してるんですが・・・」

「それならいいのがありますよ!入ったばかりのコレクターズシリーズです!限定生産品です。いいですよ〜!世界で1900本しか発売しないやつです!ピックアップはアダマスと同じモノを使ってます!」

と、店員は高い天井の方を指さした。その壁の上の方に、今まで見たことがないOvationが誇らしげに飾ってあった。カラーは深い渋いブルーのサンバースト。ヘッドまでそのカラーである。一目見るなり気に入ってしまった私であった。しかし、値段はまだ聞いてない。コレクターズシリーズである。かなり値は張りそうだ。意を決して価格を聞いた。ううむ・・・予算の倍である。お約束の値切りを入れてみたところ、思ったより安くなった。これならぎりぎり購入可能である!

「ちょっと触っていいですか?」

店員は、Ovationを私に差し出しながらこう言った。

「一時間ほど前に布施明さんがこれを予約されていかれたんですよ!」

当時、オリビア・ハッシーと結婚していた布施明はLAに住んでいたのである。ほほう!あの人が予約をねえ。と言うことは、私が買いたいと言っても手に入らないと言うことか?そこで店員に問うてみた。

「私もこれが欲しいんですが、もうすぐ日本に帰るので、予約するというわけにはいかないんです。もし買いたいと言ったらどうします?」

「でしたら、もう1本注文してそれを後日布施さんにお渡しします。そうすれば、お客さんにはこの現物をお渡しできますが・・・」

ううむ・・・敵もなかなか戦術家である。人が予約したモノを後から来た客に売っぱらうというのだな?よ〜〜〜し!そう来るなら受けてたとうではないか!しかし、店員のあんたがそんなことを勝手に決めてよいのか〜?後々問題にならないのか〜?と思ったが、なんとその店員がその店のオーナーだという。日本人観光客向けのアルバイト店員ではなかったのだ。

だが、一つ疑問も残る。布施明氏の予約話は本当なのか?日本人観光客をだますためのリアリティー溢れるテクニックではないのか?もし、本当だとしても追加の注文でもし手に入らなかったら店主はどうする気なのだ?布施明が怒るぞ!

てないきさつで手に入れたOvationであったが、その後もずっと私のそばに居続け、今も私の横のケースの中で眠っている。ところで、このOvationは本当に全世界で1900本だけしか販売されなかったのだろうか?本当にコレクターズシリーズだったのだろうか?その疑問を抱きつつもすっかり忘却の彼方へと捨て去っていたのだ。

そして、昨日のことであった。ギターに関するWEBの検索を行っていたところ、OvationのWEBにぶつかったのだ。そこに30年のOvationヒストリーも掲載されていたのだ。覗いてみると、そこには今までに発売された全てのコレクターズシリーズが紹介され、生産本数まで明記されていたのである。

それによると、確かに私のOvationコレクターズシリーズは1908本しか生産されていなかった。しかも、コレクターズシリーズは私が買った1982-8から始まっていたのである。つまり、私が買ったのはコレクターズシリーズ第1回作品だったのだ。ちなみにシリアルナンバーを確認するとNo1554であったぞ!

そうなると、私はOvationに「あんたはコレクターだ!」と認められたことになるのか?(そんなことはない!)この業界にいればいずれ、布施明氏に会う機会もあるだろう。その時には是非「LAに住まれていたとき、ブルーのOvationコレクターズシリーズ1982-8を手に入れられましたか?」と聞いてみたいものである。「YES!」とでるか?「NO!」と出るか楽しみであるぞ〜〜〜!!!

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